1月末の経過措置満了以降、閉店数が如実に増加した2022年。スマート遊技機の将来性に対する期待も高まったが、導入の有無については体力勝負の様相を呈しており、中小法人を中心に全体的な閉店傾向に歯止めはかかっていない。今後も閉店ラッシュが続くのか。不動産仲介を手掛ける株式会社プロパティーの三戸浩社長に不動産市況の見通しを聞いた。
多数閉店も成約数は停滞、価格の高止まりが継続
──2022年は、これまで以上に閉店ペースが加速しました。この一年の出店・閉店動向をどのように捉えてらっしゃいますか。
M&Aの成約数は、例年に比べ、かなり少なかった印象です。閉店数は多いのですが、次の出店に繋がることなく、そのままになっている状態が多いです。その一方、成約に至るのは、売買市場に出ることなく、オーナー同士で直接交渉が行われるケースがほとんどです。
──直接交渉ではどのようなやり取りが行われるのでしょうか。
この数年変わっていないのは、売り手が提示した条件を、そのまま買い手が承諾するという流れです。こういった交渉がないまま閉店した場合は、次が決まらないというパターンが増えています。
──直接交渉の場合、買い手が話を持ちかけるというケースが多いのでしょうか。
はい。もちろん逆のパターンもありますが、やはり自ら売りに出すと、価格交渉でのデメリットが出ますので多くはありません。成約価格が高止まりしていることがそれを表していると思います。
──売り手市場が続いている背景には何があると考えられますか。
不動産は、今建築費がものすごく上がっています。そのため、新築の出店が減っている状況がまず前提としてあります。一般不動産市場でも同様なのですが、2022年は、高値なら売るという人がほとんどで、売り物件は多いものの成約数が減っています。
──無理して売らないという心理は続きそうでしょうか。
しばらくは、売り手の言い値で物件が動くという状態が続いていくのではないでしょうか。やはり売り手からすれば、借り入れが無くなって、なおかつ手元に資金が残らないと、メリットがありません。その一方、例えば500台以上の規模で売れないケースは、近くに強豪店がある場合が多いです。
──M&A市場自体はどうでしょう。大規模店舗中心に動くという流れには変化はありませんか。
やはり最低500台はないと誰も買い手がいない感覚です。売り手も500台以上ないと誰も手を挙げないだろうと話しています。
──スマート遊技機登場により、小型店復活を挙げる声もあります。
300台の店舗に500台入るなどのニーズはあるのでしょうが、基本コンビニクラスのスペースでは、スケールメリットが見出せません。入口が少ないのもマイナスです。もちろん、今後利益を生むビジネスモデルが構築されれば可能性があるかも知れません。
──スマート遊技機が、M&A市場に影響を及ぼした点はありますか。
スマート遊技機が現実になるという情報が出た時に、売却交渉を止める人が増えました。しかし7月以降、導入することが、コスト面も含めて容易ではないということが分かった途端、一気に売り案件が増加していきました。
──家賃相場はいかがでしょうか。
今は、ドラッグストアがそこまで強くないので、一昔前と比べたら、賃貸で出店しやすい状況ではあると思います。家賃自体は下がっていないのですが、コロナ前のような競り合いは減りました。
──この1年は、大手法人がM&Aに積極的になっていると思いますが、相場に影響はありますか。
当初想定された金額よりも高く取引されるケースは出ています。それは、体力の違いがあると思いますが、買う側の社内事情もあるのではないでしょうか。ただ、順調に営業している中堅チェーン企業でも、条件さえあえば売るって人は結構多い印象です。
──M&Aを順調に進めるポイントのようなものはありますか。
一番揉めるのが、遊技機ですので注意が必要です。原因を聞くとほとんどが売ってはいけない機械を売ってしまったケースです。現場がM&Aについて知らされていない場合で問題が生じやすいですね。
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