【コラム】一筋の光が見えたスマパチ
~台データやスペックだけでは何も語れない時代~

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©2017川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/SAO-A Project

高い注目を集めてローンチされた「スマパチ」は低調な滑り出しとなり、「スマスロ」とは対照的なスタートを切った。しかし、パチンコ『eソードアート・オンラインK12』(以下、『SAO』とする)の登場を皮切りに風向きが変わりそうな予感がしている。そこで本稿では、弊社の独自分析である「偏差値分析」を使って、なぜ『SAO』は他の「スマパチ」とは違う動きを示したのか考えてみることとする(文=𠮷元一夢/株式会社THINX 代表取締役)。

「偏差値分析」の大きな特徴は、スペックの善し悪しを分析するというよりかは、そうした要素を排除し、プレイヤーの嗜好や行動を中心に判断していくという特徴がある。なにより、一切のバイアスをかけずに直感的なインサイト(遊技者の隠れた本音)を得られることがメリットのひとつとなる。

さて、「偏差値分析」と聞けば全国模試や大学受験などを想像する方々が多いと思うが、基本的な考え方は同じである。

下図は2021年から起算してリリースされたミドル機種を集団として括り、導入7日間の結果を偏差値で捉え、レーダーチャートで表したものとなる。評価軸はシンプルで、遊技機が有する「勝ちの魅力」に引き寄せられ、プレイヤーはどれだけ粘り込んで遊んでいるのかというモノサシを通して判断を行う。したがって、6角形が大きければ大きいほど遊技機のポテンシャルは高いと判断できる。

レーダーチャートは、「遊びかたの質」と「勝ちの魅力」と呼ぶ6つの評価項目の偏差値を可視化したもの。
©THINX-LAB.OLAP SIS ©SUNTAC「TRYSEM」よりデータ引用

※【Rv(THINX社独自指標)】…Reward valueの略称で、報酬値という意味。「勝ち率×勝ち金額」の算術で、遊技機の魅力のひとつとなる「勝ちの魅力」を総量値として表したデータ

直感的に表されたレーダーチャートでは、『SAO』は『P新世紀エヴァンゲリオン15未来への咆哮』(以下、『エヴァ15』とする)には「遊びかたの質」は劣るものの、「勝ちの魅力」が高いことが示されている。

そして、その他の「スマパチ」と比べた場合には、明らかな違いとして示唆されている。とくに、“楽しい・魅力的”でなければ顕著に表れない「遊びかたの質」の偏差値が高い点は評価に値すると同時に、ようやく“スマパチらしさ”のある機種が登場したと分析している。これらを持って、風向きが変わりそうな予感がしていると感じた次第である。

ただし、まだ『エヴァ15』を優に超えられるほどではないため課題はある。この辺りの話をしようとするとかなり増幅してしまうので、別の機会に書き記すことにする。

遊技機の分析や評価の多くは、「台データ」や「スペック」を基に探索的な議論が行われることが多いと思うが、今回ご紹介したように“楽しい・魅力的”などのプレイヤー心理が表れるデータから“プレイヤーの使用文脈”に沿って議論を進めることが重要だと感じている。

つまり、「アウトが高い」や「継続率が高い」などの文脈からは本質までは語れず、正しい解を導くのは困難だと考えている。今回ご紹介した分析も同時に走らせることをお勧めしておきたい。

とまれ、「スマパチ」にも一筋の光が見えたことに違いない。期待している。

◆プロフィール
𠮷元 一夢 よしもと・ひとむ
株式会社THINX 代表取締役。データアナリスト・統計士・BIコンサルタント・BIエンジニア。文部科学省認定統計士過程修了。現在は、IT企業のシステム開発やソフトウェア開発にアドバイザリーとして従事しながら、パチンコホール・戦略系コンサルタントとして活動。

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