羽根モノ特集 PART 5|特別インタビュー

株式会社SANKYO
小倉敏男代表取締役社長(CEO兼COO)
KUGITAMA第一弾『P羽根BASTARD!! -暗黒の破壊神-』が遂に登場 ホールの導入負担を抑えるレンタル施策スタート
SPECIAL INTERVIEW
「高過ぎる射幸性・高過ぎる機械代を見直しすること」──。小倉社長が2026年の年始に掲げたこの言葉は、ホール経営とファン体験の両面に横たわる構造課題に向き合う意思表示でもある。その取り組みは年明けに突然始まったものではない。先行して2025年8月7日から始動したのが、釘と玉の動きで楽しむ“パチンコ本来”の面白さをあらためて社会へ伝えていく「KUGITAMA(クギタマ)」プロジェクトだ。
デジタル施策による接点づくり、羽根モノ機の体験機会の提供、文化・技術継承の情報発信を重ねながら、この秋以降はいよいよ「KUGITAMA」プロジェクトの羽根モノ新機種が登場する。導入にあたっては、ホールの設備投資負担を抑えつつ“まず置いて試せる”環境を整えるため、月額2万円(税抜/予定)の低価格レンタル「KUGITAMA YELL(エール)プラン」での展開を予定している。
小倉社長に、KUGITAMAの振り返り、今後のロードマップ、そしてKUGITAMA第一弾に込めた狙いを聞いた。
目次
発表から1年 デジタルで接点拡大
Q. KUGITAMAは2025年8月7日に発表され、もうすぐ1年が経ちます。ここまでの手応えを教えてください。
この1年は、体験型店舗の準備や新機種開発を進めながら、まずはデジタル施策を中心に「入口」を増やすことに注力しました。プロジェクト発表と同時に公開したコンセプトムービーは50万回再生を超え、業界内外に向けてKUGITAMAの狙いを伝える“最初の一歩”として、確かな反響を得られたと受け止めています。

Q. “体験機会”の作り方も特徴的でした。
羽根モノ機は、説明するより触れてもらうのが一番早い。だからこそ、専用アプリのダウンロードや会員登録といった手間をいっさいなくし、完全無料で展開しました。
1980年代、90年代の羽根モノ機10機種をシミュレーションゲーム化し、2026年6月末時点でプレイ総数は3・5万人規模です。懐かしさで触れる方もいれば、初めての方が「分かりやすい」と感じる入口にもなっていると思います。
Q. 直近では「SANKYOオンライン博物館」の公開、さらに東京・福生市のゲームセンタータンポポとの再コラボがありました。
はい。「SANKYOオンライン博物館」の目的は、SANKYOが長年培ってきた「遊技文化・技術・歴史」を次世代へ継承していくことです。未来に向けた挑戦をするなら、同時に“積み重ね”もきちんと伝えないといけない。KUGITAMAは新しい入口づくりですが、根っこには遊技文化への敬意があります。
ゲームセンタータンポポ様とのコラボも、改めて実施しました。KUGITAMAはデジタルだけで完結させるのではなく、リアルの場で実際に「触れられる機会」を増やしていくことが重要だと考えており、今回のコラボはその一環として位置付けています。業界関係者の方々にも関心を持っていただき、中にはお忍びで足を運ばれたと伺っています。
実は私も、現場の空気を確かめたくて店舗を訪れました。KUGITAMAコラボとして用意いただいた機種が20台あったのですが、行ったタイミングでは見事にすべて埋まっていて、しばらく別の台で順番待ちをしていたほどです。
ようやく座れたのが『マジックカーペットI』(1989年)でした。賞球がオール13個で、一般入賞口に入っても「13個」がチーン、ジャラジャラと音を立てて払い出される。人によってはうるさく感じるかもしれませんが、私にはその音が心地よくて、「これがパチンコだな」と、いろいろな記憶が一気によみがえりました。
そうした“体験そのものの強さ”を、いまの世代にも自然に触れてもらえる場を、これからも増やしていきたいと思っています。
羽根モノは若年層の “入口”になり得る
Q. 羽根モノを入口と捉える根拠として、印象的だった出来事があれば教えてください。
実は私自身、初めて打ったパチンコは羽根モノでした。『キングスター』(1982年)という機種で、ハラハラドキドキしながら玉の動きを追っていたのをいまでも覚えています。最初の一歩として、“何が起きているのかが目で追える”という体験は、やはり強いんですよね。
そのうえで、象徴的だったのが社内で聞いたエピソードです。この春入社した新入社員が、パチンコ経験者・未経験者で一緒に羽根モノを触れる機会がありました。すると未経験の子が、羽根モノで「適度に当たりを体験できた」ことをきっかけに、翌日には「他のパチンコも打ってみたい」と、仕事終わりに同期とホール様へ足を運んだと聞いたんです。
“当たりまでの道すじ”が見えやすく、楽しさを共有しやすい。入口としての強さを、あらためて実感しました。
Q. 学遊連(全日本学生遊技連盟)の学生とのディスカッションも実施されたそうですね。
はい。先日、学遊連の皆さんと意見交換をする機会がありました。そこで私たちが投げかけたのが、「未経験の友だちを連れてパチンコを打つなら何を打つか?」という問いに、全員が「羽根モノ」と回答していました。理由を聞くと“何が起きているかが見て分かる”“一緒に盛り上がりやすい”という声が多かったです。
つまり羽根モノは、経験者が未経験者を自然に誘いやすい。「連れて行きやすさ」があるからこそ、入口になり得る──、その感覚を確かめられたのが、大きかったですね。

