建築家が考える「新しい時代に求められるホールデザイン」
TSUKISHIMA REDEVELOPMENT(課された命題は街との共生)

投稿日:2021年5月20日 更新日:

4月9日、東京・月島エリアに、革新的なデザインホール『AQUAミッドタワーグランド』が新規オープンした。

新店に掲げられたメインコンセプトは、月島という歴史ある街並みと近代的なタワーマンションとの共生。古き良き時代の社交場としての役割を果たしながら、上階のマンション入居者と、元来そこで商いを営んでいた住民との架け橋を担った。月島の歴史に寄り添う斬新なデザインで表現された遊技島も印象的だ。

今回の新店『AQUAミッドタワーグランド』を含めた「月島西仲通り地区市街地再開発事業」は、2013年頃に地権者らによる組合が結成され、元来そこで営業していたもんじゃ屋や、パチンコ店等の地域振興を目的としながら、居住区も複合させた地上32階、延べ床5万㎡を超える大型再開発。

居住区分譲マンションの購入予定者のなかには、パチンコ店が入居することに抵抗感を持つ人も見受けられた一方、パチンコ運営企業(セントラックス株式会社)は、1953年の創業以来、歴史と伝統を兼ね備えた遊技施設として地域住民に愛されてきている。

実際、京楽総合プロデュースの下、TKビルド、NRCにてアライアンスを組んで2018年に竣工させた、近隣にある同社の新築ホールは、最適な地域共生を実現しているだけでなく、そのデザイン性は海外から高い評価を受けている。

そして今回の再開発事業に伴うパチンコホール部分のデザイン・設計・施工でも、再び同じアライアンス企業が結集し、計画がスタートしたのは2018年のことだ。

地上階は限られたスペースであるため、集客という観点だけでなく、従前の地域住民と新たに入居する人々の架け橋として、パチンコ店がいかに貢献できるかが課題となっていた。さらに、戦時中の空襲を免れ、古くからの街並みが残る月島に溶け込める新しいパチンコ店のあり方も模索された。

デザインを担当した建築家の鶴田一氏は、「昨今携帯アプリも革新しており、デザインに関する情報はネットに氾濫している。もはや誰がデザインをやっても同じ時代。地域における歴史や文脈を如何に丁寧に読み解いた上で、深く強いコンセプトを持つデザインを提案する事が、建築家の役割であると考えている。また、建築家は建物を企画する段階からファシリテーター(※)としての能力も重要。」と話している。

※グループや組織でものごとを進めていくときにその進行を円滑にし、目的を達成できるよう、中立的な立場から働きかける役割を担う人

パチンココミュニティスペースとして(大人の社交場)

1階コミュニティースペース/かつてのパチンコ店が担っていた大人の社交場

1階部分は木で組まれた有機的な形状の島に遊技台、盆栽スペース並びにベンチが融合され、「繋がる」をコンセプトにした革新的なパチンコ島が造作されている。経済性を追求した既存のパチンコ島には表現出来なかった木の温もりがある有機的な造形美がデザインされた。

このような遊技島のある1階コミュニティースペースで、今までパチンコを遊技した事のない世代や、過去に遊技経験がある世代等、新たな顧客の獲得も目指しているという。

また、遊技機を3台に限定する事によって、昨今のコロナ感染拡大防止にも対応したソーシャルディスタンスを確保。地域の社交場となり得るようなスペースとなっている。

日本古来の木組み工法

2階景品カウンターは木組みや組子模様を多用し、月島らしさを表現している

もんじゃ焼きでも有名な月島は、古くからそこにある木造建築の密集した情緒のあるエリア。再開発により地域の安全性、利便性、経済性を向上させた上で、古き良き時代の情緒を、時代を超えて繋いでいく事が、当初の企画段階より最重要課題だったという。

ホールデザインでは日本古来の木組み工法や組子柄を多用し、月島らしさをデザインで表現。特に景品カウンター周りは、木組み工法で天井をデザインする事で、存在感のあるスペースが創出されている。

なお、当該パチンコ店の設計は、今年度海外建築賞「THE SIT FURNITURE DESIGN AWARDS」(厳選受賞作品 動画公開中)「the London International Creative Competition」を受賞していることを付記しておきたい。(編集部)


海外建築賞「SIT Furniture Design Awards」厳選受賞作品動画(AQUA MID TOWER GRANDの紹介は7:45〜)

建築家:鶴田 一(Hajime Tsuruta)
一級建築士

株式会社NRC一級建築士事務所 代表取締役  米国オレゴン大学建築学部卒業。 2008年にNRC一級建築士事務所設立。 2016年東京工業大学 環境・社会理工学院建築学系都市・環境博士課程で都市計画学、IR(統合型リゾート)研究に従事。 ASIA DESIGN PRIZE GOLD MEDAL, INTERNATIONAL DESIGN AWARDS BROZE MEDAL等国内外多数の世界的な建築賞受賞歴を持つ。著書論文に「シンガポールにおけるカジノ合法化検討過程に関する研究」などがある。
●株式会社NRC一級建築士事務所
https://www.nrcgroup.co.jp/

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