
他産業は新規顧客の獲得と定着をどのように進めているのか。コロナ禍以降に売上を伸ばすゴルフ業界と、Mリーグ発足を契機にファン層を広げる麻雀業界の取り組みから、そのヒントを探る。
体験価値の向上に注力するゴルフ業界
帝国データバンクの飯島大介氏によると、2024年度のゴルフ場市場規模は8,100億円に達し、4年連続のプラス成長となった。コロナ禍を底に6年ぶりに8,000億円台を回復するなど堅調に推移している。
飯島氏はこの背景について、「新規プレイヤーの流入、特に20代後半から30代の『現役世代層』の増加が大きな要因です」と指摘する。コロナ禍で屋外レジャーの価値が見直されたことが、ゴルフへの関心を再燃させる契機となった。同時にスマホ予約や比較サイトの普及などのIT化、セルフプレーの拡充といった"始めやすさ"の整備も若年層の流入を後押しした。
一方で、流入したプレイヤー全員が定着しているわけではない。コロナ禍の収束に伴い、他の趣味へ移る動きも見られる。特に、プレー頻度の低い「ライト層」ほど継続しにくい傾向があるという。
こうした課題に対し、各ゴルフ場が注力しているのが「体験価値の向上」だ。クラブハウスのリニューアル、飲食メニューの充実、低価格なセルフプレーの導入など、満足度を高めて再訪(リピート)を促す工夫だ。「いかに満足感を高めて帰ってもらうかが、定着の鍵となります」と飯島氏は強調する。
また定着に向けたもう一つの取り組みが「コミュニティ(横のつながり)」の創出という。飯島氏によると、近年は職場内でのゴルフ機会が減少し、「ゴルフは好きだが仲間がいない」という層が少なくないという。そこで同世代や同レベルの客を結ぶサロン的な場の提供や、帰省時の「孫同伴プレー」など、再来場を促す取り組みも行われている。

株式会社帝国データバンク情報統括課 飯島大介副係長
2段構えでファン拡大と定着を図る麻雀業界
一方の麻雀業界も近年、大きな転換期を迎えている。埼玉県川口市で麻雀店を営む匠EXCEEDの関営業部長は業界の変化について、「近年は若い男女や女性客が増え、まるで大学のサークルのような活気があります。利用者の年齢層も以前より20歳くらい若返った印象です」と話す。
店内は従来の「煙たい昭和的な雀荘」から、明るく清潔感のある空間へと変化している。加えて女流プロを活用した集客施策が広がっており、注目を集める女流プロを店舗に呼び、ファンが同卓できるイベントを開催する手法は、パチンコ店の女性ライター招致にも似た集客手法といえる。接客面でも店員が客を下の名前で呼ぶ居酒屋のような「親しみやすいコミュニティ作り」が定着率向上に寄与していると関氏はいう。
業界の潮流としては、「個室麻雀」が台頭しており、匠EXCEEDの経営店舗も個室だ。支持される理由について同社・和賀所長は、「個室には特別感があり、周囲の騒音やマナーを気にせず、自分たちの空間で楽しめる点が人気です」と話す。個室での仲間打ちなら気軽に初心者を誘いやすく、長時間利用やリピーター化にもつながりやすい。麻雀教室や健康麻雀などの催しも進んでいるという麻雀業界。「きっかけ作り」と「居心地」の2段構えでファン拡大と定着を図っている。

川口市の個室麻雀「匠」。クリーンな環境でイスや雀卓の設備も充実。プレミアムルームの座敷ルームも用意。



