【レポート】五里霧中のパチンコ・パチスロ機市場~コロナ禍と経過措置の延長が与える影響とは!?

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究極的な苦境に立たされるパチンコホール営業だが、セーフティネットの業種指定とともに、数少ない明るい材料として、旧規則パチンコ・パチスロ機における経過措置期間の延長が挙げられる。このこと及び発端となったコロナ禍が、特に今年下半期、遊技機市場にどのような影響を与えるのだろうか。

新型コロナウイルスの影響で、遊技機市場を取り巻く状況も一変した。ホール側はもちろん、供給するメーカー側も事前の方針から大きな転換を余儀なくされている。

殊更、市場に大きなインパクトを与えたのが経過措置期間の延長だろう。警察庁は5月14日、国家公安委員会規則の一部を改正し、原則的に最大2021年1月末までとしていた旧規則機における認定、検定の有効期限について1年間の延長を認めた。これを受けパチンコ・パチスロ産業21世紀会は5月20日、延長の対象となる遊技機の取り扱いについて詳細を決定。当初の検定および認定が切れる予定だった日付を基準とし、遊技機のタイプに応じて、段階的に新規則機への入れ替えを進めていくこととした。

そもそも2020年は、遊技機市場にとって特別な年となる予定だった。改正規則の施行に伴う経過措置の最終時期(~2021年1月末まで)に当たることから、旧規則機から新規則機への入れ替えを半ば強制的に進めなければならず、ホール側にとってはその対応が大きな課題となっていた。

一方のメーカー側は、近年では数少なくなった入替特需の発生を期待し、大型タイトルおよび定番タイトルの投入を例年以上に予定していたと聞く。目標とする販売台数も例年以上の水準に設定していたメーカーが多かったと思われる。

特別な年となる予定だった2020年だが、新型コロナウイルス問題という想定外の事態が発生したことをキッカケに、全く異なる別の特別な年になってしまった。

あるメーカー関係者は「販売計画や機械開発など今後のことについて社内では色んな話が出ている。しかし状況が不透明過ぎて決めきれないことが多い。手探りで進めていくしかない」と話す。

当初の予定では5月中に撤去しなければならなかった『沖ドキ!』。経過措置の延長により2020年末まで設置が可能となった。多くのホール関係者にとっては朗報だが、一部の県では、改正規則の施行前に認定期間が満了となり、継続設置が叶わなかったケースもある。

遊技機の購買意欲が激減

6月以降、ほぼ全国の地域でホール営業が再開した。しかしホール側の期待もむなしく一度、離れたファンはなかなか戻ってこない。あるホール関係者は「コロナ前の稼働を基準とすると、せめて8割程度の水準にまで稼働が回復しない限り、営業が成り立たない」と嘆く。

多くのホールが営業を再開したにも関わらず経営的な目途が立っていないのが現状だ。しかも今年4月、5月の業績は、休業の影響もあり「対前年比で4月の粗利額は85%減」という悲惨な状況に見舞われたホールもある。

こうしたホールが業績の落ち込みを少しでもカバーすべく選択するのは「機械代の削減」と見て間違いない。実際、あるホール関係者は「3月決算の弊社は、少なくとも今年上期(~9月)までは機械代を極力抑える予定だ。この方法しか4月、5月に失った粗利を埋める術がない。もちろん全てをカバーできるとは思ってないが…」と話す。

今年の夏は特に新台市場が低調に推移するだろう。これを見越してメーカー側も機種のリリースは慎重にならざるを得ない。ホールの休業の影響もあり、今年6月に至っては新台の納品開始が1機種もないという異例の事態となっている。

7月以降は、納品予定機種がそれなりに揃ってきたが、メーカー関係者は「ホールの購買意欲が低いため、この夏は多くのメーカーがリユース機の販売を中心とするのではないだろうか。また営業再開後のホールの現場を調査した限り、特にサラリーマン層の減少が目立つ。こうした層が好むミドルスペック機をリリースしても稼働面での苦戦が予測される」と分析する。

新台の購入については、あるホールコンサルタントも「特に中小ホールは、機械を買う余裕が本当にない。なので、毎月15%ずつという段階的な撤去も見据え、今の内から10万円以下の安価な中古機を確保するようアドバイスしている。ただし最近になってこれらの中古機も値段が上がり始めているが…」と話す。

今年の新台販売
Pは70~80万台、Sは50万台前後か!?

