パチンコ店の新店減少に底打ち感 規模にあったM&Aに活路【レポート】

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パチンコ業界内では完全新規則機時代となる2022年。ホール数は減少のピーク期を迎えるが、一方で新規出店の減少は底を打つ可能性もある。背景には遊技機の情勢変化に加え、ホール企業の緻密な出店戦略も存在する。

ホール数はいつまで減り続けるのか、どこまで減り続けるのか、業界関係者なら常に気になるところだが、今はまだ明るい展望が見通せない。

ホールのM&A事情に詳しい船井総合研究所の平野孝シニアコンサルタントは「2021年のお盆明けから『お店を閉めたい』という相談が例年比で3倍ほど増えた。今は圧倒的な供給過多が続いている」と話す。

売り物件の急増は、言うまでもなく2022年1月末の旧規則機の撤去期限を見据えてのこと。売りに出ているホールは圧倒的に500台以下の中小店が多い。大型店に比べ中小店は、よりパチスロ営業に依存している。完全6号機時代の営業の目途が立たないことから、運営を諦めるホールが多いということだ。

平野氏は「パチスロの状況が良くならなければ、今後2~3年の間にホール数は6,000~7,000店舗の水準にまで下がる可能性もある」と見通す。

新規出店の減少は2022年が底!?

ここ数年、新規出店の数は低空飛行を続けている。矢野経済研究所の統計データによると、2018年度(2018年4月~2019年3月、以下同じ)~2020年度の過去3年間は、かろうじて年間100店舗を超える水準である(表1参照)。

また出店形態は年々、居抜きの割合が高まり、2020年度は実に全体の95%を占めた(表2参照)。コロナ禍の影響が続いた2021年度は前年以上に出店ペースが鈍く、新規出店は100店舗を下回るかもしれない。

全国のホールを日々、視察・分析する高橋和輝事務所の高橋和輝代表は「そもそも出店は攻めの営業。しかし現状、お客1人当たりの来店頻度や遊技時間を伸ばすことに成功したホールが売上や稼働を維持している。つまり守りの営業に徹したところが健闘している状況であり、新規出店という攻めは成功しにくい」と話す。

オーソドックスな新規出店では、なかなか上手くいかない。そのためか、2021年の新規出店の事例の一部においては、それ以前と異なる工夫が見られると同氏は言う。

「例えば《ヴィーナスギャラリー姫路白浜Ⅱ店》。同店は元々あった自社既存店の余った駐車場スペースに286台の低貸専門店を出店した。ホール企業が成長するには台数規模を大きくするしかない。出来るだけコストを掛けずに攻めの一手を打ったと考えられる」。

また物件単位の良し悪しで出店を判断するのではなく、もう少し広い視点で判断する事例も増えてきた。その一例として同氏が挙げたのが2021年10月にオープンした《プレイランドキャッスル知多東海店》のケースだ。

同店が位置する愛知県知多市のホール数は全部で4店舗。同店の出店により、そのうち3店舗が《プレイランドキャッスル》系列となった。

「人口8.4万人の知多市は、そこまでパチンコマーケットとして魅力的な地域ではない。しかしエリア独占施策を取ることで、無駄な玉出し合戦や、メーカーとの不本意なお付き合いによる新台入替が不要となり、エリア内での営業をかなり有利に進めることができる」(高橋氏)。

成功し辛い状況の裏返しとなるが年々、新規出店のパターンが多彩になったということだろう。

さらに今後の新規出店数について同氏は「2022年に底を打つかもしれない」と回復基調になる可能性を示唆した。「規制緩和に対応したパチスロ機の登場が実現すればホールの出店意欲も高まり、お盆もしくは年末の新規出店が増えるだろう。また、ファン数が減る中でホール企業が生き残るためには、競合から客を奪う必要があるため、大手ホール企業は常に大型店のM&Aを狙っている」と、底打ちになりうる材料を挙げた。

中小ホールもM&Aの好機

先述の通り、資金力の豊富な大手ホール企業は、今もM&Aに積極なところが少なくない。ただし、「大手企業が狙う物件は基本的に大型店に限られる。大都市の駅前などよほどの好立地でもない限り、500台以下のホールは見送る」と前出の船井総研・平野氏は話す。

一方、売りに出ているホールの大半が500台以下の中小ホールだ。そのため、なかなか買う側と売る側がマッチしない。そんななか、実は今が中小ホールにとってM&Aで攻める好機でもあると平野氏は主張する。

「既存ホールの営業が比較的、順調な中小のホール企業が、足元商圏を固めるには良い条件が揃っている。同一商圏であれば営業のコツも分かり、失敗の可能性が低い。また以前に比べてM&Aに関する情報収集が容易になった上、売り物件の数が増え、取引は買い手側がイニシアティブを取れることが多い」。

大手ホール企業は知名度、ブランド力の高さを生かし、全国を対象により良い物件を探す。一方の中小ホール企業はエリア内での営業ノウハウを生かし、地域密着型のドミナント戦略を展開し、限られた範囲内でのシェアをより確実なものとする。双方、異なった戦略ではあるが、生き残りを掛けたM&Aが今後、活発化していくのかもしれない。

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