【レポート】異次元の高粗利営業…高まるパチンコ運用の手詰まり感

投稿日:2023年7月25日 更新日:

パチンコ業績の下落が止まらない。下がり続ける売上のなか、異次元ともいえる高粗利営業で辛うじて業績を成り立たせているのが現状だ。好調なパチスロ営業の影で進行するパチンコ運用の手詰まり感。加速度を増す高コスト構造も加わり、引き返すことのできない分岐点に迫りつつある。

ジリジリと下がる台売
台粗利は高止まり継続

下のグラフは、昨年1月から今年5月までの売上と粗利の実績データとなっている。季節要因や新台効果などによって、多少の浮き沈みが生じているものの、4円パチンコの台売上が下落傾向を示す一方、台粗利は高止まりしたままの様子が見て取れる。

MIRAIぱちんこ産業連盟が今年4月に開催した大規模セミナー「MIRAIの学校」の中でも、登壇した講師が、年初からのパチンコ業績について、「大きな下落傾向がはじまっている」と指摘。その理由の一つとして、厳しさが増すパチンコ運用について警鐘を鳴らしていたが、今のパチンコ営業を取り巻く状況は、それよりもさらに悪化している。

要因の一つとして挙げられるのは、復調ぶりを示すパチスロへの客移動だが、パチンコ稼働の低下が目立ちはじめるなかでも、台粗は高止まりし続けており、とりわけ4円パチンコにおける売上と粗利のバランスの崩れ具合は、今後さらなる客離れを引き起こしかねない危険領域に達しつつある。

薄利多売モデルは崩壊
高粗利運用は限界水準

問題は、すでに薄利多売からは程遠い事業構造に転換してしまったパチンコ営業において、売上低下分を粗利上昇で補う図式が定着している点だ。さらに競合店と競い合うように機械代の回収を図ることで、事態を急速に悪化させている。これまでも、粗利水準はギリギリを模索し続けてきたが、すでに限界値に近づいている状態だ。

現場からも、「これ以上は無理というレベルに達している。今の段階でお客さんを痛め過ぎている自覚はある。当たり前だが、これによって、ますます稼働が落ち込む悪循環になっている」(店舗管理者)と苦慮している。

実際、プレイヤーは回らない、勝てないパチンコに愛想を尽かしつつあることは、稼働データからも明らかだ。

もちろん経営層もその危機的状況については認識している。「現場からすれば、お客さんを大切にしたい気持ちはわかる。しかし、会社としては、コストを掛けた分はきちんと利益を上げてもらわなければ、事業そのものが成り立たなくなる」と苦しい胸の内を明かす。

また、早くからパチスロ営業に資本を振り分けてきたホール幹部は、「正直パチスロが上がってくれたので何とかなっているし、むしろ全体のプラスマイナスでいえばプラス。なのでパチンコで客を飛ばしても、その分、パチスロで何とかすればいいという気持ちはある」と本音を漏らす。

即回収の事業構造
止まらない客離れ

高コスト構造のなか、いまもって進行するパチンコ業績の下落傾向に歯止めをかける手立ては見つかっていないが、こういった議論を展開するなかで昔からあるのが、遊技機コストを抑えることで還元に回すという考えだ。

しかし、これについて、今の市場環境を踏まえると、現実味に欠けるというホール関係者は、「様々な条件が付く新台には付き合わず、中古機を中心に大事に運用している店舗もあるにはあるが、そういった新台無しの薄利営業より、新台を入れた高粗利営業のほうが集客できる。もちろん、機械代を抑えた分を還元して、営業を成り立たせられればいいが、現実問題として厳しい。最初から抜くしかない運用が決していいとは思えないが、続けざるを得ない」と悩ましさを口にする。

別のホール幹部も近しい考えだ。「昔みたいに、長い時間を使って機械代を回収していくことができない。今は、競合店が回収するなら、こちらも抜けなくなる前に回収するしかない。毎日台粗利1万円超で走ってれば、そりゃ稼働は持たないだろう。それこそ、いったい誰のために店を営業しているのかと感じることもある。もちろん、それで機械寿命が短くなるのは分かっているし、お客さんも減るだろうが、どうしようもない」と苛立ちを隠さない。

新台入替にこだわることについては、「店の運営で生じるほとんどの問題は、結局新台入替が解決してしまう。正直メーカーの言いなりのような気がして、悔しい思いはあるが、受け入れざるを得ない」と苦笑交じりだ。

また、玉利で利益を見ていくことが、厳しい運用に繋がりがちというホール関係者は、「稼働が上がっても玉利を変えなければ台粗が増えるだけ。逆に、一定の台粗利を基準とすれば、売上が立つほど薄利になる。結果、遊技客はより遊べ、さらに集客に繋がるという好循環が見える。これがパチンコ営業にとって、一つの理想形なのは分かるが、今は、そこまで長い目で見て我慢できるホールはないだろう」と話す。

一方、ユーザー視点でパチンコに対する不満を表しているのが、今年6月に平和宣伝チームが公開した遊技動向に関するアンケート結果だ。

同アンケート(有効回答数:1,745人)では、「パチンコで不満を感じる部分」という問いに対し、80.9%の人が「回らない」を挙げた。

ただ、この「回らない」という不満について、単に回す機械を作っても問題は解決しないだろうという開発関係者は、「これまでも回ることを意識した機械はあったがあまり支持されなかった。ベースを高くすれば回転数は上がるが、出玉性能で見劣りしてしまう部分が出るからだ。この不満を解消しても決してプラスにはならず、ストレスが無くなるだけ」とし、仕様以外の様々な外因を改善することの重要性を指摘している。

回すために必要な外因の一つとして、以前から言われているのは損益分岐に関する考え方だが、現在10割分岐で営業を行うホール関係者は、「分岐が変われば経営的に少し楽になる。しかし取れるだけ取ってしまおうという今の運用では、分岐の変更がお客さんにとって遊びやすくなるとは、正直到底思えない」と厳しい見方だ。

明確な妙案無いなか
固定島復活に期待も

いずれにせよ、今は好調なパチスロの影で目立たないが、パチンコ単体で見た現状は、今後の見通しに暗い影を落としている。そのなかで今回、複数で聞いた打開案が固定島の復活だ。

海物語シリーズ全盛期ほどでないにせよ、ある程度の固定島を確立することで、薄利と高粗利をバランスよく組み合わせた営業を目指すという考えだ。

実は、直近データで、パチンコ全体が右肩下がりの一方、ミドル海で上昇傾向が示されるなど、根拠となりえる予兆はある。関係者は、「海は今でも遊びやすい運用でスタートし、稼働も一定値で下げ止まる。八方塞がりのなか、こういった材料で悪循環から抜け出す方法を模索するしかない」という。

ホール幹部も、「固定島が多い時代は、薄利でお客さんも遊べていた。その分新台は高粗利で運用し、入替頻度も多かったが、機械代は今より低かった」と振り返る。もちろん、あくまでも一つの考え方ではあるが、パチンコ離れを防ぐ手立てを講じる緊急性自体は、高まっているのではないだろうか。

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