ここであるマーケティング会社から提供して頂いたパチンコ、パチスロの新台販売台数の推移を紹介したい(表1参照)。

同社の調査によると今年の上半期(~6月)の新台販売台数はパチンコが約41万台、パチスロが約23万台。昨年同期に比べ新型コロナウイルスの影響もあり、パチンコが約8万台減、パチスロが約7万台減、合計約15万台の減少となっている。

「ホール側の新台に対する購買意欲が底を打つのは今年の秋口あたりと予想している。メーカーは既に発表済みで納品延期となった機種以外については、おそらく年末まで大型タイトルの投入を極力、控えるだろう。また今年、撤去しなければならない旧規則機についてだが、パチンコは設置台数の多い大型タイトルは、前倒し認定を行わなかった『大海4』ぐらいだ。一方のパチスロも『ミリオンゴッド凱旋』など高射幸性パチスロ機や『沖ドキ』が挙げられるが、パチンコ、パチスロとも設置台数的には来年に比べ今年は少ない。こららも考慮すると、今年下半期の販売台数は、パチンコが30~40万台、パチスロが20万台前後になるのではないだろうか」(マーケティング会社・代表)と予測する。

開発進捗や部材調達への影響は少なめ

新型コロナウイルスで活動の停滞を余儀なくされたのはホールだけではない。メーカーの多くが、4月および5月は社員の在宅勤務などの対応を取った。極端なケースだと8月末まで社員に自宅待機の指示を出しているメーカーもある。

このことが新台の開発、あるいは今後のリリース数にどの程度、影響を与えるものなのか。この点について「開発の進捗自体にそこまで大きな影響はない」と話すのはあるメーカー関係者。

「確かに今後の遊技機市場の厳しさを想定し、開発を中止したプロジェクトもある。しかし、それ以外については在宅勤務の期間中も開発者が輪番で出勤することで、水面下で開発プロジェクトは進めていた。また機密保持の観点から、開発業務を社外で行うのは難しいと思っていたが、機密情報を社外のパソコンに持ち出せない仕組みとした上で、社外のパソコンから社内のパソコンへアクセスできるようにすること、そして、リモート会議の活用等で、ある程度、在宅での開発業務も可能となった」と話す。

また本来、3~5月にリリースする予定だった機種の多くが、販売の延期を余儀なくされた。販売延期となった機種の多くが今後、改めてリリースされることとなる。この点も踏まえると今後、遊技機のリリース数が極端に不足する可能性は低いだろう。

一方、新型コロナウイルスの影響を意識し出した今年の1~2月にかけてメーカーを襲った現象が、部材調達の遅れだ。これにより一部の新台納期が遅延する事態となった。

部材メーカーの関係者によるとこの点、現在は「東南アジアの一部の国からの部材調達で影響は残るものの、中国からの部材調達は順当に行えている」という。従って、今のところ部材調達面での不安はあまりないようだ。

また一部のメーカーでは、新型コロナウイルス感染の第2波に備えて、再び部材不足にならないような対応、あるいは方法の模索を行っている。

先の部材メーカー関係者が続ける。「汎用性の高い部材については、今のうちにより多く確保する動きがある。問題は、この前と同じく、中国での調達や部品の組み立てが難しくなった場合である。こうした事態を想定し、今まで中国に頼っていた部材の調達や組み立てを、例えば国内で行った場合の納期やコストの調査を始めているメーカーもある」という。

