演出を選べる時代。パチンコはラッキートリガーで射幸性は上昇しましたが、さらなるパチンコの盛り上がりに必要なのは、やはりビッグタイトルの成功なのではないでしょうか(文=小島信之/トビラアケル代表取締役)。
前回は、今のパチンコに必要なのは「演出のシンプル化」だという話をしました。過剰な演出や、打ち手の意志を無視した情報過多な仕様は、かえってプレイヤーの熱量を奪ってしまいます。
いま求められているのは、「打ち手のテンポ」に合わせた分かりやすいパチンコです。しかし、それだけで業界全体が再び熱気を取り戻せるかと言えば、正直「まだ足りない」と感じています。
・ビッグタイトルとLT
では、何が足りないのか――。私は、いまパチンコに本当に必要なのは、「ビッグタイトルがラッキートリガーで成功すること」だと思っています。
エヴァ、牙狼、慶次、ルパン、北斗の拳、そして海物語。これら6つのタイトルは、長年にわたりパチンコの「顔」として業界を牽引してきました。これらの機種の活況は、業界全体の温度感に直結します。
しかし現在、これらのビッグタイトルたちは、ラッキートリガー(LT)の登場によって非常に難しい立場に立たされています。
本来LTは射幸性を高める仕組みであり、プレイヤーからも一定の支持を受けています。にもかかわらず、これらの機種はすでに「完成されたゲーム性」を持っているため、LTとの相性が難しいのです。これまでの実績を見る限り、LTを搭載すると従来のゲーム性を再現することは困難で、結果として2つの選択肢しか残されていません。
1つは、LT非搭載で従来のゲーム性を踏襲すること。 もう1つは、LT搭載で新たなゲーム性を模索すること。
・LTの難しさと新規タイトルの優位性
たとえば、ルパンやエヴァは確変と時短を組み合わせた「王道スペック」に、シンプルながら熱くなれる演出が融合し、ファンの心をつかんできました。北斗や牙狼は、「高継続×バトル演出」でブランドを築き上げました。そこにLTを搭載するとなれば、「完成品」に大きな変更を加える必要が生じてしまいます。
するとどうなるか。打ち手は違和感を抱き、初動こそ良くてもリピートされず、「LT=微妙」という印象だけが強化されてしまうのです。LTが本来の魅力を発揮する前に、「期待外れだった」という印象が定着してしまうのです。これが、LTがなかなか普及しない最大の理由でしょう。
だからこそ、「LTで成功しているのは新しい版権ばかり」なのです。過去のゲーム性を引きずる必要がない分、自由な発想でスペックが組め、プレイヤーに「新鮮さ」と「爆発力」を同時に提供できるからです。これはスマスロの立ち上がり初期にも見られた現象であり、プレイヤーの期待を裏切らない新規タイトルが、次のスタンダードを作っていく構図にも似ています。
・『北斗・強敵LT』が見せる希望
その中で、メインタイトルにあって唯一LT機で一定の成果を見せたのが『北斗の拳 強敵LT』です。 スマスロ同様、ビッグタイトルの中で「LTで成功した」数少ない事例ではありますが、それでも爆発的な成功とは言いづらく、あくまで「及第点」にとどまります。
しかし、この強敵LTの経験を活かし、後に登場する北斗シリーズが「LTを搭載したうえで大ヒット」を記録するようであれば、業界にとっては大きな希望となるでしょう。LTが単なるギミックではなく、「王道タイトルに新たな生命を吹き込む仕掛け」として再評価されるきっかけになるからです。
LTの普及を「信頼された存在が変わった」という「象徴的な変化」で加速させる――。いまのパチンコに必要なのは、まさにその一手なのではないでしょうか。
◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役
2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。