株式を上場している主なパチンコ、パチスロメーカーの2021年3月期(2020年4月〜2021年3月)の通期決算がこのほど出揃った。経過措置の延長で、新規則機への入替えが後ろ倒しなったこともあり、低迷した新台需要が業績を直撃した格好だ。
セガサミー遊技機事業
上場来初となる赤字に
新型コロナウイルスの感染拡大に経過措置延長という遊技機メーカーにとってのマイナス要因が加わった今回の通期決算で、厳しい業績が目立ったのはセガサミーホールディングスの遊技機事業だ。
累計での営業損失が約106億円に膨れあがるなど、同事業としては、上場来初となる赤字に転落した。下期に入ってからは徐々に売上を回復させ、下期単体での営業黒字にこぎ着けたが、1回目の緊急事態宣言が発せられた期間に該当する第1四半期分における業績の落ち込みが、最後まで足を引っ張った格好だ。
遊技機の販売台数は、パチスロ機が人気シリーズ機の最新タイトル『パチスロ北斗の拳宿命』を市場投入したものの、5タイトルで前期比88,063台の大幅減となる35,273台に留まった。パチンコ機も、ビッグタイトルの後継機『P真・北斗無双第3章』をリリースしたが、こちらも、4タイトルで同35,568台減の69,013台と伸び悩んだ。
5月13日に配信された決算説明および中期計画発表会で、同社取締役の深澤恒一専務執行役員グループCFOは、「営業活動を本格化できたのが下期。さらに経過措置の延長によって新規則機の需要が減少した」と要因を挙げている。
2022年3月期における見通しは、遊技機事業の売上高が890億円、営業利益、経常利益ともに90億円と黒字回復を狙う構え。販売台数においては、パチスロが9タイトルで10万1,000台、パチンコ機が5タイトルで10万3,000台を見込んでいる。
今回同社では中期計画を策定。そこでは、2024年3月期にはパチスロ・パチンコの合算稼働シェアナンバーワンを目指すとした。その間に、シリーズ機中心のラインナップ編成や新規コンテンツの絞り込みなどでヒットタイトル創出を図っていく方針だ。
さらに事業効率を向上させるため、パチスロ、パチンコ間での画像共通化や、部材共通化、初回ロット適正化による在庫抑制などを推進する。また、パチンコについても、オンラインを通じたEC販売(電子商取引)を進めていくとしている。
同社の里見治紀代表取締役社長グループCEOは先の配信で、「まずこの3年はPS合算で稼働シェアナンバーワンを目指し、長期的にはPSそれぞれで1位を取れるようにする。市場はシュリンクしているが、まだナンバーワンではないので、シェアを増やせる余地があるということ。規制緩和の波にのってヒット作を作っていきたい」と意欲を表している。
ZEEG筐体の今後についても触れ、そこでは2024年3月期にパチスロ機で完全移行することや、同社を含め現状3社となっている採用が、5社になる予定であることが明らかにされた。
平和の遊技機事業は
営業利益98%の減少
平和は辛うじて遊技機事業で黒字を維持したものの、営業利益が前期比98.0%減の2億8,700万円と大幅に落ち込んだ。
売上高は、前期比46.0%減の332億9,200万円、パチンコ機販売は、同45,593台減の49,890台、パチスロ機販売は同33,524台減の35,393台と、パチンコ、パチスロともに人気タイトルを市場投入したものの当初計画を大幅に下回り厳しい業績が計上されている。
今期については、旧規則機撤去期限の到来に伴う入替需要の高まりを見込み、パチンコ機10万8,000台、パチスロ機52,000台の販売を計画。市場を踏まえた適格な販売計画の策定や、販売および設置シェア拡大などで販売台数の最大化を図っていく方針だ。
藤商事は黒字回復
ヒット機種がけん引
47億円の最終赤字から一気にV字回復を果たしたのは藤商事だ。業績のけん引役となったのは、2020年10月に発売された新規タイトル『Pとある魔術の禁書目録(インデックス)』のヒット。
同機は、2021年3月期中に同社がリリースしたパチンコタイトルの中で最も多い26,600台を販売。年間トータルで前期を40.8%上回るパチンコ機販売約70,000台の達成に寄与した。
今後は、市場ニーズを追求することなどで稼働力向上を掲げ、パチンコ90,000台、パチスロ5,000台を販売する計画を立てている。
また減収減益ながらも、 SANKYOは確実に利益を確保した。売上高は前期比25.9%減の581億2,900万、最終利益は同55.9%減の57億4,900万円と大幅な減収減益となったが、多くのメーカーがコロナ禍の影響や経過措置延長による需要後ろ倒しの影響を受けるなか、上場メーカーのなかで最も遊技機を販売したメーカーとなっている。
パチンコ機販売は9タイトルで前期比22,955台減の12万6,565台、パチスロ機販売は2タイトルで同8,419台減の3,022台となった。今期はパチンコ機15万4,000台、パチスロ機30,000台の販売を見込んでいる。