【お盆企画】パチスロ5号機のトレンド変遷の考察(2)2008~2010年

投稿日:2021年8月13日 更新日:

5号機創世記は“パチスロ冬の時代”と呼ばれるように、まだ4号機を設置できた2006年から完全5号機時代の2009年までの3年間で、総設置台数が33%も減る苦難の時期となりました。このように2009年を区切りとするのは、2010年から再び上昇傾向となるからです。今回はその時期を振り返りたいと思います(文=佐々木真/フリーライター)。

・【お盆企画】パチスロ5号機のトレンド変遷の考察(1)2005年~2007年

RTの研究が進む

遊技機規則で定められている“リプレイ確率を変動させられるタイミング”は、以下の通りになります。

1)ボーナス成立時
2)ボーナス消化中
3)ボーナス終了時
4)通常時の特定出目(役の成立ではなく出目)
5)既定ゲーム終了時

これ自体は、2004年の施行から定められていましたが、実際どのように運用されるかといった研究も進められました。その中でもポイントとなったのは「通常出目契機で突入したRTがゲーム数固定か不定か」でした。

突入したRT消化中に「異なるRTの内容(ゲーム数・リプレイ確率など)となる特定出目」が出現するとどうなるのか。結論から書きますと、通常時出目契機のゲーム数固定RT中に、他の契機出目が出現しても書き換え不可。それ以外の(通常出目契機のゲーム数不定を含む)RT消化中は、他の契機出目が出現したら、その内容に即した形で書き換えなければなりません。

どこかでこのように規制が変更されたのか、様々な機種を保通協に持ち込むうちに発見されたかまでは把握しておりませんが(自主規制が公表されるのは珍しいため)、これでパチスロが大きく進化することとなります。

2007年当時までの感覚では、ボーナス終了後に突入させたRTを“どこまで伸ばせるか”しか選択肢が考え難く、必然的にボーナスをトリガーとしなければなりませんでした。それに対し、この発見を上手く利用すれば、どこからでもRTに突入させられるし、ゲーム数上乗せなども駆使すれば、どこからでも大量獲得の期待が持てる。そんな機種を作ることができそう。と、なったわけです。

ボーナスを引かなければチャンスなし。そのマンネリを打破したのが、大都技研の『忍魂』でした。それまで主流だったボーナス終了後からのART(ワンクッションは置く仕様となっていましたが)に加え、通常時のチャンス目(ベル揃い)でもARTを抽選。高確・低確の概念もありました。ここに、5号機のボーナス+ARTの完成形がいきなり誕生したのです。

ただ、ポップさに欠ける部分もありました。ナビによって獲得する小役が押し順ではなく色目押しだったのです。4号機の隆盛も、目押し技術のハードルを下げる押し順ナビの登場によって加速しました。まだ、打ち手を選んでしまっていたのです。

押し順小役の登場

その押し順小役の開発も進み始めました。真偽は定かではないですが、私が聞いたところによりますと、押し順小役は禁止されたわけではなかった。保通協の検査体制が整うまで待たされていただけ。とのことだったようです。

いずれにせよ、押し順不正解時に非入賞や獲得枚数の少ない小役を入賞させられるようになりました。RTの進化と押し順小役を組み合わせて、5号機パチスロの逆襲が始まります。

『パチスロ交響詩篇エウレカセブン』は、ゲーム数が固定されたRTのループが魅力。RTの突入を押し順ナビで管理することによって、連チャン性を実現しました。主流とならなかったシステムですが、5号機ARTの名機を尋ねられたならば、真っ先にこの機種を挙げます。

取りこぼし目を含むSIN・特殊リプレイの上段「ベチェベ」後は、特殊リプレイの「リリベ」を抽選する基本状態に移行。「リリベ」入賞後は、ART突入目となる特殊リプレイ「リリチェ」を抽選するゲーム数不定RTに。ここでARTの権利を持っている場合は「リリチェ」となる押し順をナビ。権利がなければ「ねだるな勝ち取れ」演出となり、自力で揃えられれば晴れてART突入となります。

ARTはゲーム数固定なので、ゲーム数上乗せはないものの「通常時の出目契機のゲーム数固定RTは、他の契機出目となっても書き換え不可」という項目を参照し、避けられないSINが成立しても「リリベ」を待つ状態に戻らなくて済むという……まさに、5号機のRTの規則をフル活用した内容となっていました。

ボーナス終了後は「リリベ」を抽選しない“ボーナス後RT”に突入するなど合わせ、5号機のRTを勉強するには良き教材だったと思います。

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ついに5号機の最適解が見つかる!?

『エウレカセブン』から遅れること半年、もう一つの5号機ARTを代表する機種が登場します。『新鬼武者』です。こちらは、ゲーム数不定RTの魅力が満開な機種。ゲーム数不定ですから当然、ゲーム数の上乗せをすることができます。

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「新鬼武者」は株式会社カプコンの登録商標です。

『エウレカセブン』の魅力は「まだ連チャンが残っていたんだ」という意外性。見えない不安と戦っての安堵感でしょう。それに対して『新鬼武者』は「これだけ上乗せた」という可視できる安堵感・優越感かと思います。市場でより好まれたのは後者でした。

ボーナス+ARTといえば『新鬼武者』のシステムが基本とされていきます。そこから多くのヒット機種が生まれていきました。正直なところ、押し順小役にしただけで『忍魂』と作り方は同じとも思いますが、その押し順小役にしたことが重要。打ち手を選びにくい仕様のヒット機種が続いたことで、2010年からパチスロの総設置台数は回復していくこととなったのです。

◆著者プロフィール
佐々木真(ささきまこと)
パチスロ歴30年の2号機世代のフリーライターで、2000年よりファン向け媒体を中心に活動。新システムを見ると、遊技機規則をどのように活用しているか考えたくなる性分。好きな5号機は『スカイラブ』。

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