【2022年 新春寄稿】高稼働を可能にする地域共生とブランディング
オオキ建築事務所 代表 大木啓幹

投稿日:2022年1月1日 更新日:

新型コロナウイルスがまん延して約2年、国内のあらゆる産業が大きな影響を受けました。かつて賑わっていた飲食店もお客さんが戻らず、厳しい営業を強いられています。感染者数が下火になったとはいえ、夜遅くまで飲むこと、外で食事をすることが少なくなったのだと思います。つまり、コロナ禍で人々の時間の使い方、習慣が変わってしまったんですね。

パチンコも同じで、これまでパチンコに夢中になっていた人もパチンコをしないことに免疫がつき、お店に行かないことが日常となりました。以前のように興奮しなくなったのかもしれません。すべての業種にそうした変化が起きていますが、特に人とのやり取り、つながりが大きいのがパチンコです。今後どのようにしてそのつながりを元に戻していくか大きな課題です。

愛情のないものは陳腐…味気ない

そのコロナ禍で改めて感じたことが、地域共生とブランディングの大切さです。感染拡大の初期のころ、休業要請に従わない一部の店舗がマスコミにクローズアップされ、業界全体が大変なバッシングにさらされました。しかし、本当は全国の約98%のパチンコ店が休業し、換気性能についてはどの業種よりも優れ、決して3密にならない事実がありましたが、業界全体のブランディングができていなかったことでスケープゴートにされてしまったのです。

その一方で、コロナ禍で客足が戻りにくいなかでも、地域のブランディングができている店舗は、集客や稼働の回復が早かったと言われています。

大木氏が建築デザインを手掛け、16年前の2005年にオープンした《333》(広島県福山市)。以降、全国屈指の高稼働を維持し、2021年も前年に引き続いて稼働率全国1位を達成している。

たとえば全国で常に稼働率トップを誇る広島県福山市の《333》(一富士興業)もその一つです。働いている従業員の接客の質やサービスの良さ、地域に溶け込んだ建物のデザインなどがブランディングされ、コロナ禍でも高稼働に結びついているのだと思います。

特に建物はイメージや印象を左右します。地域の景観を損ねるような建築デザインでは地域の人たちから好感を持たれません。先日都内のある繁華街を訪れたのですが、街並はすごく汚く、歩きたくない雰囲気でした。そこにはパチンコ店を含めた様々な店舗が営業していますが、どの建物も廃れてプライドを感じることはできませんでした。地域から愛情を持たれないものは陳腐で、味気ないのです。

一方、清潔で品のある建物は時間が経過しても廃れず、地域から愛され続けます。例えば私が手掛けた全国チェーンの数店舗は、機種や接客などの営業は同じにも関わらず、建物をブランディングし、地域との共生を図ることで、高い稼働を維持しつづけています。それだけ建築デザインはブランディングにとって重要なのです。

ホールはこれまで、遊技機など直接利益になるところばかりに過剰投資を行い、お客さんや従業員、建物といった間接的に寄与するものへの投資は消極的でした。トイレ空間についてもキレイで豪華な設備にすることを嫌がる経営者がいますが、それは過剰投資ではなく、遊んでくれていることへの対価であり、お客さんや地域への気遣いなのです。

地域への投資は無駄にならない

コロナ後に開店を目指している店舗には、駐車場の敷地内に災害用の簡易トイレを設置する動きがあります。普段は駐車場ですが、災害時や非常時にマンホールの蓋を外すと簡易トイレになる仕組みです。マンホールの下には特殊なチップを敷き詰めてあり、ニオイもしません。こうした取り組みも地域への投資ですし、「何かあってもホールに行けば大丈夫」と思ってもらえれば、それが地域へのブランディングになり、イメージの向上につながります。そうした投資は決して無駄になりません。

パチンコにはまだまだポテンシャルがあります。地域へのブランディングを積み重ね、地域に必要とされる存在に変わってほしいと願っています。

◆プロフィール

大木 啓幹 hiromoto ooki
オオキ建築事務所代表 一級建築士

大型複合施設・商業施設・ホテル施設・温浴施設・住宅等の建築デザインを手掛ける。近年はアメリカ、イタリア、イギリス、フランスの各国の建築賞を受賞。コロナ禍初期の2020年3月に「パチンコホールは3密に当たらない」とする提言を行い、パチンコホールの換気能力の高さを内外に向けて実証した。

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