今回は前回のコラムから引き続き、バカボンの甘神SPECについて、パチンコプレイヤー心理に基づいた機種のヒットの理由を実例で説明したいと思います(文=小島信之/トビラアケル代表取締役)。
前回のコラムではパチンコ機『P神・天才バカボン~神SPEC~』を分析しました。今回はそのスペック違いの『P神・天才バカボン~甘神SPEC~』の分析を行います。甘神SPECは2023年2月に導入され、エンタープライズ機種評価でも常に上位にランクされています。
基本的なゲーム性は神SPECと同様で、初当たりの72%で鬼RUSH突入。鬼RUSHは約54%で継続し、その大当たりの33%が神鬼RUSHに突入します。神SPECと大きく違うのは、神SPECは全て大当たりが1,500個でしたが、甘神SPECでは初当たりのみ300個で、それ以外は全て1,000個となります。
神鬼RUSHに突入すれば継続率約85%×ALL1,000個と甘デジらしからぬ出玉を期待できるスペックです。プレイヤーは、とりあえず神鬼RUSHに突入すれば、簡単に1万個くらいの出玉が獲得出来そうと思えるのではないでしょうか。
前回、スペック判断はプレイヤーがどのようにイメージするかを考えると説明しました。甘神SPECでどういうイメージを持つか具体的に説明しましょう。
神鬼RUSHに突入すれば1万個が獲得出来そうなので、神鬼RUSH突入までの投資額が2~3万円で済みそうと思えば、勝てると思いプレイヤーは遊技しますし、それが難しいと判断すれば遊技をしません。
勝った時の出玉はどれくらいなのか? その出玉を獲得するにはどれくらいの投資が必要なのか? を漠然とイメージしているのです。ジャグラーで万枚の出玉を期待して10万円以上の投資することはないですよね。逆にミリオンゴッドで500枚の出玉を期待して3,000円を投資することもないでしょう。自然とその機種の投資と出玉をイメージしているのです。
継続率を上げて
爆裂イメージUP
話は甘神SPECに戻ります。先ほど甘神SPECは1万個の出玉をイメージと申しましたが、実際にはもっと爆裂した出玉が出ておりました。
神鬼RUSHの継続率がハイミドルでは約81%だったのが、甘神SPECでは約85%と上がっているのです。より爆裂しやすくなり、期待出玉は1万個よりも多く描かれていたのではないでしょうか。それが大当たり確率1/129の甘デジなのでプレイヤーにはハイミドルの神SPEC以上に簡単に感じられていたと思います。甘デジなのにハイミドルのような出玉が期待できる機種、というイメージが定着したのです。そうなると、投資金額のイメージもハイミドル機並みに上がります。
実際はそれほど簡単だったのでしょうか? 計算すると神鬼RUSHに突入するのは初当たりの約20%になります。初当たりの5回に1回しか神鬼RUSHに突入しません。まとまった出玉を獲得するには129.77×5=約1/649の突破が必要な機種なのです。
しかも、初当たりの約61%が300個の払い出しで終わります。そう考えると遊技する気持ちが失せてしまうと思いますが、プレイヤーにはそう感じさせず、簡単そうに感じる数字のからくりが甘神SPECにもあったのです。神SPECも甘神SPECも神鬼RUSH突入前の鬼RUSHというシステムが秀逸だったのです。
◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。