【レポート】パチンコホール経営危機の真実

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ただでさえ市場規模縮小の流れが止まらないところへ、近年のパチンコ業界は改正遊技機規則の施行、依存症問題対策、消費税増税、店内原則禁煙化と逆風続き。そこへコロナ禍で、全国のホールはSOSを発している。実態はどうなのか?ホール経営の現状と展望をレポートする(文=中台正明 フリーライター)。

近年を上回るペースで減少を続ける店舗数

今年に入って、パチンコ店舗数が例年を上回るペースで減少している。遊技産業健全化推進機構には全国すべてのホールが誓約書を提出しているとされるが、その数が今年11月3日現在で9,176店舗。かたや、警察庁が毎年発表する店舗数データによると、19年12月末現在は1万店舗割れとなる9639店舗。この数字と上述した誓約書の提出店舗を比較すると463店舗減となり、すでに警察庁調べによる2019年1年間の減少店舗数(421店舗)を上回る。

過去5年の年間平均減少数(398店舗)と比べても、10ヵ月経過の時点で17%上回ることになる。

店舗数が減少する要因が業績不振ばかりとは限らない。しかし、「明るい展望が描けない状況のなかで、コロナ禍という逆風がダメ押しとなり、営業継続を断念したホールが多いのではないか」と自らも撤退に向けて準備に入ったという単店経営者は推測する。

もっとも、倒産件数は必ずしも右肩上がりで増え続けてはいない。㈱帝国データバンクによると、2017~19年は21件→26件→24件だったのに対して、今年(1~9月)は13件にとどまっている(図表1参照)。

理由について、同社東京支社情報部の綴木猛氏は「ホール企業の経営環境を左右するのは景況感だけでなく規制が占める部分が大きい。その規制が2つの点で緩められ、経営状態が危うかったホール企業も小康状態を保っているのではないか」との見方を示す。

規制緩和の1つは旧規則機から新規則機への入替の経過措置期間の1年延長。もう1つは公的な融資・保証の対象業種となったことだ。

特に後者は、政府の緊急事態宣言に伴う都道府県知事の休業要請で売上がしばらくの間ゼロになったホール経営者を安堵させた。ホール企業がセーフティネット保証5号の対象業種となったのは今年5月15日。これに伴い、政府系金融機関(日本政策金融公庫と商工組合中央金庫)、信用保証協会による融資・保証の対象業種になった。政府による新型コロナウイルス感染症に係る中小企業の資金繰り対策の一環で、これら制度融資がホール企業をひと息つかせたということだ。

「見方を変えると、新型コロナ問題が起きなければ、ホール企業の倒産件数はもっと増えていた可能性があるともいえる」と綴木氏。それをうかがわせるのが今年の月別倒産件数で、13件中9件が1~3月に集中している(図表2参照)。

綴木氏は「もともと、2020年から21年にかけてホール企業の倒産が増えていくのではないかとみる業界関係者は少なくなかった」と述べる。

帝国データバンクによるホール企業の倒産件数の推移をみても、過去のピークは2004年の規則改正の経過措置期間が切れた07年と翌08年で、06年から件数の伸びが顕著になっている。今回も18年の規則改正を受けて、同様の流れになるのではないかとして、新型コロナ問題が起きる前から、遊技機や周辺機器メーカーの間ではホールに対する与信を強化しようという動きが出ていたという。

コロナ禍で縮小が加速
安定経営店舗は2割弱か

実際には経営が破綻している状態なのに、銀行や政府の支援によって延命している企業を“ゾンビ企業”というが、業界の場合はどれぐらいのホール企業が危機的状況にあるのだろうか。この点は見解が分かれる。

「皆がゾンビ企業とまでは言わないが」と断わりを入れたうえで、「経営がひっ迫していないホール企業はほぼない」と断言するのは西日本の中小ホール経営者。コロナ禍によって業界の縮小速度が速まり本来、新規則機が定着した3年先に訪れるはずの状況がいま訪れているという。

「すでにデッドラインぎりぎりだったホール企業が思考停止に陥っているのはもちろんのこと、3年先を見据えて、次のステップへの準備を計画的に進めようとしていたホール企業もその猶予期間をいきなり奪われ、厳しい状況に追い込まれている」。

約10店舗を展開するホール経営者も「近年、低貸し比率が高まり、売上が上がらない構造になっている。ところが、固定費は変わらない。機械代はいうに及ばず、人件費も年々負担が増している。厳しいなんてものじゃない」と内情を打ち明ける。

