【レポート】客数回復に向けたパチンコ店の営業戦術

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「コロナ前よりもシェア差が拡がりやすい」

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編集部によるファンアンケートの結果では、遊技する(遊技を再開する)ホールを選択するにあたり、「出玉」か「新台」、どちらを優先するかという問いに対し、3人に2人の割合で「出玉」を優先する声が多かった。

気になるのが、「出玉」を優先すると回答したユーザーの理由の中に「コロナ禍前から出玉に対する期待はできなくなった。機械性能も、店舗営業内容も」(50代・女性)、「パチンコ屋さんの台所事情が苦しいと予想出来るから出ない気がする」(20代・男性)といった後ろ向きなコメントが非常に多かったことだ。要はコロナ禍を経て、ホール営業に対する不満感や不信感がより高まったということだ。この点からも客数の回復は決して容易ではないことが窺い知れる。

ホールが少しでも業績を改善するには、それでも何らかの手を打つしかない。㈱エーゼット エンターテインメントの中嶋優代表取締役社長は「現在の市場は、地域内の色んな店舗を回遊するユーザーが大半を占める。つまり回復施策を行うお店と、そうでないお店では、コロナ前よりもシェア差が拡がりやすい」と話す。

何も手を打たなければコロナ前よりも他店にユーザーを奪われやすい状況だけに、とにかくひとつでも多くの営業施策を実施することが不可欠となる。

中嶋社長は今、打つべき営業施策の一例として「加熱式タバコ専用フロア」「主要機種の放出」「新台への投資」「特殊スペックの活用」「相関機種の多種導入」などを挙げた。

「地域の特性、自店の状況に合わせて、有効と考えられる施策をひとつでも多く実施することが大事。多くのホールが海やジャグラーの放出を行っているが、ひとつの施策だけでの回帰率100%は不可能だ」(同氏)。

数ある営業施策の中で現在、注目を集めるのが「加熱式タバコ専用フロア」の設置だろう。現在、同フロアの設置は全国に数百店舗あり、月を追うごとに急増している。しかし、同フロアの設置に当たっては注意点があると同氏はいう。

「加熱式タバコのユーザーは主に40歳以下で、また、東京都などでは比較的、普及しているが、普及が進んでいない地域も多い。同フロアを設置した支援先ホールの中でも、客数の回復が遅い、つまり効果が低かった店舗を調べたところ、そもそも加熱式タバコのユーザーが2割未満と低かった。こういった店舗では、抜本からの改善が必要だ。具体的には一部の喫茶店で行われている手法と同様、店舗内で加熱式タバコのレンタルを実施し、加熱式タバコユーザー以外の喫煙者に訴求するのが効果的な促進策となる」。

㈱エーゼット エンターテインメント
中嶋優代表取締役社長

パチンコは出玉よりも機械

またパチンコ部門での営業施策については「今、最優先すべきは出玉ではなく機械への投資だ。多くの店舗が出玉に力を入れる傾向にあるが、だからこそ逆張りの発想も必要」という。

機械への投資を積極的に行うべきだとする理由については「パチンコに限らず今の情勢下では、人は新しいもの、早いものに着目している。実際、新台の支持率もコロナ前より高い。また外部販促がしづらいなか、大々的に宣伝できる新台入替の効果は上昇傾向にある。『Pエウレカセブン』『P仮面ライダー』などの遊タイム搭載機種は若年層により効果的だ」とした。

また『Pエウレカセブン』『P仮面ライダー』といった若年層向けの話題機種の導入にあたっては、同じコンテンツの中古機(※『Pエウレカセブン』の場合はパチスロの『エウレカセブン3』、『P仮面ライダー』の場合は『パチンコ仮面ライダーフルスロットル』)を新台導入の前に、連続的に増台する手法を推奨。地域内でエウレカセブンの土壌を作る→新台のエウレカセブンを導入→遊タイムの育成→仮面ライダーの土壌を作る→新台の仮面ライダーを導入といった形で、常に話題性を保ちつつの連続的かつ複合的な仕掛けをすべきとした。

設定活用で客帯率向上を狙う

一方、パチスロの営業施策について語ってくれたのが、設定シミュレーションシステムを運用するユニークワークス㈱営業部の上田健介ゼネラルマネージャー。各ホールへのコンサルティングも手掛ける同氏は現状について「客数が8割程度しか戻っていない以上、客帯率の向上で業績のカバーを狙うのが手だ」と話す。そして、客帯率を上げるための方法として「高設定の有効活用」を挙げた。

