【レポート】“スマスロ”スペック公開で高まる期待感、導入後のルール作りも急ピッチ

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11月下旬から順次、「スマートパチスロ」のホール導入がスタートする。スペック公開が進むに伴い、市場の期待感は自然と高まりを見せており、目下、ホール関係者最大の関心事は、どれだけの台数を確保できるのかといった点に集約されつつある。またその一方で、コンプリート機能発動時の取り扱いについても周知されるなど、具体的なルール作りも急ピッチで進行している。

30,000台規模で3タイトルが先行

当初発表された4機種のうち、11月21日に市場デビューするのが、『Lバキ L3L』(平和・オリンピア)、『L革命機ヴァルヴレイヴD』(SANKYO)、『Lアナザーリノヘブン』(山佐)の3機種で、計約3万台規模といわれている。そして、『L HEY!エリートサラリーマン鏡PA4』(パオン・ディーピー・大都技研グループ)は12月からの導入となる見通しだ。

すでに、多くのホール関係者が実機に触れていると見られるが、ハードについての大方の感想は、「これまでの機械との差がよく分からなかった」というもの。ショールームに用意されている試打機のほとんどが、もともとメダルレスであったこともあってか、遊技感覚はこれまでと変わらなかったという印象だ。また、メダル周りの部品が無くなったことで、数キロほど軽量化が図られている点についても、「実際に持ってみたが、それなりに重いことに変わりはなく、従来機との差を感じることはできなかった」という。

これについては、そもそも重い今のパチスロ機から数キロほど軽くなった程度では変化を感じにくい点や、下部のメダル周り部品だけが無くなったことによる比重バランスの影響がありそうだ。これらハード的な変化を体感するのは、それによって生じる新たな課題も含めて、一般プレイヤー同様、実際の運用を経るしかないだろう。

6.5号機の好調がスマスロ需要を牽引

とはいえ、スペック公表を機に、市場の期待感はさらに高まっている。ホール関係者も、「今は6.5号機を増やす度に業績が上がっている。それよりもいい性能となれば、期待が高まるのは当たり前だろう」と待ち望む。

別の都市部のホール関係者は、「率直にいえば鏡に期待している。売上的には、仕様を見た感じではヴァルヴレイヴが貢献しそうで、バキもいい。店の営業的には、コロナ禍でリモートワークが浸透し、夜の稼働が落ち込んでいた。それが6.5号機でようやく回復傾向を見せているのが現状。それが今後、スマスロによって稼働回復が加速してくればいいと思っている」と、この数年出口が見えなかった低迷脱却の足がかりにしたい考えだ。

導入判断についてホール法人幹部は、「建前では色々文句を言っていても、普通に考えれば導入はマストだ。全体的な業況を前提にするなら我慢比べといった感覚は拭えないし、投資額が大きいので、現場にはプレッシャーになるだろう。しかし、この競争に負けたらホール営業という舞台から降りるしかなくなる」と厳しい懐事情を踏まえながらも、生き残りには欠かせない設備投資という。

性能面で発揮される優位性の一端は、6.5号機でも証明済みだが、スマスロでは、それに有利区間継続ゲーム数を自由に設計できるメリットが加わる。これにより、これまで以上に、シンプルながらも瞬発力を有した出玉性能が実現されると見られている。

このシンプルさという点は、新規ファン獲得にも重要だが、遊技機開発関係者によれば、特に有利区間をまたぐ期待感の設計が、ゲーム性のポイントになってくるという。

需給逼迫は変わらず
精算機能の浸透に心配も

導入を決めたホールにとって共通する懸念は、需給逼迫が解消されていない点だ。当初、課題と見られていた専用ユニットについては、各ユニットメーカーによって対応差が生じており、一括に供給不足ともいえない状況になってきている。ただ、専用ユニットをある程度確保できそうなホールでも、「どれだけの台数がうちに回ってくるかがわからない」と、スマスロ本体調達の成否に不安を覗かせる。

製品供給の不安定化は、パチンコ業界に限ったことではないが、メーカー関係者も、「部材不足の問題は続いている。これまでと同様、全てのオーダーには答えきれない」と話しており、状況が改善する見通しは立っていない。

年配層の対応が心配だという声も一部あった。あるホール店長は、「パチスロは、パチンコほど各台計数機が普及していないので、精算するという認識を持たないプレイヤーが一定数いると思う。おそらく精算する手順について戸惑う人もでるだろう。例えば、メダルがたくさんあるにも関わらず、精算ボタンをポツポツ押すような人や、長押しがよくわからない人もいるだろうし、使い方が広まるまでは稼働に少し影響があるかも」という。

コンプリ機能の扱いで
進むホールのルール作り

導入を間近に控え、議論が進んでいるのは、コンプリート機能が発動した時のホール側の取り扱いルールだ。コンプリート機能搭載の趣旨はいうまでもなく、過度な出玉を発生させないことにある。発動した時点で、当日の遊技は終了するが、これを再稼働させないというルールを周知徹底することに供給サイドは神経を尖らしており、実際、スマスロを試打した時に、メーカーからコンプリート機能について説明を受けたホール関係者は、「しっかりルールに基づいて運用させるという強い意思をヒシヒシと感じた」という。

中古機移動時にコンプリート機能の運用について記した承諾書も用意されている。中古機流通協議会では、この承諾書について、コンプリート機能が営業中に発動した際、その日の営業中に再稼働させない約束を、ホールと当該販社との間で取り交わすものとしており、9月15日からその運用がスタートしている。

承諾書を交わすタイミングは、ホールがコンプリート機能を搭載した遊技機の中古機移動書類作成を依頼した際、保証書の作成前までの間となっている。特に、スマート遊技機ではないコンプリート機能を搭載した遊技機は、遊技機情報センターにデータが送信されることがないため、こういった施策の投入で、より万全を期した格好といえるだろう。

そもそも、コンプリート機能は、これまで抜け道探しの一面が拭えなかったメーカー間の出玉競争に一定の歯止めをかけ、規制強化という暗黒時代再来を招くことを未然防止する役割も果たすものだ。ホールにとっても、高射幸性遊技機の撤去といった理不尽な歴史を繰り返さないための防波堤となり、依存対策として意味合いもある。

ただその一方で、すでに現時点で一部の6.5号機に生じている出玉に警戒感を滲ませるメーカー幹部もいる。

「稀なケースであっても、過度な出玉を広めることで、そういった印象が広まってしまう。これを規制当局がどう考えるかということだ。その結果として、適合状況が悪化するようなことがあれば、業界全体にとってマイナスでしかない」と眉をひそめている。

7月に都内で開催された「スマート遊技機フォーラム」では、コンプリート機能が発動した時に表示される液晶画面が、イメージショットとして参考披露された。

スマスロ契機に
将来像の議論も

いずれにせよ、今回の「スマートパチスロ」と来年登場予定の「スマートパチンコ」は、底なしの低迷を続ける業界にとって、数少ない明るい材料の一つであることは紛れもない事実。さらに依存対策の一環として、行き過ぎた出玉をハード面で制限するというアプローチで改善の足がかりを整えたことも成果の一つだ。もっとも導入した後には、また新たな課題が見えてくる部分もあるだろうが、まずは業界全体で少なくとも店内移動に留まらせないような業況浮上施策の展開が欲しい。

このタイミングを逸すれば、これまでの新台入替同様、店ごとの営業力に委ねられ、業界全体の底上げは覚束ないだろう。そしてそれと共に、スマート遊技機フォーラムで示されたキャッシュレスやオンライン入替など、スマート遊技機の将来像を見据えた議論の迅速性も求められるところだ。

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