地方の大都市に本社を構える業界歴50年超のホール経営者も「十分な利益を上げているホールはおそらく10店舗のうち1~2店舗。業界は瀬戸際に追い込まれている」と憂慮する。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱の浦部雅充チーフコンサルタントは、コロナ禍の影響で多くのホール企業の売上が昨年対比20~30%減となっている現状に言及。「この状況下でも人員数の削減や機械代の全面カットなどをすれば、何とか黒字化できるのだが、旧規則機から新規則機への入替を21世紀会決議に基づいて計画的に進めることが求められている。こうしたことから、ほとんどが赤字に転落する恐れさえある」と予測する。

高い賃貸契約など過去のツケが足かせに

一方で、厳しいことは確かだが、大部分のホール企業が瀬戸際というほどの状況ではないとする意見もある。

ホール経営は現金商売で、商品の在庫がない。貯玉の預かり金も会計上は負債だが、実質的には資産が社内に溜まった状態となっている。日々の営業に必要な手元資金がそれほどなくても回していける商売ということだ。小規模の同族経営でも、企業化もある程度進んでいる。

そのため、㈱船井総合研究所 金融・M&A支援部の平野孝シニアコンサルタントは「現状の減価償却費を除く償却前営業利益をみた場合、販促費や人件費の削減、入替費用の減少などにより、収支上、赤字の店舗は約9,000店舗中2~3割程度と思われる」と推察。ただ、過去の良かった時代の高額賃料の負担が続く店舗や、過去の大型投資による返済負担を抱えるホール企業では、今後の市場規模縮小の影響で存続が難しいところが増えると読む。

パチスロ専門店を単店経営する社長も「新規則機への入替費がかさむ一方、売上が減っていく悪循環で、経営は大変。でも、2004年の規則改正後の状況に比べるとまだ良い方だと思う」との感想を漏らす。

系列店は5店舗未満という地方の老舗ホール企業の経営者も「旧規則時代のパチスロのスペックが自主規制で落ち始めた頃から、出費をできるだけ抑えて、無理のない経営を心掛けてきたので、赤字に転じることはなかった。むしろ新型コロナ問題が発生する直前は業績が上向いていた」と返答。コロナ禍により売上が昨年対比65%にとどまるなど、たしかに厳しい状況ではあるが、セーフティネットをはじめとする公的支援も受けられたし、あわてるほどではないという。

多くのホールを助けたセーフティネット

そこでセーフティネットのベースとなる国の信用保証制度と信用保険制度について触れておくと、信用保証制度とは公的機関である信用保証協会が中小企業の借金の保証人となるものだ。その中小企業が債務不履行に陥ったとき、公的金融機関が債務を一部肩代わりするのが信用保険制度で、両制度は対となって機能している。

この両制度の上に成り立っているのがセーフティネット保証5号で、全国的に業況の悪化している業種に属し、経営の安定に支障が生じている中小企業者に対して、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で80%保証を行う。保証限度額は一般保証(限度額2億8,000万円)とは別枠で2億8,000万円となっている。

約10店舗を展開するホール企業の経営者は5月15日に運用が始まるとすぐに手続きをしたとして、「ほぼ希望どおりの融資が受けられた。正直、助かった」と吐露する。

先の老舗中小ホールの経営者も「経済産業省が4月24日付でホール企業も対象とする予定だと発表すると、すぐにメインバンクに相談をしていたので、手続きはスムーズだった。額はほぼ希望通り。まだ、顧客の戻りが十分ではないが、しばらく耐え忍ぶことができる」と表情を和らげる。

ただし、セーフティネット保証に関しては審査が厳しく、簡単には融資を受けられていないとする意見もある。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの浦部氏は「金融機関は政府保証付きでなければ簡単に融資しなくなっている。公的融資・保証の対象になったことがホール企業を助けたのは事実」としながらも、「ホール企業は必要とする金額が大きいことや政府系金融機関側に資料を適正にチェックできる人材があまりいないことも少なからず影響し、満額回答を得たところは少数ではないか」とみる。

前出・スロ専の経営者も「融資してもらえたのは希望額の2割」と明かす。セーフティネットで資金調達したホール企業について、船井総研の平野氏は過半数以上にのぼるのではないかとの見立てを示し、「手形の支払いなど、資金繰り上の過不足分の穴埋めにあてた会社も多かったと思う」と話す。

