失敗しない売り場プロモーション㊷(文=野島崇範/株式会社プラスアルファ専務取締役)
店長を含む経営幹部の方々が、「うちのお客様は広告に反応しない」とおっしゃることが増えています。堂々とおっしゃるから驚愕します。なぜなら、広告に反応しないということは「お客様を裏切り続けています!」と同義語だからです。
今回は広告の基礎の話をします。私はわざわざ伝えなくても広告の基礎は分かっていると思い込んでいました。しかし、ここ最近、店長を含む経営幹部の方と話が通じないと思う瞬間があります。それは一様にして広告の基礎を理解していないからだと気付きました。
そのため、顧客反応を引き起こす広告とは、どのような要素が必要なのか2つの視点から解説します。
反応の鈍さは信用低下のサイン
まず広告で必要不可欠な要素は信用です。広告に信用がないからお客様はあなたのお店の広告に反応しないのです。厳しい伝え方をすると、お客様は広告に反応しない訳ではなく、あなたのお店の広告だから反応しないのです。
お客様は過去のあなたのお店の広告を通した体験から「誇大広告ではないか」「都合の良い情報だけを伝えているのではないか」といった疑念を持っているのです。このような状況下では、どんなに魅力的な言葉やデザインで飾られた広告であっても、お客様の心に響かず、行動喚起には繋がらないです。広告に対する反応の鈍さは、お客様からの「信用」が低下しているサインと言えます。
これは、食べ物の紹介に例えるなら分かりやすいかもしれません。「あそこのお店、すごく美味しいらしいよ!」と友人に勧められたとしても、その友人が普段から大げさな話ばかりしており、以前絶賛していたお店に行ったが全く美味しくなかった経験があれば、「またいつものことだろうな」「信用できないから、今回はパスしよう」と感じてしまいます。
どんなに魅力的な料理の写真を見せられたとしても、信用がなければ、行動に繋がらないのです。
信用の回復には長期的な戦略が必要
お客様からの信用を回復するためには、短期的なテクニックに走るのではなく、お客様との長期的な関係構築を意識した戦略が不可欠です。まずはお客様を煽らずお客様の期待を裏切らないように努めることが重要です。
現在のパチンコ業界の王道のプロモーションと言われる継続率や大当り出玉を打ち出す広告が、お客様の信用を低下させ続けていることにそろそろ気づくべきです。お店が意図せず行っていることが、お店の信用を低下させ続けているのです。
分母の大きい客に広告を届ける
次に、広告を行う際に意識すべき必要不可欠な要素は、お客様の分母の大きさです。お客様の広告に対する信用を回復しても、その情報が届くお客様の数が少なければ、期待する効果は得られにくいでしょう。
例えば、反応率が10%の広告があったとします。もし広告を届けるお客様の数が100名であれば、実際に反応するお客様は10名です。しかし、同じ反応率10%の広告でも、1000名のお客様に届けば、反応するお客様は100名に増えます。
このように、広告に反応する総人数は、反応率だけでなく、広告が届くお客様の数、つまり「分母の大きさ」によって大きく左右されるのです。もちろん、反応率を10%から20%、30%と改善することが重要ですが、伝えるお客様が100名しかいなければ、20名、30名しか顧客反応は起きません。
私が行う広告研修でよくいただく質問に、「版権機種の作品やタイトル・キャラクターを知っているお客様にしか広告は効果がないのではないか」というものがありますが、この考え方は誤りです。なぜなら、知らない人に向けて闇雲に広告を打つことが非効率だからです。
本当に大切なことは、最初から特定の機種、特に顧客欲求の高い機種に対して強い興味や欲求を持っているお客様に、まずはしっかりとアプローチすることなのです。
そのような「興味のある・欲求のあるお客様」の分母を把握し、その層に向けて信用のある広告を発信することで、効率的に行動を促進できます。
次回はより具体的に「興味のある・欲求のあるお客様」の分母を狙う重要性を解説します。
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◆プロフィール
・野島崇範(のじま たかのり)
1983年三重県生まれ。北海道教育大学卒。全国のホールを年間1,000店舗以上調査し、その中から繁盛店に共通する法則を見つけ出し「伝達力」と定義。「伝達力」調査の分析に基づき、お客様立場の徹底と継続の重要性を、支援先ホールの全スタッフと共有する。また、売り場ランチェスター戦略の第一人者として、科学的に売り場の支援を実施。売り場の書籍「あなたの売り場、太っていませんか?」を発売。