M&A価格は適正化が進行
物件ターゲティング重要に
大手、中小入り乱れてのM&Aラッシュとなった2023年。未曾有の閉店ラッシュとなった2022年に比べれば、そのペースは緩やかになりつつあるが、今年は今年で、改刷対応など、経営を圧迫する重い設備投資が待ち構えている。引き続きM&Aは活発化していくのか。業界で幅広く不動産仲介を手掛ける㈱プロパティーの三戸浩社長に、今後の見通しを聞いてみた。
上昇する運営費
他業種への賃貸も
──2023年は前年と比べ、徐々に閉店ペースが落ち着いてきたとはいえ、未だ高水準で推移しています。一方で、出店数については、居抜きが主流ですが、コロナ前の水準に迫るなど、最悪期を脱した印象です。2023年の出店・閉店動向をどう見ましたか。
賃貸・売買等の相談時に、決算書を拝見する機会が多く、以前と比較してホール経営の高コスト化を感じていましたが、昨年拝見した決算書も高コスト化に変化はありませんでした。とりわけ上昇幅が目立ったのが人件費と中古機です。スタッフの方々が高年齢化し、ベースとなる給与も昇給で上昇しています。もちろん、遊技機に費やすコストも高くなっているのですが、上昇幅という観点では人件費負担がジリジリと増しつつある印象です。都市部の自社物件で運営している法人では、他業種に賃貸して、家賃収入を得る方がいいと考える傾向が浸透しています。
──M&Aによって復活を遂げる店舗がある一方で、単店や小規模店などでは、そのまま閉店する法人も多いです。
遊技機調達にかかるコストの増加は、そのままプレイヤーの負担増に繋がっていますので、結果的に客数減少を招くという悪循環があると思います。そのうえ、今年2024年は改刷対応が控えていますので、事業継続について思案している法人も少なくありません。
適正価格化が進行
売買双方に歩み寄り
──2023年には、ガイアが民事再生法の適用を申請しました。このことが、ホール不動産市場に対し、どのような影響を与えたと考えられますか。
それまでは、売り手側が価格面で主導権を握ってきたのですが、この件の後は、やや価格が落ち着いています。売り手買い手の双方が互いに歩み寄れるような適正価格になってきています。物件によっては、買い手が付いたことを幸運と捉える法人もいますね。
──2023年は大手、中小共に活発なM&Aが展開されました。2024年も引き続き同様の傾向が継続していくと考えますか。
需要が高いのは、500台以上という規模感はこれまでと同様です。なかには、300台程度の店舗でも手掛けるという法人はいますがレアケースですね。また、オーナー同士が直接取引するケースが増えていますので、売買の判断がスピーディになっています。最近では、一部の知名度のある法人が売りに出たことで、それに触発される企業が出ています。2023年と同じ様に、節目節目でのM&Aは活発に行われていくのではないでしょうか。
──家賃水準に何か変化はありましたか。
物件の築年数や環境によって様々ですが、半値近くまで値段が下がったケースもあります。今は相場感として、台あたり1万円を切ることを前提として考える法人が多いです。高くても、1万3000円程度でしょうか。今後も、ビジネスとしてパチンコ営業を成り立たせるには、この位の水準でないと難しいという判断だと思います。ただそうなると、立地が良い物件などでは、他業種へ賃貸したほうがいいと考える家主も当然出てきています。
買収目標の指定重要
出先機関設置も視野に
──2024年の見通しはいかがでしょうか。
M&Aを考えるのであれば、これは以前から申し上げておりますが、まずターゲットとする物件を決めることが重要で、自分から動く必要があることには変わりません。単純に適当な物件を待っているという姿勢では決まることはないのが実情です。不動産を扱う専門家なら、物件を見た段階で、適していそうな業種は概ね判断できます。その際、話を持っていくのは、どうしても普段から接している近くの人になりがちです。そのため、この先も本格的なM&Aを継続的に考えるのであれば、いい場所にする必要は決してありませんが、ターゲットとするエリアの近くに出先機関を設けるのも一つの考え方かも知れません。
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