2月1日から本格的な6号機時代がスタートした。目下、決して楽観視できない状況だが、先にはレギュレーション緩和に沿ったタイトルの登場といった期待感もある。一方、今のパチンコにおける高粗利運用が続けば、ファン人口の減少が加速し、パチスロ復活はおぼつかないという警鐘も鳴る。布石はどう打つべきか。
微減に留まった業績も
底見えず不安感は継続
下の【図1】は、ホールデータ管理システムを手掛けるピーブレインで集計された2月1日から3週間分の20円パチスロにおける業績データだ。同じコロナ禍にあった昨年同期と比較すると、全ての指標で前年を下回っている。
打ち込み枚数は、前年の99.9%水準となる8,507枚と、ほぼ横ばいを維持した。一方、台売上では前年の94.9%水準、金額ベースでは1,069円減の2万87円と、スペックダウンした6号機の性能が、そのまま業績に反映された格好といえるだろう。
コロナ禍前となる2020年における同じ時期との比較では、一層業績の落ち込み幅が目立つ。ただこれは、コロナ禍だけというよりも、2020年2月から、2021年2月にかけ、『ミリオンゴッド‐神々の凱旋‐』をはじめ、いわゆる高射幸性パチスロ機と呼ばれたタイトルが、順次撤去されていった影響が大きい。その時と比較すれば、今回の5号機撤去が与えたダメージは、そこまで深刻とはいえない落ち幅だが、もともとの業績が低迷していることに加え、いまだ底が見通せていないだけに、先行きの不安感は拭いきれていない。
そして下の【図2】は、同時期における4円パチンコの業績データとなる。打ち込み玉数は減ったものの、コロナ禍前の水準をすべての指標で上回っていて、パチスロとの違いは鮮明だ。
営業成績には温度差
業績アップの店舗も
実際の営業ではどうだろうか。都内のホール関係者は、「1月の時点で全体に占める5号機の比率がすでに低かったので、2月に全台6号機時代を迎えても、そこまでパチスロが大きく落ち込むことはなかった」という。別のホール関係者も、「難しいことに変わりはないが、想像を上回るダウンは無かった」といった感触を抱いている。
その一方、都内の駅前店関係者は、「ジャグラーを揃えることに注力したので、予算的にいいAT機を買うことができず、7〜8%は落ち込んだ。それに加え、1月からはまん延防止措置が発令され、駅前から人の流れがなくなっていることも影響している」と、業績ダウンに至った複数の要因を挙げる。
また別のホール関係者は、「アウトは少し減ったぐらいで済んでいるが、利益は大幅に落ち込んだ。もちろん粗利を追求することも可能だが、それでは稼働が低迷することは明らかで、その塩梅が難しい」と悩ましい表情だ。
業績の下落幅においては、店舗の置かれた環境によって様々で、30φが盛んなエリアでは、同じ30φの代替機が稼働に寄与し、マイナスの影響がほとんど現れなかったという声もあった。
2月以降、パチスロの業績が僅かながら上昇したというホールもある。その要因について当該ホール関係者は、「昨年末の段階から、コロナの再拡大を想定して、機種構成を少しずつ若年層に寄せていった。年が明けて実際に感染が拡大していくと、予想通り年配層の来店客数が落ち込んだが、ラインナップ変更に合わせ、若年層の集客に力を注いできた施策が功を奏したと思う。パチンコほど堅調ではないが、業績を上昇させることはできた」という。
こういった業績アップはかなり珍しい例だろうが、旧規則機市場からのハードランディングが、昨年の段階ですでに生じていたことは、この1年の低迷ぶりが証明している。結果的に旧規則機をあまり引っ張らなかったホールほど、ソフトランディングにこぎ着けた格好だ。
本来なら、旧規則機を率先して外すという取り組みは、営業セオリーから見れば考えられない戦略だ。ただ今回は、専門店を除き、好調なパチンコが営業を下支えする構図があった。ホール関係者も、「パチンコが順調なので、店全体の営業が深刻なレベルということにはなっていない。パチスロからパチンコへの回遊傾向は続いていて、客数はほとんど変わっていない」と話している。
エムシックの顧客動向分析システム『AI-CIS』でも、パチンコへの回遊が、明確なデータとして現れている。2月分のデータでは、パチスロのみで遊技する人の比率は、前月比0.5ポイント減の22.8%と、この1年での最低値を記録。一方、パチンコのみで遊技する人の比率は、同比1.4ポイント増の52.2%と、こちらはこの1年での最高値に達した。
エムシックの三輪勝治社長は、「パチスロのみ遊技する人の比率が、ここまで下がったデータは見たことがない。集計以来の過去最低値といっていいだろう。ただ、パチンコに移行したユーザーは疲弊しつつある。そのため、これからは遊びやすさと勝ちやすさを追求する層を中心に、6号機ユーザーが増えてくることも考えられる」と推察している。
今後については、「PS両方で遊ぶ層に対し、いかに来店を訴求するか。店内の回遊状態がないと、6.5号機を導入しても、反応がない事態を招く」(同)と危機感を訴えている。これからのパチスロのためにも、適正なパチンコ運用が重要になるという指摘だ。
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Pの高粗利運用に警戒感
貯メダルの引き出しが増えたという店舗も出ている。ウクライナ情勢の悪化に伴う金価格上昇を挙げる声に加え、パチンコ貯玉が時を同じくして増加した店などでは、パチンコへの移行が現れているという捉え方をする人もいる。
また右の円グラフは、経過措置満了前後の回遊状況を表したものだが、『押忍!番長3』では、『押忍!番長ZERO』が代替機としてある程度受け皿になっていることがわかる。一方、後継機のタイミングがやや早かった『まどマギ2』では、少なからずの離脱層が発生し、パチンコへの乗り換えも見られる。
受け皿機種の模索に加え、適切な入替も、離脱防止には必要だと指摘するホール関係者は、「皆が新台調達を控えれば、少しでも新台を入れる店にチャンスがある。実際多くの店は、入替え無しで集客するノウハウを持ち得ていない。台の優劣云々というより、新台導入を続けていくことが重要だ」という。
大きな懸念は、やはりパチンコの高粗利運用が加速している点だろう。ホール関係者も、「パチスロの分をパチンコに負担させているのはわかっているが、こうでもしないと営業が成り立たない」と苦渋の表情を覗かせる。しかし、パチンコへの移行で遊技習慣を維持した層も、今の玉利30銭を超える営業によって負担感が増している。それは低貸し移行の増加からも明らかで、一層のユーザー離れが加速しかねない状態だ。
今後、レギュレーションが緩和された6.5号機が、どこまでパチスロの復活に寄与するかは分からない。しかし、ユーザーの遊技習慣自体が失われてしまえば、どんな魅力的なゲーム性が実現しても復活はおぼつかないだろう。当面は、今いる遊技客の離脱防止と、店の生き残りを両立させるという、難しい舵取りが余儀なくされていきそうだ。