【コラム】ぱちんこ(パチスロ)機は絶対評価、もしくは相対評価、どちらで評価するのが正しいのか。

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一般的に、ぱちんこ機・パチスロ機の開発は2年以上かかるといわれています。詳細な開発スケジュールや手順などはまた機会があればお話しするとして、遊技機の開発は紙ベースでの社長を始めとした役員への提案、指定機関の適合、各都道府県にある公安委員会の検定の通過、全国のホールへの営業活動、製造・出荷、ホールへの導入までには、最短でも1年近くはかかるのは間違いありません。

メーカーの開発部内で「もうこれで終了」とROMFIXを行い、ホール様に導入される機械とほぼ同じ状態の機械が仕上がったとしても、そこからデバッグ(現実にはROMFIX前に平行して行っていますが)、申請書類の完成、指定機関へ持ち込む用の機械の組み立て後に保通協の予約取り、そして、ようやく申請ができるわけです。

そこから各指定機関の型式試験が始まるわけですので、試験の不適合なども勘案すると、開発部内で機械が仕上がった実機がホールで打てるようになるまでに半年以上の期間がかかることもざらにあります。

一方、ホールやユーザーは「今リリースされている機械」が全てなので、「この機械、なんで今更こんなことに…」というような場合も少なくありません。例えば、もし今の段階でハイミドル機に遊タイムを搭載しているスペックがリリースされることになれば「なんで今さらハイミドルなのに遊タイムがついているんだろう」と多くの方が思うでしょう。

「もしかしたら、何らかの意図があるのでは?」と邪推してしまうかもしれませんが、本当のところは単純に開発期間が伸びに伸びた機械(スペック)なのかもしれません。もちろん、最近ではあまりに今の市場とかけ離れた機械(スペック)は、完成したとしても作り直すことが多いため、あくまでも一例ではあります。

また、遊タイムのように「あるものを無くす」というのは比較的容易に対応ができますが(それでも2、3ヵ月かかることもざらです)「無いものをありにする」というのは非常に時間がかかります。

また、単純に「この仕様がウケているから、そのスペックに変更する」といった場合、上記のような内容から必ず無茶が生じるわけです。元々、そのような仕様を想定して開発をしていなかったため当然です。となると、無理やり変更した台は表面的には市場で大ヒットしている仕様と同じに見えますが、実は中身がガタガタで全く別物に仕上がっている可能性も否定はできません。

遊技機を設置するためには、様々な許可が必要になり、また導入後の変更が一切認められていないため、簡単に修正や変更をすることができないのです。

一方、ホールやユーザーからすると、「今ある遊技機で判断」という形になりますし、Aの機械、Bの機械、Cの機械とその機械自体の性能ではなく、あくまでもA、B、Cを横並びで比較し、遊技する台を決定するため、どこかで見たことがある仕様や見慣れたスペックだと導入される前から「もう食傷気味だな…」となったりもするわけです。

しかし、開発としては1つ1つの遊技機の演出からゲームフロー、スペック、ギミック等全てに至る部分に意図をもって開発しているため、「どこかで見たな…」ではなく、「この仕様やスペックと同じ機械は既にあるけど、この機械は何を目的にこれにしたのか?」という観点で物事をとらえると、実は、その機械にしかない意図や魅力に気づけたりするかもしれません。

◆プロフィール
荒井孝太
㈱チャンスメイト 代表取締役

パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(https://chancemate.jp/)を設立。パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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