【コラム】なぜパチスロの適合率は下がっているのか──スマスロ時代の型式試験から見るメーカーの開発姿勢

投稿日:

2026年7月の型式試験では、回胴式遊技機(以下、パチスロ)の適合率が8.1%(保通協とGLIの合計)となり、再び1桁台となりました。結果書交付161件に対し、適合は13件です。パチスロの適合率低下は以前から業界内でも話題ですが、今回は単月の8.1%だけでなく、2023年以降の推移に注目します。スマスロが登場したのは2022年11月ですので、2023年以降はおおむね「スマスロ時代」と捉えられます。この期間の型式試験の数字から、現在の適合率低下を開発側からどう捉えられるのか、考えてみます。(ジェイさん@発信する遊技機ブランドプロデューサー/J-BEAT合同会社代表)

■「スマスロ時代」、パチスロの適合率は低下が続く

年別の適合率を見ると、パチスロは保安通信協会(以下、保通協)で、2023年の20.4%から11.0%と低下しています。GLI Japan(以下、GLI)でも同様の傾向が見られます。

一方、同期間のぱちんこ遊技機は、保通協で21.9%から29.3%へ上昇しています。もちろん、ぱちんことパチスロでは試験内容や機械設計が異なるため、単純に比較できるものではありません。ただ、スマスロ時代に入ってからパチスロの適合率が継続して低下しているという点は、現在の開発環境を考えるうえで興味深い数字だと感じています。

■1台あたりの負担は増えている

パチスロの型式試験手数料は、1件あたり1,628,000円です。この金額は都道府県警察関係手数料条例で定められており、2013年4月1日の改定以降、現在まで変更されていません。

2023年の2,679円から2025年は3,867円となり、2年間で約1.44倍です。試験料そのものが値上がりしたわけではありません。受験件数が増える一方で、市場全体の販売台数が減少したことで、販売1台あたりで負担する試験料が大きくなっています。

また、実際にメーカーが負担する型式試験のコストは試験料だけではありません。試験用の筐体を複数用意する製造費用に加え、申請準備から結果が出るまでに必要となる人件費なども発生します。今回は比較しやすい数字として試験料に絞っていますが、実際の開発負担はこれより大きい点には留意が必要です。

■それでも試験料は機械価格の1%未満

2024年に導入されたパチスロ機種の定価をもとに、仮に1台50万円として、2025年の1台あたり試験料3,867円を当てはめると、その比率は約0.77%です。

型式試験については、「1回163万円もかかる」「不適合が増えればメーカーの負担も大きくなる」といった見方があります。もちろん、先ほど触れた筐体代や人件費などまで含めれば、決して小さな負担ではありません。ただ、少なくとも試験料だけで見れば、販売1台あたりに換算した金額は機械価格の1%にも届きません。

ここから考えたいのが、メーカー側にとっての「適合率」の意味です。メーカーが遊技機を開発する目的は、適合率を高めることではなく、市場でユーザーに選ばれる商品を作ることです。試験に通りやすいよう、仕様に十分な余裕を持たせる設計も可能です。しかし、その結果として出玉性能や商品としての魅力まで抑えてしまえば、本来目指しているものとは違ってきます。

特にスマスロ登場以降は、出玉性能を含めた商品力の競争が激しくなっています。そうした市場環境を踏まえると、現在の低い適合率には、適合率を高めることよりも商品としての魅力を優先し、試験上のリスクを取った設計に挑戦しているという、メーカー側の開発姿勢も表れているのではないでしょうか。

■市場では「選択と集中」が進んでいる

一方、市場に供給されるパチスロにも変化が見られます。

パチスロの販売機種数(増産機種を含む)は、2024年の91機種から2025年には79機種へ減少しました。一方、1機種あたりの平均販売台数は約7,900台から約8,300台へ増加しています。年間販売台数は2025年に658,000台と前年比91%まで減少していますが、パチスロの設置台数は令和5年を底に2年連続で増加し、1,347,466台から1,362,177台となっています。

この数字から見えてくるのは、販売される機種の選択肢が減る一方で、1機種あたりが市場で担う役割が大きくなっているという変化です。メーカー側では、低い適合率の中でも商品力を求めた開発競争が続く。一方のホール側では、市場に供給される機種数が減少する中、導入した1機種をどう活用するかの重要性が増しています。この2つの変化は、あわせて見ておく必要があると考えています。

■さいごに

型式試験の適合率を開発側の視点から見ると、「適合しやすさ」以上に、市場で選ばれる商品力を重視する現在の開発姿勢の一端が見えてきます。

市場では、販売機種数や年間販売台数が減少する一方、1機種あたりが担う役割は大きくなっています。こうした市場では、新台を見極めて導入することはもちろん重要です。それと同時に、現在設置している機械をどこまで長く活用できるかという視点も、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。新台の導入判断と既存機の長期活用。この両方を前提に機種構成を考えていくことが、これからのパチスロ運用における一つの重要な視点になると考えています。

◆プロフィール
・ジェイさん@発信する遊技機ブランドプロデューサー
J-BEAT合同会社代表

遊技機の価値を、開発起点で市場に届ける仕事をしています。
パチスロ開発(2007年〜現役)
X(旧Twitter):https://twitter.com/jsan65536

関連記事

-コラム
-