2023年1月、高尾をグループの一員に迎え、パチンコメーカーという新たな顔が加わったオーイズミ。需給ともにシュリンクし続ける市場のなかで、どのような勝算を抱くのか。同社の大泉秀治社長に話を聞いた。
高尾を開発特化、シナジーも創出
──今年から老舗パチンコメーカーの高尾がグループ会社となりました。すでに4機種を市場投入し、11月にヒットタイトル最新作となる『P弾球黙示録カイジ沼5』を発表するなど、積極的に新台をリリースしている印象です。どのように立て直しを図ってきたのでしょうか。
再生に向け、まずはある程度規模を縮小し、効率的な業務遂行を図れるようにすることが重要だと考えました。工場の稼働率を考えると、最終的には工場を持たないファブレスが1番効率的ではありますが、もちろん工場を無くすわけにはいきません。そのため、営業を外部の方に手伝っていただくことで、製造開発に特化する体制を整えてきました。
──決してリスクが小さいとはいえない支援だったと思います。
周りにも反対の声はありました。しかし支援に向けた話が進むなか、万全ではないですが協力会社様との関係性にも少しずつ光が差しはじめ、我々としてもできる限り頑張ってみようと決意しました。高尾は、昭和25年に創業した歴史のある会社です。このまま無くなってしまうことは業界にとっても残念なことです。もちろん、パチンコは分からないことも多く、怖さが全くないかといったら嘘になりますが、力を尽くしていきたいと思っています。
──パチスロ開発との違いを感じる部分はありましたか。
パチンコの開発会議に参加して感じるのは、パチスロと比べると確率ゲームの要素がすごく強いということですね。例えば、319でも199でもいいのですが、決められた枠の中に、大当たり確率や突入率、継続率をどうバランス良く組み込むかが重要で、非常に奥が深いです。
──シナジー効果が見込める点はどういった部分になりますか。
版権関係は、PS両方で活用することで非常にやりやすくなります。開発に関しては、映像尺の違いが大きく、一緒にできない部分もありますが、キャラクターデザインが一つで済むなど、他の部分ではシナジー効果が順次発揮されていくと思います。
──遊技機開発において心がけていることはありますか。
特に伝えているのは、「ファンファーストでモノづくりをしていこう」ということです。プレイヤーが長く楽しんでもらえるような仕掛けに、こだわっていきたいです。
──今度の新台『Pカイジ沼5』は、どういったコンセプトで開発されたものなのでしょうか。
今回でカイジ沼タイプは5作目になります。全体では、2007年に登場したカイジシリーズ1作目から10機種目となる高尾としての看板タイトルです。好評の実写クルーン演出を更にアップデートし、全編実写クルーンでカイジの世界観を表現しました。スペック面でもRUSH TOTAL突入率が約79%と高突入で継続率もTOTAL約81%。右打ちはオール1500個でその内25%は実質次回まで。更にRUSH非突入時でも30回転の引戻しチャンスがあるという点が特長になっています。
自社ブランドでのパチンコも発表へ
──今後自社ブランドでのパチンコリリース計画はありますか。
早ければ来年中に自社ブランドのパチンコをリリースする予定です。これは高尾とは関係なく、以前から進めていた計画ですが、ゲーム性は、今回の内規変更で可能となった、一度の大当たりでの獲得出玉に期待を抱ける仕様を考えています。
──スマスロについてはどのように取り組んでいく予定ですか。
適合次第ですが、こちらも進行しています。ただ、保通協の予約が取りにくい課題があります。今は様子見ですが、サードブランドにも手がつけられればと考えています。
──抱えている課題はありますか。
どちらかといえば、高尾がネガティブなイメージで捉えられている点は否めません。しかし今回の新台『Pカイジ沼5』をきっかけにしつつ、様々な体制を変革することなどで、今後リブランディングの確立を加速させていきたいです。まずは、過去の失敗や困難を乗り越えていく強い精神力を持つことを、社内の共通認識にしていく必要があると考えています。
──設備事業はいかがでしょうか。
補給機器関連は需要が減っていくことになりますが、ユニット事業は、例えばキャッシュレス化が今後どうなっていくかによって大きな変化が生じていくのではないでしょうか。
──遊技機価格の高騰についてホール関係者の危機感は高まっています。この問題をどう捉えていますか。
コストについては非常に意識しています。リユースやリサイクルに積極的に取り組み、余計な役物を付けないことなどで価格上昇を抑えるようにしています。しかし今後、抜本的に遊技機価格の問題を解決していくためには、各種規制と向き合うことが重要になってくると思います。
部材の共有化はじめ、例えば、映像などを外からダウンロードできるようになれば開発コストを低減できます。セキュリティについても、今はブロックチェーン技術の発展によって万全にすることが可能となっています。こういった事がもし実現できれば、映像バリエーションが増え、これまで以上に表現豊かな演出を盛り込めます。もちろん、メーカーにとっても、開発費や部材リスクを低減できますので、これは需給双方にとって有益な発想だと思います。そういったアイデアを実現するためにも、勉強しながら様々な活動に力を注いでいきたいと思っています。
どちらにしても遊技機コストの問題を改善しないと、業界は立ち行かなくなると思いますので、真剣に取り組んでいく考えです。
──今後の経営ビジョンについてお聞かせ下さい。
まずは収益源としても大きい高尾の建て直しが一番です。来年1月の『Pカイジ沼5』を売り切って、パチンコの開発予算を増やしていけるようにしていきたいと考えています。一方のオーイズミですが、すでに来期の機種は揃っていますので、四半期に1機種ペースで新台をリリースする予定です。今後もオーイズミ、高尾のパチンコ・パチスロに期待して頂ければと思います。