再びコロナ禍で迎えることになった今年のお盆営業。フタを開けてみれば、パチンコ店ごとの明暗がクッキリと分かれた印象だ。カギとなったのは、事前の仕掛けとパチンコ、パチスロ機の品揃え。良化しつつある機械環境を背景に、業況復活の足がかりにしたい今回の商戦期だったが、どのような現実が突きつけられたのだろうか。
全体では粗利上昇
6.5号機がけん引
左のグラフは、今年と昨年の業績数値だ。パチンコは、アウトがやや微減したものの、売上、粗利が増加している。一方のパチスロは、アウト、売上ともに微減しつつも、粗利が上昇するなど、ビッグデータ上では、パチンコ.パチスロともに、粗利を追求した営業になったことが見て取れる。
そして、今年の盆商戦における一つのトピックは、6.5号機の動向だろう。これまでの6.X号機と異なり、有利区間制限ゲーム数が4000ゲームまで増加された点と、差枚数管理の合わせ技により、出玉に関する期待感が大きく高まったことで、高い支持を獲得、業績アップに寄与した。
ホール関係者も、「ツボにハマれば万枚出る頻度が多いので、お客さんは期待感を抱けると思う。利益的にもこれまでの6号機とは違って良好。今のところ、かなりしっかりと粗利を確保するような営業をしても稼働は維持できている。店の業績に対する貢献度は相当高い」と表情を緩める。
世間的には、新型コロナの感染者数が増加していった7月下旬から8月上旬にかけて、年配客の足が遠のき、店側も「家族ストップがかかっている人も多くなってきた」と気をもんだ。実際、甘海や低貸しなどで、その影響が見られたという声も一部で聞いた。
前年対比でマイナス業績に終わったという都内のホール幹部は、「要因として、コロナ感染者数の増加と天候不順が大きかったのではないか。結果、年配層が減ったことに加え、大手法人による8月8日の新台入替ラッシュで若年層が流れた」と眉をしかめる。
一方、手応えを感じたホールも少なくなかった。前年より業績が上昇したというホール関係者は、「今年は昨年より10%ほど良く、その流れは、盆明け後の週末まで続いた」と目を細める。その差は何だったのか。
業績を左右した
人気タイトルの品揃え
まずもっていえるのは、パチンコ営業最大の集客要素である新台入替の有無やその規模だ。先のホールのように、8月8日の入替やゾロ目を活用した仕掛けの成否が、盆営業の業績を大きく左右した格好になっている。
そのうえでホール関係者は、「最悪なのは、6.5号機を用意できなかったところ。これまで自店のパチスロユーザーを好調な4パチで繋ぎ止めることができていた店は多いだろう。しかし、6.5号機の登場で、一定数が4パチから移動することは容易に想像できたわけで、6.5号機が無いばかりに、自店の4パチユーザーが、他店の6.5号機に奪われたということだ。それだけ今回の6.5号機調達は、重要なミッションだった」と言い切る。
別の中堅法人幹部は、同一法人内でも、投資の規模が明暗を分けたという。「機械をきちんと揃えた店は業績が上昇した。しかし、そうでない店舗は前年割れとなるなど、結果がはっきりと分かれている。当たり前かもしれないが、やはり機械を買うことができないと営業はキツイ。コロナの問題がありこの数年はあまり意識しなかったが、平時に戻っていくに連れ、結局、資金力が物をいう構図は、コロナ前と変わっていない」と再認識している。
しかも、部材不足が顕在化している昨今の供給環境を踏まえれば、単に新台分の予算を組めばいいわけではなく、機械調達手法は複雑化している。
ホール関係者は「今の景況感からすれば、機械代をなるべく使わないようにするのは理解できるが、それだけではジリ貧になる。それに、新台を買うといっても、その価格だけでは済まない前提で動かざるを得ない。そのため、経営層を含め会社全体でこの種の意識が共有されているかどうかが、このところの機種調達、ひいては繁忙期の結果に影響したと思う」という。
データでも、人気タイトル『エヴァ15』を中心としたハイミドル帯で前年同期を上回る業績が示されており、6.5号機については、その傾向がより顕著だ。設置比率10%ほどとはいえ、アウトの16,000枚超という数字を見ただけでもその勢いが窺える。
機械+αの施策で
業況浮上果たせるか
まもなく訪れるのは、毎年必ず到来する秋枯れという閑散期。本来であれば、ここで6.5号機の真価が問われると同時に、設置比率の最適化を探る動きも出てくるはずだが、今の需給逼迫状況を踏まえれば、基本「買えるなら買う」という新台調達合戦が、しばらく続いていきそうだ。今回データを提供してくれたピーブレインでも、「パチスロの売上、粗利確保をしていく上で、6.5号機の設置シェアをいかに増やしていくかがカギ」と見ている。
ホール関係者も「今回の盆商戦を見る限り、機械でここまで業績に差が生じるということになると、しばらく機械の取り合いが激しくなるだろう。新台を買いきれるところでないと、生き残りが難しいと思う」という。
そして11月には、スマスロの市場導入が決定している。専用ユニットの確保や設置工事の手配など、課題は払拭しきれていないが、6.5号機よりもスペックアップしたスマスロが有する集客力に寄せられる期待感は自ずと高まっている。ただその一方、ここでも資本力の差が如実に現れていきそうで、小規模店舗の幹部は、「見積もりを取ったが金額的に厳しいのが正直なところ。小さな会社にとっては、少なくない投資で、金融機関からこれ以上の融資を引っ張ってくることは難しい」と様子を見ざるを得ないという。
また、機械環境を整えるだけでは、業況浮上を果たせるとはいえないという指摘もある。ホール企業の幹部は「機械が良くなる方向にあるのは確かで、それは好材料だ。しかし、娯楽の多様性が拡がっているうえに、若年人口が減少しているので、機械だけでファン人口が回復するとは思えない。例えば、キャッシュレス化の推進など、店の省力化とプレイヤーの利便性を両立させるなど、他の要素が組み合わさってはじめて、ファン人口増加に向けた期待感が高まってくると思う」という。つまり、スマート遊技機プラスアルファが必要という見解だ。
確かに、機械環境の良化を最大限活用するためにも、キャッシュレス化や現在議論が進行している広告宣伝のあり方など、次を見据えた業況回復施策のスピーディーな展開も、また欠かせない命題といえるのかも知れない。