大変革時代に求められるホール営業の在り方とは――
店舗数、参加人口が減少を続けるなど、厳しい経営環境が続いているパチンコ業界。一方でスマート遊技機の登場によって、微かながら底打ちの兆しが見え始めている。今年、来年は次の成長に向けた戦略を模索する重要な期間となる。そこで別冊GREEN BELTでは、多角的な視点から業績向上をもたらす革新的ソリューションを一挙紹介。これからの時代に求められる「業績向上の極意」を会得してもらいたい。
2025年以降のスケジュール
2025年中でパチンコ業界に大きな影響を与えそうな出来事といえば、今夏の参議院議員選挙だろう。「今やらなければ、手遅れになる」と自民党の公認候補予定者・阿部恭久氏が危機感を訴えるように、店舗数や参加人口は依然として減少傾向が続いている。業界のシュリンクに歯止めをかけるべく、業界が踏み出した三度目の挑戦。業界一丸で底力を見せる時が来たのではないだろうか。
さらに、6月にはパチスロの「ボーナストリガー(BT)」、7月にはパチンコの「LT3.0プラス」が登場を控えるなど、遊技機環境も大きく変化していく見通しだ。これらが新規顧客の創出、既存顧客の満足度向上、休眠層の掘り起こしに上手く作用することに期待したい。
そして、これら変化に対応するためには経営の効率化が鍵を握る。人手不足への対応に向けた省力化や、DXによる業務効率化を一層推進していくことが重要だ。
2026年のホール営業をどう見る?
【INTERVIEW】高橋和輝 ピーメディアジャパン 代表

●たかはし・かずてる/パチンコ業界人のためのプロフェッショナルサイト「P-media Japan」を運営。専門分野としてコンサルティング、パチンコ業界のプラットフォーム、パチンコホール営業+AI開発等を手掛ける。
LT新時代、問われる「島図に宿る哲学」
──「LT3.0プラス」の導入をどう見ていますか?
「LT3.0プラス」が導入されたからといって、市場の母数が大きく増えるわけではありません。実際には、SからPへの移行など、既存客の動きが中心です。限られたパイの中で、いかに競合店から顧客を獲得するかが問われます。その意味で、5月〜6月は会員獲得や常連客との関係強化など、“基礎体力”を養う期間です。この際、数字の説明よりも、実際の遊技感覚に寄り添った訴求が効果的です。たとえば「349分の1のデカヘソ機」は、ユーザーにはライトミドルに近い印象を与えることもあります。こうした理解に基づいたアプローチが、7月以降の結果に大きく影響するでしょう。
──機種の見せ方が、従来とは異なるということでしょうか?
今後は、「海」「ミドル」「ライト」「甘デジ」「LT」「スマパチ」といった従来の大分類ではなく、より細分化されたセグメントでの打ち出しが必要です。市場の分類も、今後は8〜10の“山”が立ち上がり、それらが部分的に重なり合うような構造になっていくでしょう。こうした柔軟な見せ方は島図にも反映されます。どのような思想で機種を配置しているかが、そのホールの営業哲学として現れるのです。たとえば同じスペックでも、「右打ちの強さ」で見せるのか、「デカヘソの安心感」で訴求するのか、「TS(大当たり確率)」で分類するのかで、印象は大きく変わります。
──ポイントはどこでしょう?
カギは「ハブ機種」の活用です。ミドルとライトミドル、両方の性質を持ち、客層によって印象が変わるような機種です。ある人には「ミドルに近い感覚」、別の人には「デカヘソで安心なライト」と映る。こうした多面的な機種は、複数のセグメントを橋渡しする“ハブ”として戦略的に重要です。大事なことは、自店の中で訴求軸となる機種を定め、主体的に仕掛けることです。現在は、ただトレンドに乗るだけでは変化は起きません。むしろ、“客数シェアの奪い合い”が激化しており、地域で順位を上げるには、7月以降を見据えた明確な戦略とチャレンジが必要となるでしょう。
【INTERVIEW】小野真二郎 Re.design 代表取締役

●おの・しんじろう/ホール向け情報サイト「Re.design-リデザイン-」を運営。新台評価、商圏分析、全国営業事例レポートの配信などを行う。労力を惜しまず、新店には必ず足を運んでいる。
キーワードは「省力化」と「期待感」の両立
──2025年は遊技機環境に大きな変化が生じますね。
ボーナストリガー(BT)に関しては、パチスロの新たな選択肢として重要な位置付けにあると考えます。ただ、最初から劇的にシェアを伸ばすことは考えにくく、緩やかに伸ばしていくと思います。「LT3.0プラス」は現状、射幸性アップの側面が強く、出玉性能の魅力が増した一方、ホールとしては日々の活用を厳しくせざるを得なくなるのではないでしょうか。そうなればユーザーは楽しく感じるまでのハードルが上がってしまい、逆にパチンコ離れを引き起こしかねません。ただ、“プラス”の部分はゲーム性アップですので、ホールの実情やユーザーの期待感にマッチしたゲーム性を搭載した機種の登場に期待したいところです。
──遊技機環境の変化以外にホールが対応していくべきことは何でしょう。
人手不足には向き合っていかなければなりません。人手不足に対応していくためには、省力化の仕組みが必ず必要になります。そのため、今後の新店ではセルフカウンターの導入や各種効率化ツールなどが標準化していくと考えられます。
──省力化に向けた動きが一層加速していきそうですね。
