AI時代の主役は、若い技術者だけではありません。現場の苦労や課題を知る40代・50代だからこそ、技術をどう活かすべきかを考え、無理や無駄の解消につなげることで、業界DXを動かすきっかけをつくれるはずです(髙橋和輝/ピーメディアジャパン代表取締役)。
40代、50代にとって、 AI時代の今こそが活躍のチャンスです。そう実感するアイデアが、現場から次々に生まれています。今回は、弊社が取り組んでいるAI活用事例を少し紹介します。すでに大手法人から全面協力の反応を得るなど、手応えも大きいものになっています。
一例が、パチスロ営業における「全台リセット」の業務です。全リセは営業上、極めて重要です。リセットがかかっていない台がSNSで拡散されれば、店舗の信用や集客に深刻な影響を及ぼしかねません。一方で、その作業は営業終了後に行われ、店舗規模によっては1時間、1時間半とかかることもあります。
問題は、その作業を誰が担っているかです。責任の重さから、店長など、店舗で最も時給の高い人材が担当するケースが少なくありません。閉店後、長時間労働の末に、集中力を要する精密な作業を続ける。人員をギリギリまで削った現場で、疲労の中で打ち込めば、ヒューマンエラーが起きるのは自然なことです。
さらに大手法人では、この作業に対する監査コストも発生します。打ち間違いはないか、不自然な設定はないか。これを確認するために、ここでもまた高時給の人材が動いています。
現在、弊社ではこの課題に対するAIソリューションの開発を進めています。カメラ、画像認識、エッジコンピューティング、クラウド処理。ここ数年で急速に民主化された技術を組み合わせれば、数万円規模のハードウェアと汎用AIモデルで、非常に高い精度の自動化・監視が実現できる時代になりました。
もうひとつ、業界の長年の悩みである「設定漏洩」の問題もあります。人力だけで防ぐには限界がありますが、行動パターンの異常検知、内部オペレーションの可視化、情報フローの追跡など、AIによる対策は現実的な選択肢になりつつあります。数年前なら夢物語だったものが、今や「実装の問題」に変わっています。
ここで重要なのは、 AIソリューションを作るうえで本当に価値があるのは、技術そのものよりも「どこに問題があり、どこにコストがかかっているか」を見抜く目だということです。全台リセットに高時給の人材が深夜に張り付いている。設定漏洩が利益を確実に削っている。こうしたボトルネックを言語化できるかどうかが、すべての出発点になります。
そして、これこそ40代・50代が力を発揮できる領域です。若いエンジニアは最新のAIモデルやツールを使いこなす力に優れています。しかし、深夜のホールで店長が何をしているか、監査部門がどんな負荷を抱えているか、設定漏洩が起きた時に現場の空気がどう変わるかまでは知りません。
何十年も業界の現場を見てきた世代だからこそ、「ここに無駄がある」「ここが構造的なボトルネックだ」「ここはAIで置き換えられる」と指摘できます。これは経験として蓄積された、再現の難しい資産です。
AI時代に、年長世代が「技術で若手に勝てない」と引け目を感じる必要はありません。課題を見つけ、若手に投げる。この役割分担こそ、業界DXを前に進める最も現実的な座組なのだと思います。
◆プロフィール
髙橋和輝
株式会社ピーメディアジャパン代表取締役。大前研一ビジネススクール出身。18歳から現場一筋で、ホール企業勤務を経て、コンサルタントとして独立。業界初のホール企業向けサブスクサービスを12年運営。現在はパチンコ特化型BtoBプラットフォームを展開(2024年取引額約6.5億円)し、ホール営業×AIを開発中。



