【コラム】魅力的な遊技機が選ばれる時代ではない!?
~台あたりの遊技人数から見た需要と供給バランス~

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昨今のパチンコ・パチスロ機市場は、機種のポテンシャルに依存して稼働(アウト)が構成されるというよりは、需要と供給のバランスに影響を受けている側面が高い。

販売台数が多かった『e北斗10』は、7月に登場した『e慶次』に続き苦戦した。一方で、販売台数が少なかった『LT貞子』や『eユニコーン』は高い稼働推移を示している。このような動向を示す背景には、もちろん遊技機のポテンシャルに起因している側面もあるが、それ以上に需要と供給の影響が大きいと分析している。

前回の記事でまとめた稼働構造に従って分析を進めると下表の通りとなる。アウトを構成させる要素を見るとプレイヤーの遊びかたの質を表す1人あたりアウトは、『e慶次』が最も高かった。

しかし、台あたりの遊技人数は8.4人となっており、1台あたりで創出したプレイヤーの数は最も低い数値となった。つまり、他の機種に比べると供給数が多すぎたことが示唆される。『e北斗10』も同じ傾向である。その一方で『eユニコーン』と『LT貞子』は10人を超えるプレイヤーの創出に成功しており、供給よりも需要が高い傾向にあることが示された。

つまり、遊技機のポテンシャルがヒットの要因に起因しているというよりかは、需要と供給のバランスが影響していると考えられるということ。実際に、遊技機のポテンシャルを相対比較すると、『eユニコーン』も『LT貞子』も圧倒的な魅力を有している訳ではないことがわかる。

2021年から起算してリリースされた「ミドルタイプ」「LTタイプ」を母集団としたときの『eユニコーン』と『e貞子』のポテンシャルを示す偏差値(図1参照)は、スバ抜けて高いという訳ではない。プレイヤーの心理状態が表れる遊技時間の偏差値に限っては「e慶次」や『e北斗10』の方が高く、むしろスバ抜けていたのは『LTまどか』である。したがって、データ分析を生業としている私からすると、『eユニコーン』や『LT貞子』がポテンシャルに左右されることなく動く様にはかなりの違和感を覚える。

過去の統計データから得られたファクトとして、遊技時間などのプレイヤーの心理状態が表れるデータの偏差値が高い機種が長期に活躍するという傾向は今も変わらない。おもしろい・魅力的と感じているからこそ、それらデータは高くなり、偏差値として客観視できる。

しかし、最近ではそうした要素を無視したような恰好で需要と供給のバランスが稼働面や評価軸のウエイトを占めはじめているので、遊技機の事前評価を行う際や導入後の判断基準には、販売数や台あたりの遊技人数といったデータはベンチマークしておく必要があるだろう。

◆プロフィール
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役。データアナリスト・統計士・BIコンサルタント・BIエンジニア。文部科学省認定統計士過程修了。現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。

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