【GREENBELT単独ロングインタビュー】
ダイコク電機 代表取締役社長 栢森雅勝 氏
「不可逆の変化をもたらす業界イノベーションを続ける」

投稿日:2023年7月20日 更新日:

ホール向け主要設備・システムのトップメーカーとして、数多くの業界イノベーションを起こしてきたダイコク電機。その代表取締役社長に栢森雅勝氏(前・代表取締役会長)が復帰した。業界市場が縮小するなか、どのようにホール経営を支援していくのか。同社の今後の方針を訊いた。

イノベーションを継続することが使命

──今年4月に11年ぶりに社長に復帰されました。改めてどのような会社を目指していくのでしょうか。

会社とは、社会が望むものを提供して、製品を買ってもらい、サービスを利用してもらって初めて成り立つものです。好・不調はあるにせよ、業績が赤字になることは自分たちが掛けたコスト、つまり人や材料、資金といったもの以上のものを社会が欲していなかったと言えます。そういう意味では、まずは社会に望まれるものを提供することが会社の目指すべき方向であり、その上でイノベーションを実現することが、我々が望む会社の姿です。

──どのようなイノベーションをイメージされているのですか。

私が思うイノベーションは「元に戻れない変化」を与えるものです。例えば、これまで地図を使っていた人はナビを使って目的地にいくことを覚えると、もうナビのない状況には戻れません。オンラインショッピングなどもそうだと思います。

当社がこれまでに提供してきたデータロボやDK–SISもイノベーションにつながりました。データロボが登場する以前のファンは、角台がよく出るとか、たばこの吸い殻の多い台が調子がいい、といった感覚で遊ぶ台を選んでいましたが、いまやファンにとって遊技データは不可欠になりました。DK–SISでは、全国のお店の情報を元に、自店をどうするか、運営をどうしていくか、といった新しい判断基準となっています。こうした業界内のイノベーションを引っ張ってきたという自負がありますし、これからもその期待に応えたいと思っています。

──イノベーションを生み出す原動力はどこにあるのでしょうか。

ダイコク電機は、社員が主役の会社だと思っています。社員1人ひとりが活躍できることが最大の強みです。全国の社員が集まって会社や社員のための活動を行う「活性化委員会」や、社内の問題などについて話し合う「CPRサロン」など、啓発し合い、問題を共有できる環境があります。採用面接の際に社員自身が「うちはやりたいことが出来る会社です」とアピールしていましたが、社員が活躍できるからこそ、そこから様々なチャレンジやアウトプットが生まれてくるのだと考えています。

大型店舗でのシェア率は6割

──貴社の製品・サービスは、500台以上の大型店舗のシェア率が6割を超えています(下表)。いわゆる強い店舗に支持されているわけですが、その理由をどう捉えていますか。

大型店や地域ナンバーワンのお店は最も要求レベルの高いお客様群だと思います。設備やサービスに対しても本当に必要なもの、役に立つものを求めています。その要求に対して全力で取り組み、製品力と提案力で応えてきたことが評価につながっているのではないでしょうか。

同時に当社が自信を持っているのが、フォローの部分です。ホール様の事務所に直通電話を設置し、お問い合わせにすぐに対応できるパートナーズセンターとメンテナンスデスクもそうですし、リモートでコンピュータの状態を把握し、トラブル対応や新しいサービスへの切り替えもすぐに行えます。こうしたサポート体制も評価されているのだと思います。

クラウド化で最新技術を活かす

──20233月期決算の大幅な増収増益を受け、20253月期までの3カ年の中期経営計画も上方修正しましたが、今後の取り組みについて具体的に教えてください。

これまではパチンコ店の設備投資が抑えられ、当社も大変厳しい状況でしたが、6.5号機やスマスロの登場で少しずつ環境が変わってきました。そこで、これまで抑えてきた製品やサービスへの開発投資を積極的に進めていく方針です。