目標は5万台規模 ホールの自然な選択肢へ
Q. 羽根モノを普及させていく上で、目標は設定されていますか。
現在、羽根モノは市場に約1.2万台が設置されていると認識しています。これを早い段階で5万台規模にしたいと考えています。
ただし、これは単に当社の台数を伸ばしたいという話ではありません。羽根モノがホール様にとって“自然な選択肢”として常に存在する状態を作りたい。そうなればファンの入口も増え、パチンコ全体の裾野にもつながると考えています。
その意味で、少し踏み込んだ話をすると、他メーカー様の方から「羽根モノを開発できる人材が社内に残っていない」という声を耳にすることもあります。羽根モノはシンプルに見えて、実は“釘と玉の動き”を設計し切るノウハウが必要な世界ですから、簡単ではありません。
だからこそ、普及のために必要だというなら、当社としては自社の利益だけにこだわらず、例えば部材の提供であったり、開発支援であったり、できることはやっていきます。メーカーが一丸となって羽根モノという選択肢を広げていく──、そのための努力は惜しまない考えです。
「YELLプライス」で 機械代の課題に応える
Q. 年明けには「SANKYO YELL(エール)プライス」を打ち出しました。反応はいかがですか
2026年度からSANKYOブランドの主力パチンコ新機種(新規IP機種含む)について、本体販売価格を49万9000円(税抜/予定)とする価格方針です。
すでに数機種はこの価格で投入していますが、稼働結果を見ても“まずまずの及第点”という評価はいただけていると初動の手応えを感じています。ひとえに、私たちの想いに賛同し、運用面でも工夫しながら支えてくださったホール様のお陰です。
Q. 他メーカーの追随も出てきました。
「機械代」というテーマについて、少なからず業界に影響を与えられたことは、メーカー全体が未来に向けて真剣に取り組むきっかけを作れたという意味で嬉しく思っています。
Q. 今後のKUGITAMA展開のロードマップを教えてください。
まず、8月29日から9月6日まで渋谷でポップアップ店舗を予定しています。KUGITAMAの世界観と、羽根モノの面白さを、業界内だけでなく一般の若年層にも分かりやすく届けていきたいと考えています。
そしてその先で、いよいよプロダクト施策へ踏み出します。製品だけでなく、プロモーションも再構築します。TikTokやインスタグラムなど、若年層が日常的に使用するアプリを通じた露出も含め、業界の外側へ届く伝え方に挑戦していきます。
“復刻”だけにしない いまに合う羽根モノを
Q. 第一弾が『P羽根BASTARD!! -暗黒の破壊神-』ですね。羽根モノは復刻のイメージも強い中で、題材選びも含めて新しい打ち出し方をされています。
はい。「KUGITAMA」プロジェクト・プロダクト施策第一弾として『P羽根BASTARD!! -暗黒の破壊神-』を準備しています。
私たちが意識したのは、羽根モノを“懐かしさ”だけの文脈に閉じないことです。羽根モノの面白さは、釘と玉によるわかりやすさや納得感にあります。その魅力を、初めて触れる方にも伝わる形で届け直ししたいと考えています。
一方でホール様の現場を見ていくと、羽根モノコーナーに20代、30代の方が座っている現実があります。そこにヒントがありました。未来に向けた羽根モノは「過去作の復刻」だけではなく、「いまの世代にも手に取りやすい題材や見せ方」で若い世代が“打ちたい羽根モノ”を、もう一度定義し直していく必要があると捉えています。
『P羽根BASTARD!! -暗黒の破壊神-』は、その方針を具体的な形にした第一弾です。

