【コラム】機種選定の精度上昇は担当者の感度磨きがカギ

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人気を博した2012年リリースの『CRAトキオデラックス』。©2012 AMTEX.All Rights Reserved.

機種選定の精度を上げるには、ヒットした機種の理由を理解することが重要です。プレイヤー心理に基づいた機種のヒットの理由を実例で説明致します(文=小島信之/トビラアケル代表取締役)。

よく機種評価をする際の基準は何ですか?と聞かれることがあります。それに対して私は面白いと感じるか、面白くないと感じるか、私の感覚が基準です、と答えます。

機種をプレイヤーが面白いと感じればヒットします。そのため、私は常にプレイヤー目線の鋭い感覚を持ち続けられるようにしていました。感覚なので分かりやすいように数値化などの基準を作るのは難しいのです。

例えば、美人の基準を数値化することって出来ますか。多くの場合、それぞれの感覚で判断しているので、基準を作るのは難しいと思います。美しいと同様に、面白さというのも人の感性で判断されているので、数値化での基準を作るのが難しいのです。ただ、過去に一つだけ面白さの基準の数値化に成功したことがあります。

それは羽根モノです。12~3年前の話になります。羽根モノは今よりも多くの機種が販売されていました。当然のようにヒットする羽根モノとヒットしない羽根モノがあります。

そこで羽根モノのことをよく考えてみました。羽根モノを遊技していてプレイヤーが一番アツくなる瞬間は、玉が役物の中で動いて大当たりの抽選をしている時です。玉が動いている時、当たれ、当たれとアツくなるのです。

ただ当時の羽根モノの中には、当たれと願う間もなく役物での抽選が終わってしまう機種もありました。そこで役物内で玉が滞留する時間を計ったところ、5秒以上の機種はヒットし、それ以下の機種はヒットしていなかったのです。羽根モノの面白さの基準は役物に玉が滞留する時間だったのです。

当時、私はそんな基準で羽根モノの機種選定をしていましたが、とんでもない機種が登場しました。初代の『CRAトキオデラックス』です。それまでは長くても6~7秒だった役物の滞留時間が、同機はそれを大きく超える30秒以上の滞留時間だったのです。私が明確な理由を持ってヒットを確信した機種の一つになります。

これは人が面白いと感じる基準を数値化できた一例です。これは羽根モノを遊技するプレイヤー心理を分析した結果、面白さの基準が【玉の滞留時間】であったため、時間という概念で数値化することが出来ました。このような明確な基準があれば、誰でも機種選定を行うことが出来ます。

しかし、他の機種はこのように面白さを単純に数値化できるような判断基準が見つかっておりません。そのため、機種選定の判断基準は自身の感覚になります。鋭い感覚を持った人が正確な判断を下せるのです。機種選定に携わる人は常にその感覚を磨く必要があるのです。

多くの法人で機種選定の精度を上げることは課題であると思います。複数店舗を持つ法人などの機種選定の精度を上げるには、多くの人の意見を聞いて総合的に判断するよりも、鋭い感覚を持った人1人の意見を尊重する方が、その精度は絶対に上がります。

鋭い感覚を持った人は、多くの人とは見ている視点が違うからです。しかし、組織の中ではそういった視点の意見も、多数の前にかき消されてしまうことが多々あります。そういったことを無くすためにも、まずは機種選定に携わっている人の中で、誰の感覚が優れているのかを判断すること、そして、その優れている人の感覚を磨き上げることが一番の近道です。

◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役

2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。

 

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