その一つが、クラウド化です。特に、ホール様向けの設備・システムを扱う情報システム事業において、AI(人工知能)やビッグデータなどの新しい技術に対応できるように、既存のサービスのクラウド化を推し進め、プラットフォームの刷新を図っていきます。

例えば、チェーン店分析・管理システム「ClarisLink(クラリスリンク)」では、既にクラウド化を実現し、お客様からの声を迅速に反映できるようになるなど、効果が出ています。商圏分析サービスの「Market-SIS」や省力化ツールの「らく替オプション」などでも、クラウド化による強化を図っていきます。

──今期の見通しではスマートパチスロ事業への参入も掲げました。

これまで制御システム事業として主にパチンコメーカー様向けに基板とソフトウェアなどを展開してきましたが、リユースの流れなどもあり、出荷台数が減少していました。そこで、新たにAMS(アミューズメント&サプライ)統括部に名称変更し、これまでDAXELでパチスロ製造に関わってきましたので、スマートパチスロ事業に早期参入する方針です。

──その関連だと思いますが、今年4月にパチスロ開発企業のライリィを孫会社化しています。

我々に足りない部分を補ってくれる会社として、グループに加わってもらいました。開発の技術を持った人材に期待しています。発売時期については、型式試験等にもよるので明言することはできませんが、2024年中の市場投入を目指し、AMS統括部において鋭意取り組んでいる状況です。

──他企業とのアライアンスでは、昨年は高度AI技術を保有するベンチャー企業に出資しました。今後もそうした提携はあるのでしょうか。

他の企業とのアライアンスに関しては、出資になるのか、コンサルタント的に加わってもらうのか、相手の状況なども含めて、その時々になると思います。目指すところは、最初にお話した通り、社会に望まれる会社、そしてイノベーションを起こしていくことです。

子供たちにメカ作りの面白さを伝えたい

──貴社ではサステナビリティ(持続可能性)への取り組みも積極的に進めています。なかでも特徴的なのが子供を対象とした「プログラミング教室」です。これはどのような想いで開講されたのでしょうか。

 

ダイコク電機が開講している「ロボキューブ プログラミング教室」(愛知県春日井市)。対象は小学3年生以上の子供達。単にパソコン内だけでプログラミングを学ぶのではなく、ロボット(メカ)を組み立て、それをプログラミングで動かす「メカ×プログラミング」の内容が特徴。栢森社長の強い想い入れもあり新規事業として取り組む。

 

プログラミング教室は、私の強い想い入れもあって新規事業として始めていますが、採算面はまだまだです。

プログラミングは、作るというクリエイティブな面と、きちんと動かすためのロジックが求められます。さらに、思うように動かなければ、見直して、もう一度、頭の中で考え直すわけで、注意力や考える力などが鍛えられます。特にこの教室は、メカを組み立てて、それを動かすプログラミングが学べる内容です。

我々メーカーの立場では、子供たちがメカに触れる機会が減っていることを感じています。メカを作る面白さ、作ったものが動く楽しさを伝えていくことも我々の使命だと思っています。

──最後に遊技業界の課題についてはどのように認識していますか。

ファンを増やすことが業界の存続、店舗の存続に必要なことは間違いありません。ではどうやって、かつてのファン、新規ファンを取り込んでいくのか。コンテンツなのか、メディアへの露出なのか、いろいろなやり方、手法があると思いますが、店舗形態の多様化もあっていいのではないでしょうか。その多様なカタチを模索していくなかで、当社の製品・サービスがその新しい形態をサポートしていけたらと思っています。

かやもり・まさかつ
ダイコク電機株式会社 代表取締役社長

1966年(昭和41年)生まれ。愛知県出身。東海大学大学院工学研究科卒業後、87年にダイコク電機監査役就任。その後、取締役、常務取締役、専務取締役、代表取締役副社長を歴任し、05年代表取締役社長就任。 12年より代表取締役会長に就任していたが、2023年4月に現職の代表取締役社長に復帰。趣味はコンピュータ・旅行。

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