【レポート】裏切りの“サラ番”継続設置

投稿日:2020年9月14日 更新日:

※写真はイメージです。

高射幸性パチスロ機など、旧規則機の撤去に当たり、早くも足並みがバラつき始めた。この問題はさらに悪化する危険性を孕んでおり、業界にとって大きな不利益を被ることに繋がりかねない。早急な対応が必要だ。

設置期限を迎えたはずの高射幸性パチスロ機『押忍!サラリーマン番長』を未だに設置をし続けるホールが後を絶たない。編集部でも8月下旬、都内某駅前の某ホールを覗いて見ると、確かに同機が現役稼働していた。

「P-WORLD」上では、東京都内における同機の設置店舗数は僅か1店舗(※8月末時点)。しかも当該ホールは7月末を以て閉店していた。つまり都内に限ってみると、「P-WORLD」上で同機の設置店舗は完全に姿を消している。

あるホール関係者は「(サラ番の設置は)どこのホールも確信犯です。『P-WORLD』に載せなくても、地元の人やコアなファンに伝わりますから」と話す。

同様のケースは、全国的な現象だ(※ただし大阪府では、同機の設置期限が切れていないホールも存在する)。実態を把握するのは難しいが、「同機を再設置するホールも出てきました。再設置に当たっては、所轄への申請が必要ですが、法的に問題はないため、承認を受けられています」(某コンサルタント)とのことで、問題は日を追って業界全体にとって悪い方向に推移している模様だ。

上述の通り、同機を設置し続けるホールは「法的に問題ない」という言い分が多い。

一部の遊協組合では、同機の設置を続ける組合員ホールに対し、電話などで是正を求めているが、「顧問弁護士に確認したところ、法的に問題がないとの見解を得ております。だから外すつもりはありません」と強気な姿勢を見せるホールもあるという。

「皆に迷惑がかかっている。業界としても処分してほしいし、警察も別件でも何でもいいので逮捕してもらいたいくらい。協力するつもりがないのに誓約書を提出しているのなら小賢しいの一言。組合もメーカーも関係団体も、容認できないことの見解を示し、釘を刺すべきだ」(ホール関係者)。

・本丸は“ミリオンゴッド凱旋”!?

実際のところ、“サラ番”の設置を続けることで、集客や利益面において、当該ホールは大きな恩恵を受けているのだろうか。

当該ホールの競合店関係者に、その点を問うたところ「稼働状況を見る限り、集客などにそこまで大きな効果は無いと思います。ウチの店のお客様が減ったということも今のところありません」と話す。

では、競合店という立場で看過できる問題かと言えば、決してそんなことはない。

先のホール関係者が続ける。「おそらくですが、“サラ番”の設置は、いわば実験的な意味合いだと思います。設置を続けることで、所轄からの指導や処分の可能性を探っているのではないでしょうか。ここで問題がないと判断できれば当然、この後に設置期限の満了が控えている“ミリオンゴッド凱旋”も外さずに営業するでしょう」。

仮に今後、同機を競合店が外さずに営業を続けられると、「“サラ番”とはわけが違います」と同ホール関係者は恐れる。それほど現状、集客面における同機の貢献度合いの高さは、抜きん出た存在であり、同機を残すホールが競合店に存在する中での営業は、非常に大きなハンデを背負うものだという。

「ウチは、今後もルールを破ることはないですが、“サラ番”の問題を放置すれば、“ミリオンゴッド凱旋”の時には、今以上に外さないホールが増えることは間違いないでしょう。そうなると真面目なホールにとって不利益は避けられません」(同ホール関係者)と、問題の深刻さを訴えかける。

・設置期限の延長は自主規制の遵守が前提

高射幸性パチスロ機の設置を続けるという行為について、当該ホールは「法的には問題がない」と主張するが、だからと言って、行政が問題視しないというわけではない。

今回、異例ともいえる旧規則機の設置期限延長を認めた警察庁だが、この件に関し、警察庁生活安全部保安課の小堀龍一郎保安課長は、6月18日に開催された日遊協の通常総会での講話で次の通り、明言している。

「今回の改正は、いわば、業界団体による旧規則機撤去の取組に対する信頼をベースに行ったものであります」

「具体的な数値目標を示して遊技機の計画的な撤去を行うほか、『特に高い射幸性を有すると区分した回胴式遊技機』についてはこれまで通りの満了日までに撤去することとされました」

「業界において、この取り組みを始めとして、旧規則機の設置台数を計画的に着実に減少させるために有効な方策が確実に実施されることを強く期待しています」。

旧規則機の設置期限の延長は、業界内の自主規制の策定と、その遵守が前提となっている。前提条件が崩れたと警察庁が判断し、何らかの形で、業界側が不利益を被ることになったとしても、文句すら言えないだろう。「法的に問題はない」などという都合の良い解釈で、一部の旧規則機の設置を続ける行為は、目先の利益はともかくとして、中長期的な経営を考えた場合、本当に得策かどうかは大きな疑問が残る。

業界団体側も、この問題を看過しているわけではない。全日遊連は8月17日、各都府県方面遊協を通じて、組合員ホールに対して、旧規則機のタイプ毎の設置期限などを定めた「21世紀会決議」の遵守を呼び掛けた。また日工組や日電協も同様の呼び掛けを8月25日付けの文書で行い、これに前後し、一部の遊技機メーカーも、取引先となるホールに対して、同決議の遵守を求めた。その文書の一部では、規制を守らない場合、今後の取引内容を検討する旨が記載されており、その抑止効果に注目が集まる。

コロナ禍もあって、ホールだけではなく、業界に携わる全ての職域において、景況が厳しい状況が続いており、今後の見通しも不透明だ。そのため行政に対しては、さらなる規制緩和を勝ち取りたいのが、大方の関係者の本音ではないだろうか。

特に不振色がより鮮明なパチスロ市場などがその代表格だ。周知の通り、今年に入り、規制緩和が一部、認められたが、未だ、規制緩和を引き金としたヒット機種は出現していない。関係者の話によると、緩和した内容の解釈や、さらなる緩和を求めて、業界側と行政側で話し合いが続いているが、業界側が満足できる回答は得られていない状況だという。

講話の中で警視庁の小堀課長が述べた通り、規制緩和の実現は、業界と行政の信頼関係の度合いに依るところが大きい。「業界内で定めたルールを無視して、旧規則機を外さない」──、規制緩和を認めた警察庁、それを勝ち取った業界団体関係者、そして、ルールを遵守するホール関係者を裏切るかのような行為が、来年11月末まで常態化することは是が非でも避けたいところである。

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