今回は、パチンコ『シン・エヴァ』2機種の相違点がテーマです。プレイヤー心理に基づいた機種のヒットの理由を実例で説明致します(文=小島信之/トビラアケル代表取締役)。
昨年末に販売された『シン・エヴァ』。スマパチのカヲルとP機のレイの導入後の実績が大きく違っています。すでに様々なところで両機種の違いの分析が行われていますが、今回はプレイヤー心理に則ってこの2機種の差を説明していきたいと思います。
2機種の違いは大きく考えて3つありました。まず1つはP機と「スマパチである」こと。そして2つ目は「販売台数」。レイはカヲルの2倍以上の台数(最終的には3倍以上)が販売されました。そして最後に「スペックの違い」となります。
1つ目のP機とスマパチの違いは実績の差には大きく関係がありません。プレイヤーからしてみれば機種が面白ければP機だろうが、スマパチだろうが関係ないからです。
2つ目の販売台数ですが、これは少ないカヲルの方が、圧倒的に実績が出やすいです。販売台数と実績の関係は非常に重要な話なので、次回以降に詳しく説明させて頂きますが、過去の2スペック販売された機種の実績を比較すると、販売台数が少ない方が、実績が出ている傾向があります。
販売台数ではカヲルが有利な条件にも関わらず、レイの実績が良かった点の要因はスペックにあります。それもレイのスペックが抜群に良かったのではなく、カヲルのスペックに「決定的な違い」があったのです。
両機種の違いは大当たり確率、通常時の確変突入割合、そして初当たりの出玉です。この中での決定的な違いは初当たりの出玉です。レイでは300個ですがカヲルでは450個に増えています。しかし、これはプレイヤー心理的には絶対的に刺さらない部分です。
大当たり確率がカヲルはレイよりも辛くなっています。純粋にカヲルの方が投資金額は大きくなります。プレイヤーは投資金額が増えたら、その見返りに求めるのは「勝てる割合」と「出玉の期待値」になります。
勝てる割合とは、RUSH突入率です。レイとカヲルの実質RUSH突入率の差は73%と78%の5%しか差がありません。10回初当たりをしたらどちらも7~8回RUSHに突入するという程度で、プレイヤーが明らかに体感できるほどの差はないのです。
一方の出玉の期待値とは一撃の出玉です。RUSH突入時の出玉の多さですが、両機種の継続率は81%と同じで、差があるとすれば初当たり時の10Rの割合が若干違うくらいです。これもプレイヤーが体感できるレベルではありません。
これらから見ると、カヲルは投資金額が増えるけど、勝てる割合も出玉もレイとそれほど変わらない、とプレイヤーは感じるのです。それなら投資が少ない方が選ばれて当然です。プレイヤーの眼中には初当たりの出玉の多さなど微塵もないのです。
例えば、宝くじの販売金額が300円から400円に上がったとします。販売金額を上げたので当然、当選金額を増やせます。宝くじを買う人は、1等の本数が倍になることや、1等の金額が増えること期待すると思います。それが7等の金額が300円から500円になったとして宝くじを買いたいと思うでしょうか。カヲルのスペックは7等の金額が上がってしまっていたということなのです。
◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役
2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。