7月19日、その動向に高い関心が寄せられてきた「スマートパチンコ」「スマートパチスロ」の概要が明らかにされた。PSとも、当初難しいと見られていた現行機とのダブルスタンダートが実現されており、新たなゲーム性は、低迷し続けている業況にとって、久方ぶりの明るい材料を提供している。今後は、遊技機や専用ユニットの供給体制など、店舗導入を踏まえ、より現実的な課題に向けたステージへと移行しつつある。
スマスロが先行
11月市場導入へ
スマート遊技機最大の優位性は、スマパチ、スマスロともに、ゲーム性が進化する点だ。法的に定められた出玉基準は変わらないものの、その限られた範囲内で、多彩な出玉ルートを新たに創出することが可能となる。
日遊協の西村拓郎会長は7月の会見で個人的な見解としながら、「スマパチ、スマスロの普及をホール運営という点から見れば必ずコストダウンに繋がってくると思う。今はイニシャルコストがクローズアップされているが、長い目で見れば経営に良い影響を与えると思う」と期待感を表している。
店長職域の現場レベルでも、「出玉が一定値(コンプリート機能)で管理されても性能が向上するならいい。まずは導入してみたい」と前向きだ。
仕様面を定めた内規(自主規制)はすでに明らかで、スマスロは、有利区間ゲーム数上限の撤廃、スマパチでは、大当たり確率の最大分母が350に増え、c時短を用いたゲーム性も付与される。とりわけc時短を用いたスマパチは、パチスロAT機のようなゲーム性が想定されており、営業手法にも影響を与える進化となりそうだ。
もっとも、実機が披露されていない以上、慎重なスタンスを取らざる得ないというホール関係者もいる。「総合的に考えればいずれ必要になるだろう。しかし、まだ中身が分からないので業績を想定できず、予算規模については決めかねている状態」という。
別のホール関係者も、「今はお金がかかる話ばかり。将来的にキャッシュレスやオンライン入替え、実地検査省略などのメリットは魅力だが、それも全て出揃ってからの検討になるのだろうし、いつになるかは分からない。ホールの立場から言えば、キャッシュレスでも、例えばそこで手数料が1、2%かかるだけで利益が飛び、負担は遊技客に向かわざる得ない」と、将来的な機能拡張時のコスト負担についても、丁寧な議論を求めたいという。
フォーラムのパネルディスカッションに参加した全日遊連の阿部恭久理事長も、「スマート遊技機が救世主になれるかはコスト面も非常に重要。現状遊技機の価格負担が大きいため、この点配慮頂きたい」と釘を指している。
課題は供給体制
反転攻勢に冷水
先行するスマスロだが8月初頭の段階で、各都道府県の公安委員会で検定通過したタイトルは確認されていない。一部、適合機は出ている模様だが、メーカー関係者は「11月納品を考えると、今すぐ検定取りしても、スケジュール的には相当タイトだと思う」と気がかりに感じている。保通協では、現在月2枠の申請枠が用意されており、5、6社ほどのメーカーが順次型式試験に臨んでいるようだが、適合率が低空飛行を続けており、11月納品に向けた懸念は拭いきれていない。
さらに、多くのホール関係者が心配しているのは需給の逼迫だ。ホール系団体は、スマート遊技機や専用ユニットを求めるホールへの公平公正な販売対応を全機連に求めた。これに対し全機連では、「専用ユニットの供給が安定するまで、スマート遊技機購入希望ホール数を確認するなどして、各ユニット会社で基準を設け、専用ユニットの公平公正な販売に努める」と応じているが、遊技機メーカーとユニットメーカー間での交通整理に、一部混乱が生じているという関係者もいる。
日電協の兼次理事長は6月の会合で、「メーカーとしては売れるだけ売りたいが、ユニット供給の見込み台数がスマスロ供給台数の最大。ユニット供給は流動的だが、今年11月から来年3月ごろまでに10万台以上、15万台未満という範囲で供給されると思う」との見通しを示している。この状況に変わりがなければ、平均月3万台。今の6.5号機需要の高まりを踏まえれば、調達競争の激化は必然だろう。
メーカー関係者は「少し前までは半導体不足が焦点だったが、今はハーネスやLEDもない。1年超えの納期となる部材もある」というなど、部材不足の出口は依然見出だせておらず、スタートダッシュのカギを握る需給状況については、今後も予断を許さない展開が続いていくことになりそうだ。