【コラム】顧客遊技データに基づく優位性が高い増台判断

投稿日:2020年9月29日 更新日:

・お客様視点の店舗運営
本連載は「お客様心理の見える化」をテーマに、顧客遊技データを把握する事の重要性をお話してきました。「台データと何が違うの?」「台アウトや稼働人数を見れば分かるのでは?」という質問を多々いただきます。そこで今回は、改めて台データと顧客遊技データの違いをお話し、台データでは見えない顧客遊技データの変化を迅速に捉えた優位性の高い増台判断についてお話したいと思います。

台データと顧客遊技データの違い

台データは業界側の視点であり、顧客遊技データはユーザー側の視点です。台データは指定した期間の最終結果が数値化されたデータであり、機種のスペックや性能が把握できます。

一方、顧客遊技データは遊技した過程が数値化されたデータであり、ユーザー心理が分かり、遊技した結果に対する満足度が測定できます。スペックを理解する上で台データは重要な数値ですが、そこからはユーザー心理や満足度は分かりません。

何故ユーザー心理を理解する必要があるのでしょうか?パチンコ、パチスロをする「目的すなわちニーズが何で、その為の解決手段すなわちウォンツは何か」、一般業界であれば商品の価格、機能、サービス内容が明示されており、「目的を解決する為の手段になるのか」が容易に把握できます。

パチンコ、パチスロは、機種のスペックは提示されていますが、全てのユーザーがそれを容易に理解し、スペック通りに遊技している訳ではありません。

本連載の中で「勝率重視派」「勝金額重視派」というお話をしてきました。それぞれニーズは「勝率・勝ち体験」「勝金額の多さ」です。

ユーザーは、現在遊技している機種が解決手段となるのかどうかを遊技する過程や、周りの状況で判断しています。機種寿命が短くなっている現状において、遊技過程を数値化し、ユーザーの声や満足度を迅速に把握し、ユーザー視点での機種運用を行う必要があります。表1に台データと顧客遊技データの視点の違いをまとめてみました。ユーザー視点のデータをご自身が遊技する立場でご覧いただければ、顧客遊技データは遊技の過程であり、ユーザー心理である事がお分かりいただけると思います。

台データでは見えない顧客遊技データの変化を捉える

各項目の中で今回は「MY」と「勝金額平均」の違いに関する詳細説明と、顧客遊技データの変化を捉えた迅速な増台判断が、機種運用に大きな影響を及ぼしたケースをお話したいと思います。

両数値から射幸性や出玉感が把握できますが、「MY(最大持ち玉)」は台アウトに比例し、新台時が一番高くなります。また、複数人で構築された数値であり、個人別の「MY」すなわち個人が得た出玉は把握できません。

一方「勝金額平均」は台アウトとは関係ない、いわゆる「個人別MY」になります。ですからユーザー視点での射幸性や出玉感を判断する為には「勝金額平均」を把握する必要があります。

両データの変化を把握し、優位性の高い増台判断がされた機種として『P大工の源さん超韋駄天』を紹介します。表2をご覧ください。登場後のAI–CIS週毎推移表です。

同機は緊急事態宣言中に登場した機種という事もあり、ユーザーの出玉に対する期待値は低く、特に注目されることは無く低稼働で推移していました。

ところが、緊急事態宣言が解除され、全国的に通常営業に戻った5/25の週から顧客遊技データが変化し始めました。台データのアウト及びMYに変化が見られたのは、2週間後の6/8の週以降です。

特に注目は、アウト/1人と勝金額平均が増加した事です。アウト/1人は時間の経過とともに減少して行きますが、増加するのはレアケースで、この様な機種は大化けする傾向にあります。

6/1の週には勝金額平均が3万円を超えており、新規則機で週平均が3万円を超えたのは初めてです。その後、7月に入るとアウト/1人が5,000を超え、勝金額平均は3.3万円と高い数値となっています。

この時期アウト/1人が5,000を超えていたのは、『大海4』『沖海4』『真 ・北斗無双』しかなく、勝金額平均が3万円を超えていたのは『真・北斗無双』のみ。旧規則機のメイン機レベルの数値で、旧規則機に勝るとも劣らない機種となっていました。5/25から客層や遊技状況が変わり始めたのは明らかで「勝金額重視派」のウォンツを満たす様になっていたのです。

そこで、「どこで増台の判断をしていれば?」という事ですが、顧客遊技データの変化を捉えていたホール様は、6/1の週には判断をされました。この時点で中古相場は20万円台で推移していました。

台データの変化を見て判断したホール様は6月中旬で、この時期は売り物件も少なく、価格は急上昇し100万円を超えており、本連載執筆時点では200万を超えています。僅か2週間の差が、機種運用における大きな投資効率の差に繋がった事がお分かりいただけると思います。

今回はあくまでも一例ですが、この様な機種は稀にではありますがこれまでも存在しています。本連載では導入初期の顧客遊技データを見た迅速な判断手法をお話してきましたが、時間の経過と共に変化する顧客遊技データを捉えた機種運用も重要です。台データと顧客遊技データの違いをご理解いただき、機種運用にご活用いただければ幸いです。

◆著者プロフィール
三輪 勝治
㈱エムシック代表取締役
1985年立教大学法学部卒業。パチンコ業界大手周辺機器メーカーに勤務。遊技台情報公開システム、情報ネットワークシステムの開発に携わる。退職後、One To One顧客管理システムの開発・販売会社設立に参加。業界初の顧客遊技履歴データネットワークシステムを立ち上げる。システム開発、セミナー講師、等幅広く活動。2016年10 月株式会社エムシック設立。

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