公的融資・保証制度の対象となったことで救われたホール企業は多い。
(※写真はイメージ)

手元資金は一瞬で消える
ホール企業の経営構造

そもそも、ホール企業は現金商売なので手元資金がそれほどないというのは中堅ホール企業の経営者。手元資金が十分なのはごく一部の優良企業にすぎないと力説する。

浦部氏も「ホール企業の自己資本比率は20%~50%ぐらい。だが、それは現金を持っているわけではない。建物や機材関係の設備投資が多額になるため、固定資産として持っているにすぎない。借入も多額のため、流動比率は低い企業が多く、手持ちの現金はかなりの優良企業でないとそれほど用意できない」と解説する。

緊急事態宣言に伴う休業協力中は雇用調整助成金により人件費の一部が補填できたことや機械代がストップしたことから耐えられたが、休業がもう少し続き、かつセーフティネットの対象業種にもならなければ、相当数のホール企業が倒産に追い込まれていたはずだとも言う。

「パチンコ営業は規制業種なので、状況が簡単に変わる。今回のように全店が休業せざるを得ない状況に追い込まれても、半年程度はしのげるよう、常に手元資金をチェックしてきた」(東日本の中規模ホール企業の経営者)というホール企業は稀有なのだ。

ただ、手元資金が2~3ヵ月分しかないというのはホール企業に限った話ではない。平野氏は「大手企業を含む日本の企業で半年以上の潤沢な手元資金を有する会社は少ない」とする。手元資金の乏しさがホール経営を悪化させている主要な要因ではないということだ。

舵取りが一番難しいのは賃貸中心の中堅ホール

では、ホール経営の負担になっている要因は何かというと、昔から必ず話に出てくるのが機械代だ。

2018年以降、規則改正に伴う旧規則機の大量の認定申請で売上総粗利に占める機械代比率はやや落ち、15~20%とみられていた。それがコロナ禍の拡大後、メーカーの新台販売計画の延期もあって、さらにダウン。今年度(4~9月)は10%前後のホールが多いのではないかとの声が聞こえてくる。新規則機への入替を進めなければならないため、今後は再び上昇するものと思われるが、近年に限ると負担は若干軽くなっているということだ。

それよりも賃貸物件の場合、地代家賃が問題だとする意見もある。ホールの台当たり家賃は月額、大都市圏で2~4万円、郊外で8,000~9,000円とされている。先にも述べたが、この地代家賃に関し、いまより景気が良かった時代に高い相場で契約し、それが足かせになっているケースが少なくないというのである。

都内や大阪市内には台当たり3万円前後の賃料で営業しているホールがいまも見受けられるが、「その賃料で経営を成り立たせるのは難しい時代を迎えている」と平野氏。しかも、そういう物件に限って、途中解約した場合、残りの契約期間の地代家賃を一括で払うとか、莫大な違約金を払わなければならないなどの付帯条件が設けられている場合が珍しくないと指摘する。

企業規模別で舵取りが一番難しいとされたのは10店舗前後から15店舗前後を展開するホール企業。特に賃貸中心の場合、どのようにアクセルを踏むのか、あるいはどのようにブレーキを踏んで資源を集中させていくのか、デリケートな経営判断を求められるとの声が聞こえてくる。

逆に自社物件であれば、3店舗以下の規模でもやりようがあるとするのは平野氏で、「所帯が小さい分、思い切ったことができる。現に適切な新台導入など、ホール営業のエッセンスを大事にし、従業員エンゲージメントもしっかりしている元気な小規模企業は存在する」と明言する。浦部氏も「独自カラーで運営できる企業イメージを持っているか否か」を生き残るキーワードの1つに挙げる。

一方、「自社物件なら業態転換しやすい」と違う視点から小規模ホール企業の展望を語るのは西日本で単店を営む経営者。帝国データバンクの綴木氏も近年、「転業」はホール企業の1つのキーワードになっていると話す。

厳しい現状をどのように打破するのか。いま、全国のホール企業のビジョンが問われている。

今年4月に民事再生法の適用を申請したホール企業の経営店舗。同社は5月に再生手続き開始の決定を受けた。

◆著者プロフィール
中台正明(なかだい まさあき)
1959年、茨城県生まれ。フリーライター。大学卒業後、PR誌制作の編集プロダクションなどを経て、1996年3月、某パチンコ業界誌制作会社に入社。2019年2月に退職し、フリーとなる。趣味は将棋。

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