「KUGITAMA」プロジェクト・プロダクト施策第一弾
『P羽根BASTARD!! -暗黒の破壊神-』
Ⓒ萩原一至/集英社・BASTARD!! 製作委員会
Q. 今後のKUGITAMAプロダクト施策についても教えてください。
もちろん準備しています。ここで一番お伝えしたいのは、「この一台で終わらせない」という点です。
羽根モノに限らず、いわゆる遊びやすい領域──、低射幸の機械も含めて、今後も続々と新機種を世に送り出していく計画で、すでに次の企画・開発も動いています。入口から入って、長く楽しめる環境を商品面でもつくっていきたいと思っています。
低価格で“導入”支援 月額2万のレンタルプラン
Q. 普及策として「KUGITAMA YELL(エール)プラン」も発表しました。
羽根モノ機の設置台数を早い段階で5万台規模へ持っていくには、業界全体として“羽根モノという選択肢”を「面」で育てていく必要があります。ホール様が“試しやすい”導入条件が不可欠です。そこで、『P羽根BASTARD!! -暗黒の破壊神-』において、月額2万円(税抜/予定)の低価格レンタルプランを実施します。
レンタルのみ、途中解約や1台からの導入も可能です。まず置いていただくための設計です。

SANKYOが年明けに発表した新価格方針「SANKYO YELL プライス」と低価格レンタルプラン「KUGITAMA YELL プラン」。ホールの設備投資負担の軽減と遊技環境の充実を後押しする。
“入口づくり”を 一緒に続けていきたい
Q. 最後に、全国のホール関係者へメッセージをお願いします。
羽根モノは、「高過ぎる射幸性・高過ぎる機械代を見直しすること」を実現する上で、解決策の一つになり得ると考えています。KUGITAMAは、その入口をつくり直すための継続プロジェクトです。
そして率直に申し上げれば、ホール様に応援していただきたい、導入していただきたい──、これに尽きます。もちろん、ただ「売れる機械」だけを開発して売って終わり、という姿勢ではいけません。メーカー側にも責任があっていまの市場状況がある以上、復活させていくのはメーカーの責務だと受け止めています。だからこそ、真摯に、本気で取り組みます。
導入しやすいレンタルプランも用意しました。ホール様・ファン・メーカーがそれぞれ無理なくメリットを感じられる形を、現場と一緒に積み上げていきたいと思っています。
PROFILE

小倉敏男(おぐら・としお)
1962年3月12日生まれ/群馬県出身
趣味:ゴルフ
座右の銘:ピンチはチャンス
社歴
1989年 株式会社SANKYO入社
2012年 執行役員
2015年 常務執行役員
2018年 専務執行役員
2024年 取締役専務執行役員
2025年 代表取締役社長CEO兼COO(現任)



