【レポート】新市長誕生で横浜IRが暗礁 大阪、和歌山、長崎が有力に

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横浜市におけるカジノ施設誘致の反対運動は選挙以前からも活発に行われていた。

IR誘致の是非が争点となった横浜市長選挙は、8月22日に投開票され、無所属新人の山中竹春氏が初当選を果たした。「カジノよりコロナ」を訴えた山中氏が勝利したことで、セガサミーらが運営事業者として名乗りを挙げていた横浜IRが、暗礁に乗り上げた格好となっている。

2位に18万以上差の圧勝
カジノ推進派の林氏は3位

当初、今回の横浜市長選挙では、現職の閣僚や元神奈川県知事など、知名度の高い候補者が相次いで出馬を表明するなど、混戦模様が伝えられていた。場合によっては、有効投票総数の4分の1以上を獲得できる候補者がいない時に行われる再選挙が、序盤戦の段階で取り沙汰されていたほどだ。

結果的には、当選した山中氏が総得票数の3分の1以上を獲得するなど、危なげない勝利を飾り、2位の小此木八郎氏には18万票以上の差を付けた。一方、 IRの誘致を推進してきた賛成派の林文子前市長は、地元経済界の支援を受けながらも19万票あまりの獲得に留まり、落選した。

横浜市が公表していたこれまでのスケジュールでは、現在事業計画書が提出されているセガサミーなど2つのIR事業者グループのうち、近くどちらか一方を事業者として選定する計画だったが、当選後山中氏は、市によるIR推進を停止することを表明。 IR反対派としての公約を果たしていく姿勢を示している。そのため、 IR創設に向けた計画の進行は、事実上棚上げされる形となりそうだ。

あらためて今回の市長選において大きな争点となったIR誘致の是非に関してみると、反対を表明したのは全8候補中6人。賛成派は、現職の林氏と、元衆院議員の福田峰之氏の2人だけだった。

これを今回の市長選に投じられた約150万票の割合で見ると、賛成派の2人に投じられた票数はあわせて26万票足らず。全体の約17%に留まっている。逆にいえば、IR誘致を反対した候補者らが、全票数の82.8%を獲得した計算になる。もちろん各候補者の獲得票は、 IRの是非以外にも、様々な要素を加味する必要があるにせよ、大半の市民がカジノ創設にノーを突きつけた形となっている。

長年に渡って国が観光に資する成長戦略として推し進めてきたカジノの合法化とIR施設の創設。その是非について、今回はじめて民意が問われた格好となったが、結果だけをみると、取りも直さず、ギャンブル的要素を持つ産業に対しては、依然として否定的な民意が存在していることを、改めて他山の石として、理解しておく必要性もあるのではないだろうか。

8月8日から展開された選挙戦では、候補者の支持者らがターミナル駅の街頭などでビラを配るなどして支持を訴えていた。

残る誘致候補地は3箇所
大阪、和歌山、長崎が有力

いずれにせよ、今回の横浜市長選挙の結果を受けて、一次募集で国が定めた「上限3箇所」がある程度絞られることになる。

そのなかで、今最も早い動きを見せているのが和歌山市内の「和歌山マリーナシティ」に誘致を目指す和歌山県だ。県ではすでに6月2日の段階で、カナダ・トロントに本社を構える投資会社のクレアベストニームグループをIR設立運営事業者として選定。8月25日には、両者間で最終基本協定を締結している。今後両者が共同して、来年4月28日の期限までに、許可申請を国に求める方針だ。

次いで、佐世保市にあるハウステンボスへの誘致を目指している長崎県は8月6日付けで、 IR設置運営予定事業者としてオーストリアの国有企業を母体とする「カジノオーストリアインターナショナルジャパン」を選定した。

さらに県では、次点として香港のファンド企業を中心とする「オシドリ・コンソーシアム」を選んだ。ただ、オシドリ社では同日、「長崎県が課す制約の多くが不合理で、現状では合理的かつ効果的な方法で事業を行うことができない。 RFP(公募・選定)のプロセスにおいても複数の論理的不正の疑いが拭えない場面に遭遇した」と、選考プロセスへの参加中止を発表している。

そして「大阪・夢洲において世界最高水準の成長型IR」を掲げている大阪府・市。昨年2月の段階で、 MGMとオリックスによる事業者グループが手を挙げていた。その後大阪では、さらに追加募集を行ったが、7月21日の最終期限までに、新たな提案を行う事業者が現れなかったことから、事実上、MGM・オリックス連合グループが選ばれる形となっている。今後正式な契約締結に向け、諸条件を詰めていくことになる流れだ。

これら自治体の動きを受け、地域認定の許認可を下す国交省は7月20日、諮問機関として東京女子大学現代教養学部の竹内健蔵教授を委員長とする「特定複合観光施設区域整備計画審査委員会」を観光庁に設立。同日、第1回目となる会合を有識者らで構成される委員を交えて開催した。今後同委員会では、10月1日から来年4月28日までの間に、自治体とIR事業者が共同で申請する整備計画を審査。「上限を3として、公正かつ公正な審査を行い、優れた区域整備計画を認定する」としている。

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