上述の通り、新台が比較的、充実しているパチンコとは対照的に、パチスロの新台に対する注目度は低い。同氏は「少なくとも年内一杯は期待薄の状況が続くだろう」と悲観視する。こういった背景もあり、パチスロの営業施策においては、新台の積極導入よりも、設定の活用で打開していくべきだと主張する。

同氏が提唱する手法はジャグラー系やハナハナ系といった機種単体に多くの固定ファンが存在する、いわゆる「機械に人が付く」機種を対象に、分かりやすく高設定の存在をアピールするというもの。

アピールの方法は、初期、中期、最終と段階的に高設定の投入パターンを変えることがポイントとなり、同氏は「設定の入れ方をルール化すると、ほどなくして来店ユーザーは高設定の存在に気付く」と話す。

初期ではまず、「前日のボーナス合計回数が最も低い台から高設定を投入」という風に、非常に分かりやすいパターンとすることで、来店客に高設定の存在を認識させることが目的だ。

高設定の存在が浸透したタイミングで中期へ移行。ここでは高設定の投入パターンを少し変え(例えば前日のボーナス合計回数が3番目に低い台から高設定を投入など)、来店客が高設定を「探す」行動をさせることを目的とする。

「探す」という行動が定着した後は最終段階へ移り、さらに高設定の投入パターンを変え、来店客に高設定を「探させる」行動を習慣化させることを狙いとする。こうした手法により、客帯率を少しでも向上させていくことが、今の厳しい状況下では有効ではないかと同氏は語る。

ユニークワークス㈱営業部
上田健介ゼネラルマネージャー

刻々と変わる遊技者心理販促も工夫が必要

集客の回復には、広告宣伝の展開も重要である。6月19日以降、テレビや新聞、ラジオを通じての告知などが解除され、それより先に緩和されていたチラシやSNS、ホームページなどをあわせると、活用できる媒体はコロナ前の状態に戻ってきた。

では、これからの販促で意識すべき点は何か。本誌連載で「失敗しない売り場プロモーション」を提唱する㈱プラスアルファの野島崇範専務取締役は「刻々と変化し続けるお客様の心理的な状況に応じて変化すべき」と指摘する。

消費行動は消費者の心理状況によって左右されるものだが、アフターコロナではこの心理状況が変化しやすい。例えば、東京は6月19日に休業要請が全面解除されたが、7月上旬から再び感染者数が増えてきた。解除により一時的に安心感が出たものの、再び感染者数が増えたことで不安感が増幅している。

「不安を抱きながら来店するお客様の割合が増えれば、当然、売り場作りを変化させる必要がある。その中で感染防止対策を伝える安全プロモーションを無くしてしまえば、来店客の心理状況と合わなくなってしまうため、離反要因を作ってしまうことになる」という。

また野島氏は、営業数値が苦しくなると煽り系の広告が増える傾向にあると指摘。「客数が戻らない中で、煽り系の広告を増やせば増やすほど、お客様の信頼を損なう。誇大広告を施した新台にお客様が座っていなければ、店舗の信頼は低下する」と注意を促す。

安易な煽り広告は遊技客を裏切る要因となってしまう。もっともこの誇大広告はコロナに関係なく注意すべきことだ。

㈱プラスアルファ
野島崇範専務取締役

年配会員にマスク長期的なアピールも

一方、首都圏のターミナル駅で営業するホール店長は現在の広告戦略をこう話す。

「現状まだ7割程度の戻りだが、反応がいいのはやはり若い層。パチンコ、パチスロとも若い世代が動いているため、この層に向けた販促に注力している」。

ツールとしてはLINEやメールがメイン。感染症対策を入れつつ、新台情報を知らせているという。

「年配層の戻りはまだ時間が掛かり、来たくない層に販促を掛けても響きにくい。そこにはあまり費用を掛けず、会員分析を基にまだ来ていない常連客には、定期的にマスク付きの案内を送付している。焦らずに忘れられない程度に接していく」(同店長)。

これから長い付き合いが想定されるコロナ。長期的な広告戦略で顧客の囲い込みが行われそうだ。

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