【コラム】パチスロのAT機とART機の違いについて

6月の新台では『パチスロ コードギアス 反逆のルルーシュ3 C.C.&Kallen ver.』がA+AT機として登場しました。近年のパチスロ市場ではノーマルタイプ以外ではAT機が多くを占めており、ART機を要望する声もきかれます。今回のコラムでは、なぜ近年（6号機以降）ART機ではなくAT機が増えているのか含め、AT機とART機の特徴について開発目線で解説していきたいと思います。（文＝ジェイさん@発信する遊技機クリエーター／J-BEAT合同会社代表）。

AT機とART機の設計について

AT機とART機の違いを一言でいうのであれば、リプレイ確率の高確率状態を搭載しているか否かです。これにより、出玉試験の難易度が大きく変わります。

表：AT機とART機を比較する遊技履歴

イメージを分かりやすくするために、極端な遊技履歴をみていただくと、まずAT機はこの10G間に4枚役（AT役）が7回成立し、この区間の純増は1枚です。一方、ART機はこの10G間にリプレイが8回成立し、純増が1枚となっています。どちらも、打ち手が得られた（増えた）枚数は1枚です。

ここでこちらの遊技結果を、遊技機規則の遊技メダルの獲得に係る性能に関する規格に照らし合わせると、AT機は投入枚数が30枚で、払い出し枚数は31枚となり、こちらは、103.3%となります。一方、ART機は投入枚数が6枚で、払い出し枚数が7枚となり、116.7%です。これは、リプレイは払い出し枚数で見ると0枚であり、次ゲームの投入枚数が0枚となるためです。

このように、打ち手感覚の出玉性能は同じにも関わらず、遊技機規則上の出玉性能はART機の方が高くなります。リプレイ確率が上がる事で、遊技機規則上の出玉上限に抵触する危険度が高まるので、同じ出玉性能であればAT機の方が作りやすい（型式試験に適合しやすい）機械となります。

リプレイ確率の変動について

ART機は通常時約1/7.3で成立しているリプレイを、ボーナス後などを契機に高確率に変動させています。ちなみに、リプレイ確率の変動契機は遊技機規則で細かく定められています。このリプレイ確率の変動は5号機以降の遊技機規則で大きな特徴となる仕様であり、様々なゲーム性が生まれてきました。

一方、AT機では基本的にゲーム性に関わるリプレイ確率の変動は困難です。これは、先ほども述べた、遊技機規則で定められたリプレイ確率の変動契機にボーナスが大きく関係しているからで、常に内部的にボーナスが成立し続けているAT機（=ゼロボーナス搭載機）と相性が悪いのです。AT機に搭載された疑似ボーナスでは遊技機規則にのっとってリプレイ確率の変動は不可という事なのです。

余談ですが、リプレイ確率の変動はジャグラーシリーズのような完全ノーマル機には無縁の話かとも思われますが、ノーマル機はボーナス開始を契機にリプレイ確率が変動しています。ノーマル機のBIG中にリプレイが成立しない（リプレイ確率が0に変動している）のはこのためです。

A+AT機の『パチスロ コードギアス 反逆のルルーシュ3 C.C.&Kallen ver.』は、先にあげたリプレイ確率上昇による出玉試験の危険度を上げる事無く、かつ単純なAT機では搭載出来ないリプレイ確率の変動仕様を搭載しています。これは基本的に作動も消化もされないゼロボーナスではない通常のリアルボーナスを搭載しているAT機だからです。

このため、ART機のようなボーナス後のリプレイ確率の変動も搭載可能となっています。コードギアスのボーナス後RTではトータル的なリプレイ確率（1/7.3）はそのままに、ゲーム性としてのリプレイ確率（C.C.揃いなど）を変動させています。

さいごに

5号機以降様々なスペック仕様の機種が生まれ、打ち手の方の好みも分かれてきております。現時点でスマスロではAT機のみの登場ではありますが、設計の幅が広がる中で、今後はA+ART機、A+AT機、そしてノーマル機も登場する事でしょう。

作り手は原則遊技機規則を基に遊技機を設計しています。各機種に搭載される、出玉性能やリプレイ確率の変動に関わる性能に関しては遊技機規則と合わせて理解を深めていただければ、より機種が生まれた意図も組みとれますので、今回の話を参考に紐解くきっかけにしていただければと思います。