今回は、機種選定について解説致します。テーマは、「機種評価で出来を判断する以上に重要なこととは」です(文=小島信之/トビラアケル代表取締役)。
よく導入前の新台の機種評価を、点数をつけ見える化をして欲しいという要望をお聞きします。例えば、A機種は「版権B、スペックA、ゲーム性C、販売台数B、総合B」というような感じです。
こんな感じの評価シートを皆さんも一度は見たことがあるのではないでしょうか。このような要望をされたとき私は決まってこう答えます。機種の評価軸を導入後の稼働や中古価格で考えたとき、販売台数の影響がほとんどで、機種自体の評価はあまり意味がありませんよ、と。
例えば同じような評価の機種が2機種ありました。販売台数が一方は3,000台、もう一方は30,000台だった場合、導入後の結果は明らかに違うことはお分かりいただけるかと思います。新台導入後の実績、稼働や中古価格を左右しているのは機種の出来ではなく、実は販売台数なのです。
どんな新台であってもその機種を面白いと思うプレイヤーは必ずいます。しかし、機種の出来によって面白いと思うプレイヤーが多かったり、少なかったりします。その人数より販売台数が少なければ実績は良くなり、販売台数が多ければ実績は悪くなります。
先日、『リゼロ2』が導入されました。導入直後の稼働状況は良かったのですが、その後の稼働はやや苦しんでいます。では、『リゼロ2』は面白くない機種なのでしょうか。そういった評価であればこれだけの台数は売れていないでしょう。
『リゼロ2』は前作同様に面白い機種なのです。ただ、販売台数が多過ぎただけなのです。前作の初期導入は8,000台でした。今回も同様の台数であれば、前作のような高稼働をしていた可能性が高いでしょう。台数によって結果が大きく変わってしまったのです。このように機種評価で大事なのは、その機種が良いか悪いかを判断することではなく、機種の出来から「適正台数」を見抜く力こそが一番大事なのです。
新台の適正台数を見抜くには機種の出来をしっかりと判断をしなければなりません。判断するのはプレイヤーにとって面白いか面白くないかです。人の面白いという感覚は、機種説明の資料だけを見ても分かるモノではありません。五感で感じ取るモノなのです。
毎年、漫才師のNo.1を決めるM-1グランプリが行われています。その評価は、各漫才師の面白さに優劣をつけて判断されますが、その評価基準は審査員が項目ごとに「ネタの面白さ」「間の取り方」「分かりやすさ」など各項目で点数化はせずに、各審査員の感性を点数化して行われています。
人の感覚に訴えるものなので、項目ごとに点数をつけて見える化することが難しいのです。そのため感性の高い審査員が、その感性で審査を行うのです。「面白さ」だけでなく「きれい」など、人の感覚に訴えるモノの評価の仕方のほとんどが、高い感性を持った人がその感覚で評価を行っています。
正しい新台の評価とは、実際に遊技をした上で、この機種の面白さなら「どれくらいのプレイヤーが面白いと思うのか」ということを感じ取ることであり、それが適正台数の評価となるのです。そして当たり前ですが、人の感覚の部分の評価を行うので、高い感性を持っている人の方が精度は高くなります。機種選定とは「適正台数を見抜く力」に他ならないのです。
◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役
2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。