【レポート】急増する加熱式タバコ専用フロア/3ヶ月でパチンコ店への設置が4倍弱の伸び

投稿日:2020年8月21日 更新日:

「加熱式たばこ専用喫煙フロア」(※以下、加熱式専用フロア)に対して現在、パチンコホール関係者から熱い視線が注がれている。営業再開後、数少ない集客ツールとして期待が掛かっており、設置店舗は日を追うごとに増え続ける一方だ。

注目は営業再開とともに

コロナ禍で冷え切ったホール営業だが、6月以降、客数は回復傾向にある。とは言っても未だ、全国平均での客数の回復率は70~80%程度。この程度の回復では、多くのホールにとって苦戦が続くことは想像に難くない。

そのようななか、加熱式専用フロアを設置するパチンコホールが、ここにきて急増している。若年層の集客に効果的との評判が広がったからだ。

主に関東一園でパチンコホール向けの広告や内外装を手掛ける㈱アール総合事務所の吉瀬倫太郎代表取締役は加熱式専用フロアについて「5月の終わりくらいから急に問い合わせが増えました。営業再開時の起爆剤として考えたホール企業様が多かったです。あるホール企業様は休業期間中を利用して、加熱式専用フロアを設置し、営業再開後の集客に成功しています」と状況を話す。

たばこを吸えるパチンコ店検索サイト「パチモク」調べによる全国の加熱式タバコ専用フロアの設置ホール数の推移は下表の通り。4月末79店舗、5月末107店舗、6月末172店舗、7月末298店舗と、設置店舗数は最近になるほど、加速度的に増えている。

加熱式タバコ専用フロアの設置店舗数推移(※パチモク調べ)

関東を中心に拡がる

同サイト運営責任者である㈱ビジョンサーチ社メディア事業本部の佐藤宏本部長は「加熱式タバコの普及率が高い東京都を中心に、関東地方のホールでの加熱式専用フロアの設置が目立っています。設置店のうち、関東地方のホールが全国の半分程度を占めています」と説明。また東京都の加熱式専用フロアが多い理由については、加熱式タバコの普及率の高さに加えて、多層階のホールが多いことも関係しているのではと分析する。

冒頭に記した通り、客数の回復率は70~80%程度と言われれている。この中には、コロナの影響のほか、ホールの完全禁煙化による影響も含まれているだろう。その度合いは測りかねるものの、概ね10%程度がホール禁煙化の影響ではないかと話す関係者もいる。

実際、加熱式専用フロアを設置することで、稼働は上がるのだろうか。某社がまとめたマーケティング資料には、加熱式専用フロアを設置した店舗毎のコロナ前(今年2月)とコロナ後(今年6月)の客数比較が行われているが、コロナ前に比べ、コロナ後に稼働が上がったというケースは少なかった。

「稼働が上がるというより、稼働の下げ幅が抑えられているといった方が、正しいのではないかと考えられます」。加熱式専用フロアの設置ホールを数多く見てきた前出の吉瀬代表取締役は話す。

㈱アール総合事務所・吉瀬倫太郎代表取締役

検索ユーザーが新規来店

ホール禁煙化によるマイナス影響を、加熱式専用フロアの設置で、多少なりとも防いでいるということだろうか。確かに喫煙者にとっては、法律が変わろうとも、遊技しながらタバコが吸えるに越したことはないというのが本音だろう。

㈱シーズ、㈱エンタテインメントビジネス総合研究所、㈱アミューズメントプレスジャパンが共同でまとめた「パチンコ・パチスロプレイヤー調査2020」によると、遊技者全体に占める喫煙者の割合は55・1%。そして、遊技者かつ喫煙者のうち、59・9%が程度の差はあれど紙巻タバコ以外のタバコ(加熱式タバコや電子タバコ)も吸っているという。つまりザックリとした計算で言えば遊技者のうち3人に1人(55・1%×59・9%=約33・0%)が、加熱式タバコや電子タバコのユーザーと言えなくもない。

実際、喫煙者の中には、タバコが吸えるホールをインターネットで検索した上で、遊技ホールを決めるケースもあるという。その結果、加熱式専用フロアを設置したホールの中には、目に見えて新規客(おそらく喫煙ユーザー)が増えたという事例も存在する。こういった事例が評判を呼び、現在の加熱式専用フロアへのニーズ上昇に繋がった。また、こうした経緯からか、加熱式専用フロアを設置した際には、前出の「パチモク」や「P-WORLD」といったポータルサイトに、加熱式専用フロア設置店として登録することが必須となる動きも見られる。

「6月以降はほぼ毎日、ホール様から「パチモク」への登録依頼が寄せられている状況です。多い時は1日に10件以上の登録依頼があります」(パチモク・佐藤氏)。

「パチモク」サイト運営責任者・佐藤宏氏

パチスロ低迷をカバー

トレンドと言っても良い加熱式専用フロアの設置だが、集客面における数少ないポジティブ要素ということもあり、設置店の増加は当面、継続すると見られている。上述の通り、これまでは主に東京都を筆頭に関東圏での設置が多かったが、「九州の大手ホール企業も設置を決めました。お盆前の営業開始に向け急ピッチで案件が進行しています」(某業者筋)といった話も聞こえてくるなど、全国的にトレンドが波及していく可能性も十分に考えられる。特にお盆営業の目玉と考えるホールが多く、加熱式専用フロアを手掛ける業者には問い合わせや注文が殺到している状況だという。

例年、お盆前の時期はパチンコ、パチスロとも大型タイトルをメーカー側がリリースするタイミングであり、ホール側もそれを集客材料に活用することがお盆営業のセオリーだ。しかし今年のお盆前にリリースされる新台のラインナップは、コロナ禍の影響もあり、近年と比較しても話題性に事欠く印象である。

また、その傾向は特にパチスロにおいて顕著だ。遊タイム効果もあり現状、新台ニーズはパチンコに軍配が上がっており、パチスロの新台は陰に隠れた存在と言って良い。

一方、若年層の集客に効果的とされている関係上、加熱式専用フロアを設置するのはパチスロコーナーとなるケースが多い。そのためか「パチスロの機械代を削って、加熱式専用フロアの設置費に充てるホールもあります」と前出の吉瀬代表取締役は話す。

業者筋の話では現状、加熱式専用フロアの設置に関して、ホールからの注文を全て受け切れている状況ではないと言い、ホール側がお盆営業のタイミングで加熱式専用フロアの設置を希望する案件も、納期が後ろ倒しとなるケースが多いという。そのこともトレンドの継続を後押しする要因となっているようだ。

暗い話題が圧倒的多数を占める中にあって、加熱式専用フロアの動向については今後も注視していく必要があるだろう。

※「月刊グリーンべると9月号」(8月20日発行)では、上記記事とともに、加熱式専用フロア設置ホールの紹介や、加熱式専用フロアを設置する上での検討課題に関する記事を掲載しております。是非、ご覧ください。

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