失敗しない売り場プロモーション㊱(文=野島崇範/株式会社プラスアルファ専務取締役)
注目されているカスタマージャーニー
この数十年、顧客の消費行動を加速させて、売上の最大化を狙う手法の一つとして、「カスタマージャーニー」という言葉を目にするようになりました。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知して購入に至るまでの行動や心理を時系列的に可視化した概念です。直訳すると「顧客の旅」を意味し、顧客の行動や思考、感情などを旅の行程に例えて表現します。
カスタマージャーニーを活用することで、顧客の購買プロセスを詳細に理解し、各ステージで抱える課題や感情に対応することで、顧客体験の質が向上します。これにより、顧客との信頼関係が強化され、ブランドへの好感度やエンゲージメントが高まります。結果として、顧客の購買意欲が促進され、最終的な売り上げの増加につながります。
タイミングで人の欲求は変わる
しかし、カスタマージャーニーを含めて多くのマーケティング理論の最大の問題点は、顧客欲求が変化することを織り込んでいないことです。顧客の行動や感情は顧客欲求に左右されます。
結婚したタイミング、子どもが生まれたタイミング、失恋をしたタイミング、仕事で大きな失敗をしたタイミング・大きな成功を成し遂げたタイミングなど、様々な要素によって顧客の欲求は変化します。
つまり、見た目は大きく変わらない人間であっても、人間の欲求は大きく変わる可能性があります。
例えば、自動車の選び方における欲求は変化します。若い独身の頃は、スピードやデザインに重点を置いたスポーツカーなどを選ぶことが多いです。この時期の欲求は、「自己表現」や「楽しさの追求」にあります。車を通じて、自分の個性やステータスを示したいと考えます。
結婚し、子供ができると、家族の安全や快適さが重要視されるようになります。このため、スポーツカーからミニバンやSUVに乗り換えるケースが多いです。この変化は、「安全性」「家族の快適さ」など、欲求が実用的な方向に変わることを示しています。
さらに、子供が成長して独立した後は、再び趣味や自己表現に戻る人もおり、今度はクラシックカーや趣味の車を選ぶことがあります。このように、人生のステージに応じて、欲求が具体的に変わっていきます。
機種への欲求も常に変化する
さらに顧客欲求の変化を因数分解すると、「行動の変化」・「感情の変化」・「価値認識の変化」の3つに区分することができます。全てを解説すると紙面が足らないため、今回は「感情の変化」について『スマスロモンキーターン』の事例から解説します。
『スマスロモンキーターン』という機種の顧客欲求は常に変化しています。一方、圧倒的多数のパチンコ店は顧客の感情の変化に寄り添わずに、いつまでも継続率を含めたスペック一辺倒な広告を掲示しています。
顧客の検索欲求を可視化したマインドマップを見ると、継続率やスペックという顧客欲求は存在しません。赤色の中心が顧客の主の欲求の検索キーワードです。次に赤色の円から繋がる黄色や灰色の円が一次枝(主なニーズの枝)の検索キーワードです。
例えば、2024年3月のマインドマップを見ると「モンキーターン ヘルメット」や「モンキーターン シナリオ」などを顧客が調べていることが分かります。
検索は顧客欲求を示します。だから顧客欲求が示すままに情報発信すると伝わります。
しかし顧客欲求は変化するため、ずっと同じポスターを掲示していても伝わらなくなります。2024年10月には「モンキーターン サブ液晶」や「モンキーターン 設定差」という欲求が生まれています。そのため、その欲求に合わせて情報発信も変化させます。
大切なことは、顧客欲求は変化するということを理解することです。
【お知らせ】
スマスロモンキーターンのデザインと言えば「デザイン定期便」
https://www.uriba-design.com/
◆プロフィール
・野島崇範(のじま たかのり)
1983年三重県生まれ。北海道教育大学卒。全国のホールを年間1,000店舗以上調査し、その中から繁盛店に共通する法則を見つけ出し「伝達力」と定義。「伝達力」調査の分析に基づき、お客様立場の徹底と継続の重要性を、支援先ホールの全スタッフと共有する。また、売り場ランチェスター戦略の第一人者として、科学的に売り場の支援を実施。売り場の書籍「あなたの売り場、太っていませんか?」を発売。