部材の調達を中国に頼る大きな理由はコストが安いからに他ならない。しかし、何でもかんでも中国となると、中国国内で問題が発生した場合、リカバリーしづらい。したがって多少、コストが嵩むことになっても国内での部品調達や組み立てを想定したコスト算出や、有事の際、どれだけ納期が短縮できるかを調べているというのだ。

今年初頭、新型コロナの影響で中国からの部材調達に遅れが生じ、新台の納期遅延が発生した。一部のメーカーでは、新型コロナ第2波に備えて、再び部材調達や組み立てに困難が生じない対策を模索しているという。

販売延期には表から見えないマイナス面も

先述の通り、新型コロナウイルス問題が、遊技機メーカーの開発の進捗自体にはあまり大きな影響を与えていないものの、ある開発会社関係者は「確かにそうだが、結果的にメーカーの開発には遅れが生じるだろう」と見通す。

これは一体どういうことなのかを説明する前提として、同氏は最近の遊技機の仕様について「気付いていない人も多いだろうが、ここ最近、特にパチンコのスペックの進化が著しい。現に今年にリリースされた一部の機種のスペックは、昨年までだと実現が厳しいと見られていた。これは内規の撤廃などを受けて、メーカー側のトライ&エラーの積み重ねの賜物だ」と話す。

機械事情に詳しい人以外には難しい話かもしれないが、確かにここ最近のパチンコ機は例えば出玉スピードなど、スペックアップしていることは間違いない。これは何も今に限った話ではなく、これまで続いてきた遊技機スペックの歴史でもある。例えばパチスロ5号機を見ても、当初仕様と最終仕様は基本的な規則は同じにも関わらず、ゲーム性の魅力や出玉性能においては飛躍的な進化を遂げている。

つまり過去も現在も遊技機のスペックというのは進化を続けるという特性がある。そして、この特性は未来にも当てはまると考えて良い。

前出の開発会社関係者は「従って、今年年末あたりのリリースを予定して開発が進められているパチンコ機は、普通に考えて現状、リリースされているパチンコ機よりも魅力的なスペックとなる可能性が高い。一方、新型コロナウイルスの影響が無ければリリース済みだったであろう大型タイトルの一部が、現在も販売延期中となっているケースがある。これらの機械は今、リリースすればおそらく魅力的なスペックに映るだろう。しかし今、リリースしてもホールの購買意欲が低いことから、メーカー側が期待するほど売れない可能性がある。だからと言って、例えば単純に年末まで抱えていたとすれば、その頃にはおそらくスペック的に古くなってしまう。これはメーカー側も当然、分かっているので、どうするかと言えば、スペック面を中心に作り変える必要がある。この作り変えるという作業が余計に発生する分だけ、結果的に開発が遅れるだろう」と分析する。

様々な要因により、メーカーの販売計画も、おそらく二転三転どころではない変更の連続ではないだろうか。そもそも多くのメーカーは「新規則機は旧規則機に勝てない」という認識を持っている。従って当初は、旧規則機の設置期限に沿って、その後継機の投入などを軸に販売計画を立てていたと考えられる。しかし設置期限が延長となったことで、軸となる機械の販売時期の後ろ倒しが必要となった。その一方、ホール側の購買意欲が極めて低いなか、既に開発を終えた機械の販売のタイミングの模索も必要だ。また上場メーカーを中心に「売りたくなくても売らなくてはならない」事情といったものも存在するだろう。メーカーにとって、どのタイミングで機械をリリースしていくのが最適なのか、非常に高度な判断が要されると推察できる。

一方のホール側も機械の入れ替えについてはもどかしい状況が続く。

「今はとても機械が買える状況ではない。この状況は集客力が回復するまで続くだろう。ただし、集客力回復の起爆剤となりうるのは機械しかないというのも、また事実だ。メーカー側の動向が見えづらいこともあり、どうすれば良いか答えが出ない」(ホール関係者)。

新型コロナ問題という未曽有の事態を受け、遊技機市場はまさに五里霧中だ。ホールもメーカーも霧に包まれた中での対応が迫られている。

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