2021年の上半期において、世界的な半導体不足が継続中だ。その影響は自動車産業をはじめ、スマートフォンや家庭用ゲームなどにも波及している。果たしてパチンコ業界への影響はどの程度あるのだろうか。
深刻な半導体不足
産業間で奪い合い
半導体は戦後の日本の経済用語で“産業のコメ”とも言われている。「産業全体の基盤となり、産業の中枢を担うもの」という意味のごとく、今や半導体は家電製品、自動車、スマートフォン、パソコンなどにも使われており、生活するうえで欠かすことのできないものとなった。その半導体が今、世界的に不足している状況にある。
帝国データバンクが8月30日付で発表した「上場企業『半導体不足』の影響・対応調査」によると、2021年以降に判明した半導体不足に対する影響や対応のうち、生産や商品・サービス供給面で、マイナスの影響を示した上場企業は115社にのぼった。特に、半導体の供給不足により取引先の減産にともない、自社でも生産調整を強いられた「間接型」の企業が全体の半数を占めた。また、販売や納品に支障をきたした影響も確認された。
こうした影響を色濃く受けたのが自動車産業だ。大手自動車メーカーの多くが減産を発表したことでも大きな話題となった。
半導体不足の主な原因の一つは、半導体需要の回復が、多くの半導体メーカーの予測を上回ったことにあると言われている。新型コロナウイルスの世界流行により需要が落ち込むとみて、各メーカーは半導体の注文・製造の抑制に踏み切った。
しかし、AIや5G、IoTといった技術発展のほか、コロナ禍によるテレワーク促進によるノートパソコンの需要の高まり、巣ごもり特需による家庭用ゲーム機の売上増など、半導体需要が増加する要因が重なったことを背景とし、予想に反して半導体市場は急回復した。加えて、半導体の生産工場が火災・寒波・停電等で稼働停止になった点も大きく、半導体は今、奪い合いの様相を呈している。
半導体不足の影響は、2021年内は続くというのが支配的な意見だ。半導体製造市場でトップシェアを誇る企業の関係者は「2023年まで半導体の供給が制限される可能性がある」と発言している。材料費の高騰などを理由としたコスト増の波も生じはじめており、今後も半導体市場の動きには注視していく必要がありそうだ。
受注台数を抑えて対応
商機を逸するメーカーも
半導体不足はパチンコ業界にとってどのような影響を及ぼしているのか。あるメーカー関係者は「せっかく増産できるタイトルがあっても、受注台数を抑えざるを得ない状態にある」と話す。
また、別のメーカー関係者は「販売計画を後ろ倒しにして対応することになりそうだ。半導体だけではなく他の部品も不足しており、調達担当が必死になって探しているが、受注案件全てに応えられない状況」と嘆く。
半導体不足をはじめとした影響が長引けば、苦戦の続くパチスロで今後、増産が見込める機種が登場した際でも台数を制限しなければならない。パチンコに遅れをとっている、新規則機への移行を考えてもかなりの痛手だ。
一方、「ロスを出さないよう堅実に目標台数設定している。部材も十分に足りているため販売スケジュール等も変更する予定はない」と、あまり影響を感じないメーカーもあるようだ。その分、保通協の適合率が低迷している点などに危機感を抱いている様子だった。
また、遊技機だけではなくホール運営に欠かせない設備への影響を懸念する声も。「塗料や樹脂(ポリカーボネート)の値上がりが顕著で、昨年同月比で3倍まで高騰している。島など設備面にも影響が出始めるのではないか。材料原価の高騰が続けば、販売価格に転嫁する必要も出てくるかもしれない」(メーカー関係者)と話す。
今年の冬商戦は、完全新規則機時代に向け、新台購入を行う最後のチャンスだ。そういう意味でも、世界的な半導体不足による影響は、遊技機メーカーに止まらず業界全体にとって大きなダメージだ。業界はいま、大きな正念場を迎えている。