モンハンはパチスロの楽しさの本質を表している王道の機械といえます。今回はその理由について解説したいと思います(文=小島信之/トビラアケル代表取締役)。
昨年の11月に導入された『スマスロ モンスターハンターライズ』が導入から高稼働をしており、中古市場でも新台価格を大きく上回る200万円以上で取引もされていました。
これでモンハンシリーズは前作のアイスボーンと続けて2機種連続のヒットとなります。今回はこのモンハンのヒットから話を始めたいと思います。
モンハンのヒットの一番の要因はボーナス中にあります。モンハンのボーナス中はコインを増やしながら、引いた役によってモンスターにダメージを与え、最終的にモンスターを討伐することを目指しています。
この「自分のヒキ」によって結果が変わるというゲーム性こそ、まさに「パチスロの楽しさの本質」ともいえるでしょう。
パチンコとパチスロでは、その遊びの本質が大きく違います。パチンコは玉がスタートチャッカーに入った瞬間に抽選がされ、その抽選結果による演出を見て楽しむゲーム性です。
打ち出された玉が盤面を経てからスタートチャッカーに入るため、玉を入れるタイミングを自分で決めることは出来ません。基本的に抽選のタイミングも演出も自分で決めることは出来ず、いわば受け身のゲーム性であり、抽選結果の「演出を楽しむゲーム」なのです。
パチスロはレバーを叩いた瞬間に抽選がされ、ストップボタンを押すと抽選結果に即した出目が表示されます。パチンコとは違い、レバーを叩くタイミングは完全に自分でコントロール出来ますし、出目も目押しによってコントロールすることが出来ます。
このようにパチスロは「自力感を楽しむゲーム」であり、演出が面白さの中心ではなく、レバーを叩くタイミングや、ストップボタンを押すタイミングにアツさを感じさせるゲームなのです。
モンハンのボーナス中はこの「自力感」が集約されています。普段だったらどうでもいいような小役のヒキもモンスターを倒す為には非常に重要であり、ボーナス中の多くのプレイヤーのレバーを叩く手には力が入っています。
また、「ボーナス中」がこのようなゲーム性でアツくなれることも非常に大事です。ボーナス中は遊技していて一番楽しい時間になります。
ただレバーを叩いてボタンを押し、コインを増やすだけの作業になってしまう時間になるのか、モンハンのようなゲーム性があるのとではプレイヤーの楽しさは全く違ってきます。リゼロ2の「超強欲RUSH」などは厳密には違いますが、プレイヤーが感じる感覚は前者に近いのではないでしょうか。
パチスロというゲームは、液晶が大きくなろうが、演出が多彩になろうが、音がきれいになろうが、本質的には関係がなく、「射幸性」を除くと結局はレバーを叩くタイミングとストップボタンを押すタイミングに、どれだけアツくなれるかが大事になってくるのです。
2022年までパチスロが低迷していた要因は射幸性であり、ゲームとしてアツくなれる機種は多数ありました。2023年以降の規制緩和によって射幸性が上がるとその後の状況は好転し、2024年はついにパチンコを上回る状況となりました。
そうなると問題が深いのはパチンコです。現状はラッキートリガーやスマパチなどで射幸性は上がってきておりますが、状況が良くなる兆しが全く見えません。個人的な考えでは、パチンコの問題はスペックなどの射幸性ではなく、別のところにあると考えています。それが改善されない限りはこの状況は続くでしょう。
◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役
2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。