失敗しない売り場プロモーション㊻(文=野島崇範/株式会社プラスアルファ専務取締役)
視覚だけに頼らない広告戦略
前回の続編です。パチンコ店の情報発信はこれまで視覚に強く依存してきました。そして、射幸性を高める広告の内容が発信できないため、現在その流れは加速して、特別注文の特大な装飾や造形物・華やかなタペストリーやフラッグ・鮮やかな照明演出など、魅せ方に重点を置き、射幸性を高める努力を続けています。
広告をお客様に記憶させるという視点では無意味・無駄なことですが、店長を含む経営幹部の方々が視覚的なインパクトにこだわりたい気持ちは理解できます。しかし一方、果たしてそれだけで高齢層のお客様にしっかりと伝わっているでしょうか?
ユニバーサルデザイン(またはバリアフリーデザイン)という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
2022年の内閣府の調査では「ユニバーサルデザイン」を知っていると答えた人の割合は、59.0%でした。一方、パチンコ店でユニバーサルデザインという言葉を知っているかどうかを聞くと、ほとんどの方は知らないです。それにも関わらず、ご年輩のお客様を集客したいという言葉を多々耳にします。ユニバーサルデザインを分からずして、ご年輩のお客様を集客することは不可能です。
視覚の限界を知る:高齢者の「見えにくさ」
厚生労働省のデータによれば、日本人の視力は40代後半から徐々に低下します。白内障や老眼によって、小さな文字や派手なデザインの細かい装飾が見えにくくなります。
今、あなたの店舗のポスターやPOPは「見えやすさ」を意識したデザインでしょうか? 文字が小さすぎたり、背景と同化して読みづらいケースは珍しくありません。高齢者にとっては「見えない情報」は「存在しない情報」と同じです。
聴力の強み:60代までは「聞こえる」
一方、聴力の衰えは60代以降が一般的です。つまり、視力よりも20年程度長く「聞く力」は保たれます。この特性を活かせば、高齢層のお客様にも「聞いて伝える」プロモーションが可能なのです。
例えば、店内放送にて、遊技中のお客様へ海物語や甘海・ジャグラーの出玉ランキングの案内をアナウンスする。休憩スペースにいらっしゃるお客様へ新規会員募集の案内と来店ポイントが貯まることをアナウンスする。またコロナ禍以降、衛生面や安全面を気になさっているご年輩のお客様は一定数いらっしゃるため、「空気清浄機を稼働中で、きれいな空気の中でご遊技いただけます」「手指消毒液をご用意しておりますので、安心してお過ごしください」などのアナウンスを行う。
こうした工夫は、視覚的な負担を減らし、自然に耳から情報を入れる手段となります。
もちろん、視覚的なプロモーションを軽視するわけではありません。あくまで重要なのは「見えやすく」「聞こえやすい」両輪のバランスを取ることです。
特に聴覚情報はトーン・話し方を大切に繰り返し伝える。この両方が揃えば、伝達力は飛躍的に高まります。高齢化が進む今、パチンコ業界に求められるのは「お客様の立場に立った」情報発信です。
私たちが当たり前に見えているものが、ご年輩のお客様には伝わっていないかもしれません。視覚的に見えにくいお客様に対しても、音声というチャネルを活かせば、まだまだ可能性は広がります。
ぜひ、情報発信に「耳で伝えるプロモーション」を加えてみてください。
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◆プロフィール
・野島崇範(のじま たかのり)
1983年三重県生まれ。北海道教育大学卒。全国のホールを年間1,000店舗以上調査し、その中から繁盛店に共通する法則を見つけ出し「伝達力」と定義。「伝達力」調査の分析に基づき、お客様立場の徹底と継続の重要性を、支援先ホールの全スタッフと共有する。また、売り場ランチェスター戦略の第一人者として、科学的に売り場の支援を実施。売り場の書籍「あなたの売り場、太っていませんか?」を発売。