【コラム】吊り橋効果は恋愛だけではなく、パチンコでも起きている

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今回は、好調な『P貞子』を受け、ホラー系のパチンコ機がヒットする理由と、ヒットしない理由について解説したいと思います(文=小島信之/トビラアケル代表取締役)。

7月に登場した藤商事の『P貞子』が好調です。貞子は1回の大当りで3,000発、最大で7,500発が獲得できるという、継続率ではなく出玉に特化したスペックがヒットの最大要因でしょう。

ラッキートリガーの登場で高継続率の機種も多く登場しています。しかし、人はある程度以上の継続率を超えると、数字による違いは判断が出来ますが、体感による違いは判断できなくなります。

どういうことかというと、継続率87%と継続率82%の違いは、数字上では理解していると思いますが、遊技した体感ではその違いをはっきりと認識できないと思います。貞子は継続率の高さという体感できない違いではなく、出玉の多さという、明らかに違いを体感できる方へスペックを振ったのです。そのため、多くのプレイヤーから支持されているのです。

この貞子は導入前の段階での評価は「ホラー系」ということであまり高くはありませんでした。初代のリングがヒットしてからホラー系のパチンコ機がコンスタントにリリースされるようになりましたが、最近はヒットと呼べるような機種があまり多くは登場していません。今回はホラー系のパチンコ機がその特性を活かした演出をするための大事な要因をお話ししていきます。

よく恋愛において「吊り橋効果」という言葉を聞きます。吊り橋を渡るときの不安や恐怖でドキドキする気持ちを、一緒にいる人への恋愛感情によるドキドキと勘違いしてしまう心理効果です。これは脳からドーパミンが分泌され起こると考えられています。不安や恐怖を感じると、ドーパミンが分泌されます。そのドーパミンには幸福感を感じられる効果があるようです。その幸福感により人は恋愛に対して前向きになるのです。

ここで話をパチンコに戻しましょう。一般的にパチンコをしていても脳からドーパミンが分泌されていると言われています。大勝ちをしたときや、大逆転をしたときによく分泌されるようです。

吊り橋効果では恐怖から分泌されたドーパミンが「恋愛」への対象となりましたが、パチンコだとその対象は「機種の面白さ」になるのです。ドーパミンが分泌され機種を面白く感じてしまうのです。恐怖で感じたドキドキを、パチンコで感じたドキドキと勘違いしてしまうという訳です。ホラー系のパチンコ機は演出が「どれだけ怖い」か、ということがポイントとなるのです。

ホラー系のパチンコはこれまでに様々な機種が登場してきました。しかし、パチンコ機でホラーを演出する訳ですから、中にはパチンコ的な演出が優先され、演出の怖さを追求できていない機種も多くあります。そのため、ホラー系といっても、全ての機種が恐怖によるドキドキを感じられるわけではありません。新機種を見定める際は、どのレベルで「怖い」のか、そして「ドキドキ」するのか、その機種の「怖さの追求具合」を判断するのです。

ホラー系の元祖ともいえる初代のリングは、パチンコで定番となっているような演出を全く無視して、演出では怖さのみを徹底的に追及されたような機種でした。そこまでやらないと人を恐怖で「ドキドキ」させることは出来なく、ホラー系の最大の利点であるパチンコでの「吊り橋効果」を活かせないのです。

◆プロフィール
小島信之(こじまのぶゆき)
トビラアケル代表取締役

2018年まで首都圏、静岡、大阪に展開するホール企業で機種選定を担当。2019年に独立し、その分析力を活かしエンタープライズの全国機種評価等を開発。現在はメーカーの遊技機開発、ホールコンピュータの機能開発など、幅広い分野に携わり、変態的なアイディアを提供している。馬と酒とスワローズをこよなく愛する。

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