CASE.2|タイホーグループが挑む「組織の再定義」

大豊株式会社 取締役部長の葉山大誠氏。
SPECIAL INTERVIEW
「強い個が集まるだけでは、強い組織にはならない」。創業30年の節目に理念体系を見直した大豊は、社員一人ひとりが自ら考え、判断できる組織づくりに挑んでいる。理念刷新を主導した大豊・取締役部長の葉山大誠氏に、その背景や狙い、組織変革への考えを聞いた。
「個」の強さを「組織」の力へ 体なきキングギドラからの脱却
──創業30年というタイミングで、理念体系の再構築に着手された背景を教えてください。
突き詰めれば、「組織としてのもろさ」への危機感でした。弊社には創業以来培ってきた素晴らしい文化があり、社員一人ひとりの力も非常に強い。しかし、組織全体として「どこに向かうべきか」という明確な方向性が、言葉として定義しきれていませんでした。
私はこれをよく「キングギドラ」に例えて話します。三つの頭(個)はそれぞれ強力ですが、共通の胴体(組織の軸)がないために、時にバラバラの方向に動いてしまう。このままでは、さらに激動するこれからの時代を勝ち抜くことは難しいと考えたのです。そこで、今までの会社文化と社風をもとに、新たな経営理念とビジョンの策定、そして従来の企業理念の再定義を行いました。

大豊が再定義した経営理念、ビジョン、ミッション。
──26歳という若さで、創業者の想いを言語化し直す作業には相当な苦労もあったかと思います。
創業者である社長の意志を深く汲み取り、次の時代へと繋いでいくことは、創業者と後継者が共に健在である「今」しかできません。ウォルト・ディズニーが亡くなった後も「ディズニーがディズニーであり続ける」のと同じように、私たち経営陣が去った後も「大豊(タイホー)がタイホーであり続ける」ための不変の軸を早期に創りたいという思いが強くありました。昨年は社長と二人きり、文字通り濃密な議論を重ねました。
また、若さゆえの怖いもの知らずな部分や、業界歴が浅く何も知らないからこそ先達を素直に頼れるという強みも、このプロセスでは活かされたと感じています。時間をかけて策定した理念に対して、20年以上のキャリアを持つ幹部の方々が、「我々の想いを汲み取ってくれた」と承認してくれた時、ようやく組織の新しい「胴体」ができたと実感しました。
「豊かさ」の再定義と業界で働く誇りの醸成
──新ビジョン「人生の豊かさに貢献し、感動を生み続ける」に込めた「豊かさ」とは、具体的に何を指すのでしょうか。
「大豊」という社名にもある「豊かさ」を、現代的な視点で再定義しました。豊かさと一言で言っても、経済的な豊かさもあれば、精神的な豊かさもあり、人それぞれ異なります。私たちは、その一人ひとりの多様な豊かさに寄り添い、貢献していきたいと考えています。
──精神的な豊かさとは具体的にどのようなものでしょうか。
私個人の実感として、これまでパチンコ業界は社会的価値を積み上げてきましたが、そこで働く方々が周囲に自分の職業を自慢できる人が決して多くはないと思っています。まずは何よりも「タイホーで働いているんだ」と、社員が周囲に胸を張って自慢できる会社にしていきたいと考えています。

「自分で考える」ことが自律型組織への第一歩
──新たに策定した理念やビジョンは、どのように浸透させているのでしょうか。
役職や年齢を問わず、希望者が参加するディスカッションを軸にしています。今はAIで何でも答えが出る時代だからこそ、「あえて自分で考えること」に価値を置きたかったのです。会社が用意した正解を押し付けるのではなく、理念という「モノサシ」を使って自分ならどう判断するかを議論してもらう。このプロセスを経て、現場からは「次もやってほしい」という前向きな声が上がり、私が指示を出す前に自発的に動くスタッフが確実に増えました。
──刷新から約半年、早くも業績面を含めた成果が出始めていると伺いました。
おかげさまで、今期の営業利益は前年比145%以上の水準で推移しています。しかし、何よりの成果は組織に「一体感」が生まれたことです。店長クラスだけでなく、一般社員やアルバイトスタッフまでが横のつながりを持ち、各店舗間で交流を深めつつ、良い取り組みを自発的に取り入れるようになっています。
もちろん、人財育成にはまだ多くの課題があります。現在は「個別化育成」をテーマに、一人ひとりの強みを活かす人事方針の強化に取り組んでいる最中です。
私たちの取り組みはまだ道半ばです。同業の皆様には、まずは一つの事例として「モルモット」のように観察していただければと思います。皆様と切磋琢磨し、共に発展することで、業界全体の社会的価値を高めていく──それが、これまで支えていただいた業界への恩返しだと思っています。実際にやってみて良かった点、悪かった点など、惜しみなくお伝えするつもりですので、お声がけいただければと思います。
■プロフィール
葉山 大誠(はやま・たいせい)/大豊株式会社 取締役部長
2000年生まれ。静岡県出身。小学生から大学卒業までバスケットボールに打ち込む。高校時代は県内得点王を獲得。卒業後は大手周辺設備機器メーカーに入社し、スマパチ・スマスロ導入の激動期を現場で体験。2024年4月に大豊へ入社し、取締役部長として、理念刷新と組織変革を主導する。趣味はサウナ、愛読書は『ビジョナリー・カンパニー』(著 ジム・コリンズ)。
大豊株式会社(タイホーグループ)
《タイホー》《スリーエー》として静岡・山梨で12店舗のパチンコホールを展開。不動産管理、ホテル運営、ゴルフ練習場なども手掛ける。本社は静岡県牧之原市。




