2022年1月をもって完全6号機時代を迎えることとなります。遊技機規則の運用期間での算出ならば、2004年7月1日の改正で始まり、2018年2月1日に6号機の遊技機規則となるまで、実に13年6ヶ月も“5号機時代”が続いたことになります。その間、トレンドは大きく変わっていきました。
撤去目標などもあり、徐々に5号機が減っていくこのタイミングで、人気システムの変遷を振り返ってみようというのが、本企画の趣旨であります。申し遅れました。普段はファン向け媒体に執筆させていただいております、佐々木真と申します。
初回は“パチスロ冬の時代”と言われた5号機最初期。2007年近辺までを振り返ります。と、その前に。5号機へと遊技機規則が改正されたのは、4号機の射幸性を抑制するためでした。4号機末期は、爆裂AT機やストック機が市場を席巻。それらを封じるために改正されたのです。そのため、中身は大幅に刷新されました。どういったものならば作れるのか。5号機時代がスタートは、各メーカーとも、まさに手探りの状態となりました。
5号機最初期のゲーム性はシンプル
初の5号機基準として登場したのは、遊技機規則改正から1年後の2005年7月に登場した『CRP花月伝説R』。パチンコ玉を用いて遊技するものの、ゲーム性など中身はパチスロという“パロット”という形でした。初のパチスロは、同年10月に登場の『新世紀エヴァンゲリオン』。2005年中に登場した5号機は7タイトルのみ(うち1タイトルは同内容の30Φバージョン)。いずれもボーナスと、ボーナス終了後に突入するRT(リプレイタイム)のみのゲーム性でした。
圧倒的な瞬発力を誇る4号機に敵うはずがございません。お世辞にも4号機末期を支えたユーザーのお眼鏡に適うとは言い難く、稼働・粗利ともに見込みにくいと判断され、多くのホールで新機種の代わりに“ベニヤ板”が並ぶこととなりました。まだ4号機を設置できた2006年には、全国で200万3,482台が設置されていたパチスロですが、完全5号機時代となった3年後の2009年には134万7,176台に。33%減となったのです。
と、数字上はまさに冬の時代で間違いありませんが、瞬発力は4号機と比べないとして、この時代の機種たちが“つまらない”ものだったかと言われれば、NOと断言させて頂きたいです。
5号機も後半になっていくとその傾向となりますが、ヒット機種が生まれると、そのシステムに追随した機種だらけとなります。しかし、この時期はまだ“何が正解か”どのメーカーも模索している状態。1機種1機種に個性があり、新たな遊技機規則から生まれた様々な新たなゲーム性を楽しむことができました。そして、後に5号機で主流となるシステムの元となる発想も、大半はこの時期に考えられたものだったりします。
5号機の特性に活路が見出される
5号機の特徴は、リプレイ確率を変化させるタイミングが遊技機規則に明記されていることです。5号機初期は、各メーカーともRTの使い方を模索することとなりました。
5号機初期に人気システムとなったのが、通称“リプパン方式”。ボーナス終了後に突入するRTをパンクさせる出目を用意し、それを目押しによって避けることで継続させて遊技メダルを増やすゲーム性です。
『小麦ちゃんマジカルて』や『ボンバーマンビクトリー』が先駆者となり、高い出玉率を誇った『スパイダーマン2』や『リングにかけろ1』というヒット機種も生まれました。
保通協の出玉試験(シミュレート試験)では、成立した小役等を必ず入賞させるため、検査上は突入したRTも早々にパンクしてくれることになります。そんな試験方法の盲点を突いた形でしたが、後に検査基準の変更がなされたようで、この時期にしか登場しなかったシステムでもあります。
4号機で問題となったAT(小役のアシスト)機能ですが、完全に禁止されたわけではありませんでした。それを示すのが、この機種たちです。当初はAT小役のみでメダルが増えることが許されていなかったようで、微減させながら次のボーナス成立を待てる程度のまったりしたものでした。
この当時は、まだまだ跳ねる4号機との併設時代ということもあり「付加機能に当選したのに微減」という設計は、ユーザーから支持を得られ難かったのは確かです。
微減するATだけでは厳しい。微増するRTだけでも厳しい。合わせてARTとして出玉を作るにも、まずRTでできることの発展は必要となりましたが、5号機の現在地、発展への課題を示した、これらの機種の存在は大きかったと思う次第です。
4号機が完全に撤去されることとなった2007年。全メーカーが5号機の開発競争を繰り広げるようになります。その中で注目を集めたのは、RTの新たな使い方を楽しませた機種たちでした。
『2027』は、ボーナス成立時にリプレイ確率が上昇。ARTの権利を持っている際は、ボーナスを揃えずに小役を獲得するゲーム性で、まとまった出玉を実現しました。このボーナス成立後の状態を維持する発想は、後のAT機に影響を与えました。
『スカイラブ』は、通常時の出目契機(ベル入賞)でRTに突入。終了後は、純粋な通常時となり、ここをRT突入のチャンスゾーンとすることによって、RTが連鎖する“ループ式RT”というゲーム性を生み出しました。
このループ式RTが『スカイラブ』以降で花開かなかったのは、あまりに完成され尽くしたゲームバランスだったからでしょう。続編も作られましたが、初代を超えることはありませんでした。しかし、ループ式RTの基本の発想は、後に『パチスロ交響詩篇エウレカセブン』(サミー)など、ART機と形を変えて引き継がれることになります。
次回は、その『パチスロ交響詩篇エウレカセブン』など。冬の時代を脱却した2009年前後を振り返ってみたいと思います。
佐々木真(ささきまこと)
パチスロ歴30年の2号機世代のフリーライターで、2000年よりファン向け媒体を中心に活動。新システムを見ると、遊技機規則をどのように活用しているか考えたくなる性分。好きな5号機は『スカイラブ』。