それは間違いありません。ただ、省力化はもちろん重要ですが、同時にユーザーにも配慮する必要があります。というのも、省力化だけを追求してしまうと店舗内に動きがなくなり、盛況感や期待感を感じにくくなってしまいます。そのため、ある大手法人では、省力化を推進する一方で、意図的にデジタルサイネージの導入数を増やすなど、店舗内に動きを与える設備投資も行っています。このように省力化と期待感を両立させることが今後のホール営業で重要になると考えています。
──最後に、2026年以降の業界はどのようになると考えていますか。
ホールは2018年から、新規則機への入替や周辺設備の入替など、投資先行の構図が今日まで続いています。その点からしても、経営の効率化を図るための企業間M&Aが加速していくと考えています。今年以上に業界再編の動きが顕著になっていくでしょう。
【大変革時代に向けた4つの強化ポイント】
「セルフ交換システム」「業務改善」「稼働促進」「環境改善」を極める
■強化POINT❶セルフ交換システム|セルフカウンターが標準化へ
少子高齢化に伴う労働人口の減少、年々困難となっていく新卒採用――。ホールにおける人手不足は、解消の目処が立たない。そうなれば重要となるのは、業務効率化と省力化だ。特に、顧客対応を損なわない形でスタッフの負担軽減を実現する業務フローの構築は急ぐ必要がある。
そこで今一度、目を向けていきたいのが『セルフ交換システム』の存在だ。コロナ禍を契機に、スーパーやコンビニでセルフレジが急速に普及したように、近年、景品交換を遊技客自身で行う『セルフ交換システム』の導入が全国的に進んでいる。
従来の『セルフ交換システム』は、自店の会員限定で運用するなど、付加価値を提供する意味合いでの導入が多かった印象だが、現在では会員・非会員(ビジター)のどちらの景品交換にも対応。さらに精算機の機能も一体型となっており、景品交換と精算を一度に行うことができるなど、遊技客にとっての利便性は大きく向上している。
スタッフにとっても、カウンターに常駐する必要がないため、省力化を実現。用紙切れ、景品取り忘れ、現金取り忘れなど対応が必要な際も発報等で知らせるため、少人数での店舗オペレーションも可能とする。
こうした性能進化も相まって、直近では既存の有人カウンターを撤去し、全ての交換窓口をセルフカウンターに切り替えるホールも増えてきた。この傾向は特に新店で顕著にあらわれている。
ある導入ホール関係者は「世間ではセルフレジは当たり前のように利用されているが、果たして同じ感覚で景品交換をしてもらえるか、最初は懐疑的だった。しかし、いざ導入してみるとセルフ交換システムを好んで利用するお客様ばかり。これだけ利用されているのであれば、台数を増やしてもよいと考えている」と話す。
スタッフ、遊技客、ホール、それぞれに導入メリットをもたらす『セルフ交換システム』は、今後の重要な設備投資先となりそうだ。
マースエンジニアリング
エヴォールスマートセルフ交換機『EVO50』
■強化POINT❷業務改善|煩雑な業務をより簡単に
ホール営業における「業務改善」のポイントは、いかに煩雑な業務を簡単かつ効率的に行えるかどうかにある。
例えば、新台入替の際に必要な書類の作成は、大規模な入替にもなれば1日を費やすこともざらだ。しかし現在は、書類をミスなく短時間で簡単に作成できるシステムが充実している。これにより、残業時間の大幅削減や計画通りの入替遂行などが確実に実現できるだろう。
また、今後はパチンコ・パチスロともに新たな仕様の遊技機が登場してくる。その影響で、パチンコとパチスロの切替作業なども増えてくるだろう。遊技機の進化とともに遊技島システムも進化している。容易に自由自在に切替できる未来はすぐそこまで来ている。
ニューギン・アドバンス
スマート遊技機専用島『セルフリムーヴ』
■強化POINT❸稼働促進|遊技客のニーズに即応
遊技客のニーズはその時々で変化するものだ。言わずもがな、そのニーズにいち早く対応したホールが信頼を勝ち得ていくことになる。つまり、そのための設備投資も必要になってくる。
先述の通り、今後はパチンコ・パチスロの切替が増えていく様相だ。遊技島システムによる切替に加えユニットも切替える必要があるが、これからスマート遊技機の設置シェアを増やしていこうと考えているなら、切替が容易なユニットを選択すべきだろう。
そして、稼働促進に向けては店内装飾も大きな力を発揮する。遊技客に自店の想いを伝えたり、自店のブランド価値を高めていくために、装飾ツールを最大限に活用したい。
オーイズミ
スマスロ・スマパチ専用ICカードユニット『WICAⅡ』
SUNTAC
スマート遊技機専用iクリアシステム貸機『PRINAGE-Rs(プライネージ・アールエス)』
総販売元:新明企画
企画・開発:ティーモン
スマートビジョンネットワーク『スマイス』『スマラン』
CCG ENTERTAINMENT
CCG ENTERTAINMENTが提唱する『マーケティング戦略の最適化』
喫煙環境においては、加熱式タバコを吸いながら遊技出来る専用エリアを設けるのが一般化している。そこで最近、紙巻きタバコの遊技客に対応するため、喫煙ブースを導入する動きが目立っている。自店の喫煙状況をみて、遊技客に最適な喫煙環境を提供してもらいたい。
もうひとつのトレンドは、遊技客のニーズに対応した設備の導入だ。これは、スマホを使用しながら遊技する客が増えていることから、ながら遊技を快適にするための各台スマホホルダーや各台充電器といった周辺設備の導入が進んでいる。
環境改善のポイントは、遊技・喫煙にさらなる快適性や利便性をもたらすアップデートを行うことが重要だ。
ジー・スリー
ワイヤレスチャージャー『ビートル』/喫煙専用室『どこでも喫煙ブース』