前号の本誌特集「パチスロ大型化トレンド」の記事は、昨今の市場環境を如実に表した面白い内容だった。そこで本稿では、前号特集のテーマをもとに遊技者の動向をデータから探索的に掘り下げ、深く考えてみることとする(文=𠮷元一夢/㈱THINX代表取締役)。
先に結論から述べると、「併設店におけるパチスロ設置比率の上昇は進んでゆく」と分析している。一般的なマーケティングセオリーに基づいた「規模の作用」による優位性はもちろんのこと、遊技者の動向を表すデータからもそうしたことが言える。
たとえば、遊技時間というデータを2021年から起算して経過を観察すると、「20S集団」は10分以上延びているが、「4P集団」は減少している。実際の遊技時間にすると、「20S集団」が55分で「4P集団」は27分となっており30分ほどの違いがある。
遊技時間というデータは、プレイヤーの心理状態を表す重要なデータで、「面白い・魅力的」と感じるからこそ延びる性質がある。そのため、昨今の遊技者動向としてはパチスロの方が「健全である」という示唆が得られる。
また、各集団の中から「60分以上の遊技を行うプレイヤー」を抽出し、その割合を比較すると両集団の動向には明らかな違いが生じている。最近では、その差は広がりを見せており、「20S集団」の中には20%程度存在しているが、「4P集団」は10%程度しか存在していない状態が続いている。
これらの遊技者動向に従えば、パチスロ設置比率が今後も上昇するものとして考えるのは自然な流れだろう。
ではなぜ、「ここまで遊技者の動向に違いが生じてしまったのだろうか?」原因のひとつとして「勝ち客割合」というデータから原因を考えることとする。
「勝ち客割合」は、「4P集団」と「20S集団」を合算し(以下、「4P/20S集団」とする)、その中から「勝ちユーザー」だけを抽出してそれぞれの割合を表したデータとなる。
まず、「4P/20S集団」を1としたとき、「勝ちユーザー」は0・2となる。つまり、「4P/20S集団」が1000人だとしたら200人が「勝ちユーザー」ということ。
では、これらを踏まえて構造の長期潮流を見ると、「4P集団」が苦戦している原因が示唆されている。「20S集団」の「勝ちユーザー」の割合は2023年4月頃から上昇し、一定の割合で推移しているが、「4P集団」はパチスロ不遇時代の2022年代をピークに、以降は減少を続けており、年々「遊びにくい環境」へと変化していることがわかる。
従って、遊技者の動向に生じる違いについては、遊びにくくなってしまった環境変化に準ずる形で差が広がっており、市場構造の変化として表れていると考えられる。
つまり、併設店におけるパチスロ設置比率の上昇が進んでゆくことは戦略構想上においては健全で、より優位に運べる戦略として採用されているのが最近のトレンドだ。そのため、パチスロ比率を上げた戦略を走らせる店舗が増えると推測している。
◆プロフィール
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役。データアナリスト・統計士・BIコンサルタント・BIエンジニア。文部科学省認定統計士過程修了。現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。