先日の荒井さんのコラム(【コラム】パチンコのメーカー発表値が信頼できない理由)を受けて、私からはパチスロ開発目線でスペック表記問題についてお話させて頂きます。今回の発端はパチンコ機のスペック表記からでしたが、パチスロも同様の問題を抱えており、対岸の火事ではありません(文=ジェイさん@発信する遊技機クリエーター/J-BEAT合同会社代表)。
パチスロの公表値について
パチスロのメーカー公表値で有名所の指標は、
・当たり確率(AT確率)
・通常ベース
・AT純増
・機械割(出玉率)
が挙げられます。
たとえば、『スマスロ北斗の拳』だと、
となり、各種媒体や実戦動画、各ホールの店内POP等で必ず見かける数字です。一方で、実際の遊技の中では公表値と比べ違和感が生じる数字である事は否めません。
※例で『スマスロ北斗の拳』をとりあげていますが、ほぼ全機種同じ問題を抱えています。
パチンコの大当たり1/319は完全確率表記であり、次の1回転回せば数字通り1/319で大当たりが出現します。
一方、パチスロのAT確率は次の1回転を回せば同様の確率で大当たり(=AT)が出現するわけではありません。
北斗の拳で言えば、地獄~天国などモード毎にATの抽せん確率は変わりますし、前兆という概念があったり、天井という概念があったりと、公表値と体感にズレが生じます。
また、通常ベースに関しても、北斗の拳であれば、通常時の特定区間でATナビが出たり、他の機種ではCZ中はATナビが出たりと、ベースに関しても差異が生じる事も珍しくありません。
さらに『スマスロ北斗の拳』のAT純増は約4.1枚ですが、出玉区間であるバトルボーナス中に一律で増えるわけではなく、ATセット毎に発生するバトル中は通常ベースとなり、バトルボーナス全体で均すと純増3枚を少し下回るくらいになります。
また、パチンコと大きく違う点として、当たりに対してどれくらいの出玉を得られるのか大変分かりづらい点が挙げられます。
ATの平均獲得出玉(TY)は公表される事もありますが、あくまで全平均出玉であります。
設定毎に平均出玉が変わり、設定変更時や、天井到達時、特殊な確定役を伴ったときなど、条件や状態に応じて大きく変わる事も珍しくありません。
パチンコはスペックのカテゴリ表記(甘デジ、ライトミドルなど)によっておおよその射幸性(投資とリターンのバランス)が想像しやすい文化が形成されていますが、パチスロにおいては、同じAT機、同じスマスロといったカテゴリ内で射幸性の幅がバラバラです。
また、ノーマルタイプ(通称Aタイプ機種)とAT機とで見方や意味合いが変わるパラメータが存在し、新規層やライト層が安易に参入できる表記やアナウンスになっていないというのが現状です。
スマスロの登場でAT機のスペック性能やゲーム性の幅が生まれ今後、今回のぱちんこのようにスペック表記について物言いがつくこともかなり高い確率で起き得るといえます。
さいごに
遊技機の開発は新しいデバイスやゲームデザイン、スペックを考え開発するのが主な仕事ではありますが、それと同時に新しいものを如何に人に伝えていくのかを考えていかなければいけない仕事であります。
どうすれば業界が良くなるのかという漠然とした問題に関しては、なかなか答えを出すのは難しいですが、「分かりやすい」のか「分かりにくい」のかについては、様々な立場において議論し改善できる議題です。
常々言われていることではありますが、新規層の獲得なしに遊技機業界の未来はありません。
パチスロとは長年こういうものだから・・・と過去の慣習や慣例に捉われるのではなく、未来の為に「分かりにくいパチスロ(遊技機)」から「分かりやすいパチスロ(遊技機)」に少しずつでも、ともに変えていきましょう。
◆プロフィール
・ジェイさん@発信する遊技機クリエーター
J-BEAT合同会社代表
発信するプロ遊技機クリエーター兼ライター。過去遊技機メーカー3社で勤務。在籍中に10数機種の遊技機開発に携わる。現在は法人を経営しつつ、フリーのクリエーターとして遊技機開発に従事。また、メーカー所属では出来ない発信、評論活動を行っている。
Twitter:https://twitter.com/jsan65536
武論尊・原哲夫/コアミックス 1983,©COAMIX 2007 版権許諾証YRA-114 ©Sammy