失敗しない売り場プロモーション_51(文=野島崇範/株式会社プラスアルファ専務取締役)
視覚情報だけに偏重しない
現代のコミュニケーションはデジタル化・視覚偏重が進み、身体的な感覚(五感)が情報の洪水の中で画一化され、忘れられがちになっています 。確かに五感の中で最も視覚情報の重要度は高いです。だから、視覚情報を強化する理由は分かります。
しかし、視覚だけに頼った情報発信では現状不足しています。残念ながら、大多数の店舗が市場撤退しました。2025年10月末時点での全日遊連加盟パチンコホールの営業店舗数は、前月比10店舗減の5,807店舗と公表されています。つまり逆説的に考えると、現在営業しているお店は強いお店しか残っていません。
北海道から沖縄のパチンコ店を調査すると、どのパチンコ店もお金を掛けて派手に広告を装飾しています。さらにパチンコ店の店長が好む煌びやかで賑やかなデザインで広告展開されています。全体的に広告レベルが高いため、視覚情報だけでは大差はありません。
だからこそ、情報発信のレベルを一段階高めるためには視覚だけに頼った情報発信では弱いのです。五感を全て使い切った新しい情報発信の手法が必要不可欠です。では、パチンコ店においてどのように五感プロモーションを駆使すれば良いのでしょうか?
以前のコラム(GREEN BELT_2025年10月号)ではご年輩のお客様にも届く聴覚プロモーションの重要性を解説しました。今回は、嗅覚プロモーションについて解説します。
特殊な感覚“臭覚”への訴求
嗅覚は、五感の中でも少し特殊な感覚です。視覚や聴覚は一度「考える脳(新皮質)」を経由しますが、嗅覚だけは感情や記憶を司る大脳辺縁系にダイレクトに届くと言われています。つまり、理屈よりも先に「好き・嫌い」「心地よい・不快」といった感情を瞬時に喚起する、極めて原始的で強力な感覚なのです。例えば、好きだった人の香水やシャンプーの匂いなど、香りと共に一瞬で、記憶や感情が呼び起こされる経験は誰しもあるはずです。これこそが嗅覚プロモーションの本質です。
パチンコ店で「匂い」を意識的に設計している店舗はまだ多くありません。むしろ、タバコ臭さといったマイナスの匂いをいかに消すかに注力してきた歴史があります。しかし、発想を一段階進めてみてください。「匂いを消す」から「匂いを使う」へ。ここに、他店との差別化余地が大きく残されています。
ここで重要なポイントがあります。嗅覚プロモーションは常設である必要はありません。むしろ、やり過ぎは逆効果です。私が支援している企業や店舗で確実に成果を生み出している取り組みは限定的に活用することです。
「匂い」の活用と注意点
新台入替初日、ライター取材・来店イベント、周年日や総付け景品の配布日といった、いつもと違う日の演出が効きます。運用する場所は店舗全体ではなく、風除室・景品カウンターなど記憶の再生率が高い場所で運用することがおすすめです。
風除室を通過するお客様の脳内では無意識のうちに、今日は何かあると連想させることが重要です。視覚プロモーションはお客様の進行方向の目線が届く先にしか訴求できません。一方、嗅覚プロモーション(聴覚プロモーション)は360度情報が届くため、全てのお客様に訴求することが可能です。
これはポスターを1枚増やすより、よほど強く当日の空気感を伝えます。
ただし嗅覚プロモーションで最も怖いのは、自己満足です。店長や本部の好みで選んだ香りが、必ずしもお客様にとって心地よいとは限りません。基本原則は3つです。
①主張しすぎないこと
「香水」ではなく「空気の質感」を変えるイメージ
②気分を前向きにし、覚醒度を上げる香りが基本軸
シトラス系(レモン、オレンジ、グレープフルーツなど)
③短時間・限定演出
入店時に一瞬感じる程度がベスト
そして、香りは記憶に残ります。だからこそ、「良い記憶」と結びつけなければ意味がありません。誇大広告とならないように細心の注意を払わなければ集客効果は生まれません。競合他店よりも一歩先に、広告を進めませんか?
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◆プロフィール
・野島崇範(のじま たかのり)
1983年三重県生まれ。北海道教育大学卒。全国のホールを年間1,000店舗以上調査し、その中から繁盛店に共通する法則を見つけ出し「伝達力」と定義。「伝達力」調査の分析に基づき、お客様立場の徹底と継続の重要性を、支援先ホールの全スタッフと共有する。また、売り場ランチェスター戦略の第一人者として、科学的に売り場の支援を実施。売り場の書籍「あなたの売り場、太っていませんか?」を発売。



