【コラム】緊急事態宣言解除後のパチンコユーザー動向を把握する

投稿日:2020年6月23日 更新日:

・お客様視点の店舗運営
全国に発令された緊急事態宣言は、5月末をもってすべて解除されました。前回の連載では、緊急事態宣言が発令され営業自粛に入った週に登場したセブン機新台を遊技した客層を把握し、自粛明け営業再開時におけるセブン機新台の活用方法と店舗運営に関して、特に若年層に焦点を絞りお話しました。

今回は、営業再開前後における、「海物語」と「低玉貸営業」の顧客動向を把握し、高年齢層に焦点を絞った店舗運営に関してお話したいと思います。

営業再開前後のユーザー動向

まずは表①をご覧ください。2月以降のグループ毎のアウト、アウト/1人の増減率を表示しています。それぞれの2月の値を100%とした増減率です。このデータから読み取れる事を時系列にまとめてみましょう。

3月時点では各グループともアウトが低下し始めていますが、アウト/1人はあまり低下しておらず、来店者数は減ったものの来店遊技したユーザーの遊技時間は減っていない事が分かります。また、アウトの減少率はパチンコで大きくパチスロで小さく、更にパチンコでは「ミドル」「低玉」、パチスロでは「5号機A」「低スロ」の低下が大きく、中高年齢層の来店減が大きいと想定されました。

4月になると「ミドル」のマイナス51%を筆頭にアウトは大きく減少し、アウト/1人もマイナス10%を超えるグループが半数を超えています。これは緊急事態宣言や外出自粛要請で店舗への来店客数が大きく減少したこと、また来店したユーザーも日常的な不安感や、高い利益率での営業により遊技時間を減らしたと考えられます。同時にPS間の減少率の差異は拡がり、中高年齢層の来店回避が更に深まったと考えられます。

この年齢層による来店意欲の差異は休業明けにも見られます。店舗が営業を再開し始めたGW明け1週目(5/7~5/13)、2週目(5/14~5/21)には、「5号機ART」「6号機ART」「ライトミドル」のアウトが回復基調である事に対し、「ミドル」「ハネデジ」「5号機A」にはその傾向が見られません。更に「5号機ART」「6号機ART」のアウトとアウト/1人を比較すると、減少幅が近い値であり、同時期の両グループのアウト減少の主要因は来店数より遊技時間減少だった事が分かります。

つまり、若年層を中心とした「AT/ARTユーザー」の来店は既に回復傾向があるのです。アウト/1人こそ回復していませんが、休業による店舗の利益損失を補う為の高い利益率を考慮すればやむを得ない処でしょう。

以上の事から今後、店舗の業績を回復させるにはパチンコの稼働回復が重要であり、このパチンコの回復には大きく2つの課題が設定されるでしょう。

1つ目は戻りが早いと思われる若年層「パチスロユーザー」のパチンコへの回遊促進であり、これは前回の連載でお話した通り、ライトミドルを活用すべきで、今ならば「Pシンフォギア2」が旬でしょう。

2つ目が今回の主題である戻りが遅いと思われる高年齢層の来店促進で、特に「海物語」と「低玉貸」の取り込みです。両カテゴリーにはヘビーユーザーが多く、1日の一定時間を生活習慣としてパチンコ遊技に費やしています。表①を見ますと「低玉貸」はパチンコの中ではアウトの減少率が低く、かつ回復傾向があります。またアウト/1人の減少率はPS全グループで「低スロ」の次に低くなっています。つまり、来店さえ回復できれば稼働も回復し易いと考えられます。更に「低玉」の中でも「甘海」は特にヘビーユーザーが多くを占めています。生活習慣の面で、一度習慣を取り戻せば安定的な来店が見込まれるのです。

他店のコアユーザーを取り込む

グランドオープン初日に地域会員限定オープンを行うと、高年齢層は「4円ミドル海」「4円甘海」「低玉貸甘海」の順に埋まっていく様子が見られます。これは、現「低玉貸」ユーザーは、旧「4円ミドル海」ユーザーが多く、「勝ちへの期待値」が高い営業が行われれば、「4円ミドル海」を遊技するからです。

「ミドル海」の新台が登場した時に「低玉貸」ユーザーが「4円海」を遊技するのはその為です。ですからグランドオープンで「4円ミドル海・甘海」に着席できなかった場合は、他の4円セブン機ではなく、長時間遊べる「低玉貸」の中でも、特に「低玉貸甘海」を選択するのです。

今回の長期休業による営業再開は、ユーザーから見れば、久しぶりの遊技であり、グランドオープンの様な新鮮さを感じるのではないでしょうか。ですから他店のコアな「海」ユーザーを一気に取り込むチャンス時期なのです。

コミュニティを形成する

また「海」「低玉貸甘海」ユーザーに共通しているのがコミュニティの形成です。人を誘って互いに作用されながら行動する傾向があり、きっかけさえ与えれば集団での店舗への戻りが早いのです。つまり両カテゴリーのユーザーの来店促進がパチンコの盛況感を作り出し、業績回復を早める事となるのです。

今回の一連の騒動の中で、パチンコ店やパチンコファンに対しての世間の風当たりが大きくなっています。この様な状況において地域全体からのイメージ回復を行う必要があります。これは、周囲を窺いグループで行動する傾向の強い高年齢層の「遊技に対するひけ目」を無くす上で大きな意味があります。地域全体からの信頼を得られる店舗と得られない店舗では大きな差が付く事になります。その為に「地域密着運営」を進化させることを検討してはいかがでしょうか。

①駐車場にて近隣飲食店のお弁当などテイクアウト商品の販売を行う。外食の減少で売上低下している飲食店のサポートとして取り組む。
②同様に、販売量が激減し廃棄が増えている農家の地場野菜販売を行い地場の産業への寄与を担う、等々。

この数ヵ月で我々が得た教訓は『現状を数値で分析せず、目的が不明確で、数値化された明確な目標の無い世界が如何に不安で危険なモノであるか』です。お客様心理を数値化し、見える化する事の重要性を改めて認識していただければ幸いです。

◆著者プロフィール
三輪 勝治
㈱エムシック代表取締役
1985年立教大学法学部卒業。パチンコ業界大手周辺機器メーカーに勤務。遊技台情報公開システム、情報ネットワークシステムの開発に携わる。退職後、One To One顧客管理システムの開発・販売会社設立に参加。業界初の顧客遊技履歴データネットワークシステムを立ち上げる。システム開発、セミナー講師、等幅広く活動。2016年10 月株式会社エムシック設立。
URL www.ai-cis.com
Mail info@ai-cis.com

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