パチスロユーザーが回遊するパチンコ機種の傾向を検証します(文=三輪勝治/エムシック代表取締役)。
5号機設置期限も残り半年を切りましたが、依然としてパチスロ業績を支えているのは5号機が中心で、6号機の業績が安定しないのが現状です。ところが一方で図①の通り、 AT/ARTのメインユーザー数比率は昨年12月から6号機が5号機を上回っており、6号機の有効活用とパチスロユーザーの離反防止施策は重要課題です。
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パチスロユーザーの店舗離反防止はパチンコとの回遊促進
6号機に満足できない最大の理由は勝金額の低さでしょう。5.5号機『番長3』『まどマギ2』の勝金額が2万円強に対し、唯一安定稼働の『バジ絆2』でも13,000円程度であり、多くの6号機は1万円前後です。この為、ユーザーは新台移動を繰り返し、次第に新台への期待感も小さくなり、機種に定着しなくなっています。パチスロユーザーは毎月30%弱が離反、10%強はパチンコへ流出し、これらのユーザーの集客の為に6号機新台で呼び戻す事を繰り返しています。
この様な状況下、パチスロユーザーの店舗離反を防いでいるのがパチンコ回遊です。パチスロユーザーを店舗から離反させない為には6号機新台の合間をパチンコ回遊で店舗に繋ぎ止め、新台集客と回遊促進を効率的に推進していく施策が不可欠です。今回はこの回遊促進の効率化の為にパチスロユーザーの回遊傾向を検証します。
図②③をご覧ください。それぞれミドル・ライトミドルへの5号機AT/ART・6号機AT/ARTユーザーの流出入バランスを月推移で示したもので、パチンコへの回遊(図のプラス方向)ではパチンコ新台が絡んでいる事が分かります。
※上図は各月の、パチスロ(5号機AT/ART・6号機AT/ART)から、パチンコ(ライトミドル・ミドル)への回遊人数比率を算出し、その推移を示したもの。(+)はパチスロからパチンコへの回遊、(-)はパチンコからパチスロへの回遊を表し、数値が大きいほどグループ間回遊人数比率が大きくなる。
また、図②のライトミドルでは、5号機・6号機ともに同一タイミングで流出入しておりグラフ波形はほぼ同じですが、図③のミドルでは流出入タイミング・数値が大きく異なっています。これは勝率が高いライトミドルと低いミドルとの差異、そして5号機主要機種の撤去が要因となっています。では、個別に確認しましょう。
ライトミドルとの回遊
図②ライトミドルとの回遊において、8月から12月の5号機主要機種撤去と、残存機種の厳しい運用で、5号機ユーザーも恒常的な離反要因がありました。この5号機撤去問題と6号機への不満足がS→Pの下地として在り、ライトミドル新台への回遊が確認できます。
まず、10月のS→Pは『戦国乙女6』が大きな要因です。同機種はアウト/1人・勝率 ・勝金額すべてにおいてAI–CISの育成推奨値を上回り、特に勝金額は23,000円とミドル並みで、単一機種でS→Pの要因となり得たのです。
次に12月には5号機ユーザーが『ゴッド凱旋』撤去でS→P回遊しています。しかし、パチンコ遊技に満足できず1月にはパチスロに戻っていました。同じ1月でも6号機ユーザーが新台『ひぐらしのなく頃に』『頭文字D』導入で戻ったのとは状況が異なっていました。
2月には1月の『沖ドキ』撤去と2月のパチンコ『物語シリーズ』『FAIRY TAIL2』などの新台でS→P回遊が起きており、6号機ユーザーは3月も『緋弾のアリア』にも大きく反応しています。更に5月には『織田信奈』『ガールズ&パンツァー』などに回遊し、若年層にも評価が高かった『大海4 BLACK』にも回遊しています。
この様にライトミドルへの回遊は、5号機・6号機ユーザーで下地となる要因は異なるものの似たタイミングで似た機種に回遊していました。
ライトミドル優秀機種の勝率・勝金額は30%・約2万円と勝率重視派向け5.5号機と似通っており、パチスロユーザーの回遊先として今後も重要な候補となって行きます。
ミドルとの回遊
図③をご覧ください。ライトミドルとグラフ波形が異なる要因は『ゴッド凱旋』撤去前後で5号機ユーザーの中身が変化している点です。『ゴッド凱旋』は勝金額重視派の代表機種であり、撤去前の5号機AT/ARTユーザーは勝金額重視派が多く含まれており、このユーザーは『真・北斗無双』や『大工の源さん超韋駄天』などミドルの勝金額重視派向け機種とも回遊していました。
しかし撤去後には同ユーザーの多くがミドルに流出しており残された5号機AT/ARTユーザーは勝率重視派と、勝金額重視派でもパチンコを好まないユーザーになっていたのです。この為、撤去以降の5号機ユーザーは勝率が上がりにくいミドルとの回遊が減少し、話題機に回遊する6号機ユーザーとは回遊するパチンコ機種が異なったのです。
また6号機ユーザーは新台回遊ユーザーであると同時に勝率重視派である為、一時的にミドル話題機に回遊しても勝率の上がらないミドルではすぐに離反するのです。逆に勝率が高い『とある魔術の禁書目録』には多くのユーザーが回遊しており、直近では『沖海5』への回遊も見られます。今後、勝率重視のミドルが導入されれば6号機ユーザーの回遊先として大きな候補となります。
まとめ
パチスロユーザーは基本的に勝率重視派です。従って、パチスロユーザーの店舗離反を防ぐには遊タイムを活かした高い勝率のライトミドルや、勝率をイメージできるミドルへの回遊と新台集客を効率よく運用する事が求められます。また『大工の源さん超韋駄天Light』のように勝金額の高いハネデジも、ライトミドルの一つ下のグループとして回遊促進できる機種となる事は、過去のコラムでもお話しています。
三輪 勝治
㈱エムシック代表取締役
1985年立教大学法学部卒業。パチンコ業界大手周辺機器メーカーに勤務。遊技台情報公開システム、情報ネットワークシステムの開発に携わる。退職後、One To One顧客管理システムの開発・販売会社設立に参加。業界初の顧客遊技履歴データネットワークシステムを立ち上げる。システム開発、セミナー講師、等幅広く活動。2016年10 月株式会社エムシック設立。