【レポート】今さら聞けないパチンコと政治

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参議院選挙の公示日を迎えた。すでに業界では、2019年の参院選時に設立された政治連盟「全日本遊技産業政治連盟」が、前参議院議員で自民党比例代表の公認候補となっている木村義雄氏の支援を決め、各地で協力を呼びかけている。その一方、当落のカギを握ると目される多くの一般業界従事者の間で、参院選に対する理解が深まっているとは言い切れないのが現状だ。業界と政治の関わりについて、改めて丁寧な説明が求められている。

各階層へ「関わる意識」の浸透カギに

この5月、全国各地の会合で木村義雄氏をはじめ、各団体幹部らが政治連盟を通じて支援を訴えた。これら会合特有の熱を帯びた空気感に加え、3年前よりも、格段に厳しい業況に陥っている今の危機感が、業界の代弁者を求めるうねりとして拡がりつつある。

その一方、「応援した人が当選した場合、何をしてくれるのかが具体的に知らされていないので何ともいえない」と首をかしげる業界関係者もいる。さらに、なぜ尾立源幸氏ではないのか、という声も複数耳にした。

そして、「木村氏を応援していることは知っているが特に何も考えていない」(関連業者)と、そもそも政治に関心が低い層には、ここまでの訴えがあまり届いていない状態にある。

風営法議連とは

まずもって理解を進める必要がありそうなのが、自民党の「時代に適した風営法を求める国会議員連盟」、略称「風営法議連」の存在だ。

同議連は、2005年に結成された「自民党遊技業振興議員連盟」が母体となり、2014年発足。一時休眠状態だったが、現行規則案の公表を機に、2017年に活動を再開した。

直近の議連活動のなかで、とりわけ代表的な成果となったのが、政府系セーフティネット金融支援対象業種にこぎ着けた点だろう。また、議連内の「遊技機の基準PT」では2019年、警察庁に提言書を提出。遊技機のゲーム性向上や、依存対策と射幸性の因果関係の科学的な立証などを求めた。近年相次いでいる遊技機の規制緩和にも、少なからずの影響を及ぼしている。

議連活動は、所管省庁に業界の要望を伝える際、その間を取り持ち、実現への後押し役として機能している。とかく規制偏重になりがちな、遊技業界を取り巻く環境を踏まえれば、その存在価値は大きいといえるだろう。

他業界に目を向ければ、一口に議連と言っても、親睦会に近いものから、議員立法を目指すものまで幅広い。

今に至る依存対応の要因となったカジノの合法化を目指したIR議連では、法案のひな形を作成するなど、カジノ合法化に実績を残した。またダンス議連などでは、業界と協力し風営法改正を実現している。現在、風営法議連内で、新たな法制化を目指す動きはないが、今後業界が必要と考える法整備については、当局との折衝をバックアップしていく姿勢を見せている。

木村義雄氏とは

次に、木村氏にどのような期待が寄せられているか、という点だ。木村氏は30年に及ぶ国会議員時代、厚生労働政務官、厚生労働副大臣を歴任するなど、厚生労働行政に精通している。

今回の規則改正は、厚労省所管による依存問題対応が主旨だ。発端の一つとなった2014年のいわゆる「久里浜報告」によるギャンブル依存疑い536万人という数字は、センセーショナルに報じられ、業界への締め付け材料となった。報告に対する疑問は当初から挙がっていたが、結果的に業界にもたらされたのは、射幸性抑制という切り口で依存対応とした規則改正だ。

さらにいえば、先日大阪市議会で、パチンコの依存対策を強化すべきという意見書が採択される事態があった。違法性があるオンラインカジノとパチンコを併記すること自体に異様さがあるうえ、業界が手掛けてきた依存対策に対する無知もある。ただ、今後もカジノを巡る議論が続く以上、業界が俎上に載せられる可能性は高い。警察当局との対応に加え、厚労省折衝という取り組みが必要となるなか、厚労行政に精通した代議士が果たす役割は大きく、実効性を伴う依存対策を展開する意味でも重要となってくる。

当事者意識の啓発不可欠に

前回の参院選で、業界は尾立氏を支援した。しかし業界の代弁者となる人物を国政に送る重要性が全ての階層に浸透しきれなかった。今の課題も同様で、ホールや関連業者の現場に近づくほど、その傾向が現れている。

多くの業界関係者が、ジリ貧状態の業界に、何かしらのテコ入れが必要であることには気づいている。しかし、それが政治とどう結びつくのかに理解が深まっていないのが実情だ。

いずれにせよ、単に「良くなる」だけでは、業界従事者全ての階層を動かすことは難しい。政治が自分事である意識改革を促すためには、階層に応じた丁寧な説明に加え、業界で合意形成した具体的な政策を、粘り強く訴え続けるしかないのかも知れない。

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