毎年5月のギャンブル等依存症問題啓発週間に合わせ、遊技業界でも依存問題に関する各種勉強会が今年も実施された。近年、公営競技のネット投票など、オンライン対応のギャンブルが急速に普及したことで、依存の相談現場ではオンラインを経由した深刻なケースが急増している。
一方で、リアルな店舗型であるパチンコが問題として俎上に載せられる機会は相対的に減ってきた。人生初のギャンブルがオンラインという若年層が飛躍的に増加している事実は、業界を取り巻く環境の変化を如実に示しているといえるだろう。
だからといって業界が対策を緩めてよいわけではないが、業界の勉強会では、従来の依存に対する理解への本質的な疑問も呈されている。
なかでも注目したいのは、「快楽物質であるドーパミンが出るからハマる」という脳の問題として広く認知されてきた通説に対する専門家の異議だ。「報酬予測誤差の観点から見れば、人間は本来飽きていく性質があり、その説明は正確ではない」との指摘がなされ、従来の理解の限界が改めて浮き彫りになった。さらに「古い依存の考え方ばかりが広報され、正しい理解や啓発が追いついていない。視点を転換し、ユーザーを育てる意識を持つべきだ」という声もあり、科学的根拠に基づいた対応への転換が急務となっている。
診断基準そのものの転換もある。WHOの国際疾病分類「ICD-10」が約30年ぶりに「ICD-11」へと改訂され、厚労省によれば、日本でも来年1月頃の導入が予定されているという。従来の「ICD-10」で「病的賭博」と呼ばれていた状態は、「ICD-11」によると「ギャンブリング障害」または「ギャンブル行動症」として嗜癖行動に分類される。これは、単なる呼称の変更に留まらず、依存の理解と対処の枠組みそのものの刷新を意味する。
この転換こそが、古い知識を問い直し、正しい啓発へとアプローチを切り替えるきっかけにもなるだろう。知見が積み重なれば、どの状態が障害なのかという、より精緻な理解と対策が可能になるはずだ。
今後の依存に対するスタンスについて勉強会に出席したホール関係者は、「業界は自分たちで守る意識が大事だが、それだけでは限界がある。支援者や行政と連携した包括的な協力体制が不可欠だ」と訴え、支援関係者からは、「常識の枠に閉じこもらず、遊技業界とも積極的に交流し、共通の土台を広げていきたい」との協働を求める声が寄せられた。
直近の現実問題としては、大阪IRを見据えた対策に加え、想定以上の速さで顕在化するオンラインギャンブルの依存問題も対岸の火事とはいえないだろう。「病的賭博」から「ギャンブリング障害」「ギャンブル行動症」という診断概念の転換が示すように、依存をめぐる理解は着実に更新されているのが現状だ。
今後は、業界への誤った偏見を払拭するという意味でも、外部の専門家や行政との連携を深め、最新の知見に基づいた正確な情報を、業界側からも、積極的に発信していく必要性があるのではないだろうか。
